文・写真/梅本昌男(海外書き人クラブ/タイ・バンコク在住ライター)
ミネラルウォーターの有名ブランドであるペリエ。同社がスポンサーとなり、アジア全域のバーから最高に値する50店を選ぶ「アジアズ50ベストバーズ」が毎年発表されている。今年も東京や香港などと並びバンコクから5店がそこにランクインした。
昔から世界的観光地であり、在留欧米人が多いことなどからバンコクのバーのレベルは高い。そんな中、“タイならでは”のオリジナルのカクテルを各店が競って出している。
今回のベスト50にも選ばれた「バンブーバー」は名門5つ星ホテルのオリエンタル・マンダリン・バンコク内にある。1953年から続くバンコクでも老舗中の老舗の店だ。今も当時の面影を残す雰囲気の店内は正に大人の憩いの場。
クラシックなカクテルのレパートリーの多さもさることながら、長い歴史に甘んじない挑戦を同バーのチームはしている。それが、タイの5つの地域にインスピレーションを得て登場した「エレメンツ」というシリーズだ。レインフォレスト、マウンテン、アイランド、リバー、シティというテーマに沿ったオリジナルの14品が楽しめる。
例えば、「ウエルカム・トゥ・ジャングル」。一杯の中に亜熱帯のジャングルを再現したという。コニャックをベースに、フレッシュさを与えるパッションフルーツ、森林の香りを連想させるバニラなどが口の中で広がる。ジャングルを歩きながら様々な発見をしているような気分になる。
「クール・キューカンバー」はタイの呼び物の一つであるビーチをイメージ。ビーチといえばココナッツの木と日差しから頭を守る帽子。可愛い見かけに思わず微笑んでしまう。ココナッツ・ジュースとキュウリのソーダという意外なマッチングも粋だ。
この「エレメンツ」のカクテル・シリーズ、実は、コロナ禍がきっかけで作られた。タイ各地に赴くのが難しかった時期、せめてカクテルで山々やビーチを味わって欲しいという「バンブーバー」のチームの想いから生まれたのだ。
ちなみに、オリエンタル・マンダリン・バンコク、サステナビリティへの取り組みをホテル全体で強めている。「バンブーバー」も同じくで、フルーツや野菜などを地産地消している他、カクテルには欠かせないシロップも現地ブランドの品を使っている。
一方、タイらしい食材を使った奇抜なカクテルに挑んでいるが「スピークイージー」だ。お洒落なレストランやカフェが集まるランスアン通りのミューズホテルの屋上にある。
「サイアム・クラッシュ」はラムをベースに唐辛子、レモングラス、マナオ(タイのライム)を使っている。タイ料理好きな方はお気づきだろう、そう、これはトムヤムクンスープで使われる食材なのだ。大胆な発想ながら、バランス良く仕上がっていて飲み易い。
「モヒート・タイ」は通常モヒートで使われるミントの葉ではなくスイートバジルを入れた一品。タイ料理に欠かせないスイートバジルの独特な香りが効いている。ラム酒も南部プーケット島の蒸留所で生産された物を使っている。
次回のバンコク旅行の際には是非お試しあれ。
文・写真/梅本昌男(タイ・バンコク在住ライター)
タイを含めた東南アジア各国で取材、JAL機内誌スカイワードやアゴラに執筆。観光からビジネス、エンタテインメントまで幅広く網羅する。NHKラジオの「ちきゅうラジオ」やサントリー「寺子屋」の出演・講演なども行っている。海外書き人クラブ会員(https://www.kaigaikakibito.com/)。