文・写真/坪井由美子(海外書き人クラブ/ドイツ在住ライター)

ドイツで人気のリゾート、北の海

シュトラールズントの港。対岸に見えるのはリューゲン島。

ドイツの自然といえば? 南ドイツのアルプスの山々や黒い森は世界的に有名だが、海を思い浮かべる人はそう多くはないだろう。じつはドイツ北部には北海とバルト海という2つの海がある。日本の旅行者はロマンティック街道やオクトーバーフェストで有名な南ドイツを目指すことが多く、北部はどちらかというと通好み。日本語の観光情報も少なく、知る人ぞ知る穴場といえる。

オランダとの国境に近い北海沿岸にはドイツ最北端の島、ズュルト島や世界自然遺産に登録されるワッデン海が、スカンジナビア諸島の対岸に位置するバルト海沿岸には、世界遺産に登録される港町ヴィスマールとシュトラールズントや、高級リゾートとして有名なリューゲン島など、見どころがもりだくさん。美しい砂浜が続く海岸のリゾート地は、ドイツ人に人気のバカンス先となっている。

ドイツのビーチに並ぶ「かご」とは?

砂浜に並ぶ無数の「かご」は北ドイツの風物詩。

北ドイツのビーチリゾートの風物詩といえば、砂浜に整然と並ぶ無数のかごのような物体。これは「シュトラントコルプ」(ビーチバスケットの意味)と呼ばれるビーチチェアで、ドイツの海を代表する光景だ。

この一風変わった椅子が生まれたのは、19世紀。バルト海沿岸の町ロストックで、宮廷御用達のかご作り職人のヴィルヘルム・バルテルマンが、リュウマチを患っていた貴族の女性から「強風や日差しを防ぐビーチチェア」の依頼を受けて考案したのが始まりといわれている。柳の枝で編まれたかごと木を組み合わせて作られた頑丈な椅子は、依頼通りにバルト海の強い風と太陽から彼女を守ってくれるものだった。その後瞬く間に評判となって人気は北海にまで広まり、今ではドイツのリゾートには欠かせないものとなっている。

読書やお昼寝、飲食も。一日中ビーチチェアの中で快適に過ごせる。

ドイツではほとんどの人が夏に数週間の休暇をとる。南の島や森の保養地など行先は様々だが、海辺のリゾートでは、貸別荘や貸アパートに滞在し、ビーチで日がな一日のんびりするのがドイツ流バカンスの過ごし方。じつは私もこの夏、バルト海でワーケーション体験した。ビーチでシュトラントコルプを実際に使ってみると、まあ~便利なこと! まさに万能椅子だ、と心底感心したのだった。

ドイツの万能ビーチチェアの楽しみ方

私が滞在していたのは、バルト海沿岸のダース半島。その昔ハンザ同盟都市として栄えたロストックとシュトラールズントの間に位置し、夏はバカンス客で賑わう落ち着いた雰囲気のリゾート地だ。あちこちと面白い場所を探検してきたので、機会があればレポートしたい。今回は北ドイツが誇るシュトラントコルプにフォーカスし、その万能っぷりをお伝えしよう。

基本的に2人掛け。引き出し式の足置き付き。

シュトラントコルプには、ビーチで快適に過ごすための様々な機能が完備。リクライニングや足置きが付いているものも多く、身体を伸ばしてゆったりと休むことができる。読書や日光浴はもちろん、快適過ぎて何時間も熟睡してしまうことも。

屋根はビーチパラソルの役目も果たす。バルト海に吹く風は激しいことで有名だが、この椅子はちょっとやそっとの雨風ではびくともしない頑丈さ。日よけが付いており、強い日差しからも守ってくれる。

折り畳み式のサイドテーブルで飲食もしやすい。

荷物が置けてロッカー使いできるのも便利な点。段差があり両脇がかごで覆われているので、荷物が砂だらけにならずにすむ。かごの中は真正面以外からは見えにくい半個室状態なので、水着に着替える際も安心。シュトラントコルプは基本的にレンタル制で鍵をかけることもできる。いわば自分専用の「My海の家」だ。

シュトラールズントの醸造所「シュテルテベーカー」のビールで乾杯。

サイドテーブルを取り出せば、飲み物を置くことも可能。ピクニックをする家族やワイングラスを合わせるカップル……みんな思い思いに楽しんでいる。私は仕事が終わった後に海まで散歩に出かけ、この平和で穏やかな光景を見るのが大好きだった。カモメに狙われながら名物のフィッシュサンドをほおばり、北ドイツ産のおいしいビールを流しこみながら見た真っ赤な夕日は、きっと生涯忘れることはないだろう。

バルト海に沈む真っ赤な夕日。

自宅でもリゾート気分になれるビーチチェア

カフェのテラスでも「かご席」が人気。

海沿いの町では、カフェやレストランのテラス席でもシュトラントコルプが使われることが多く、個人宅の庭に置いてあるのもよく見かける。コロナ禍で旅行ができなかった間は、シュトラントコルプの売り上げが急上昇したのだとか。ドイツはハードなロックダウン期間が長かったので、自宅で少しでもリゾート気分を味わいたい、と考えた人が多かったのだろう。

メイド・イン・ジャーマニーの万能すぎるビーチチェア。いつか日本の海に上陸する日がやってくるといいなあと密かに願っている。

ドイツ観光局:https://www.germany.travel/en/campaign/german-local-culture-jp/home.html

文・写真/坪井由美子 ドイツ在住ライター。旅行、グルメ、文化などの分野において新聞、雑誌、ウェブ媒体で執筆。レシピ連載や食のリサーチも手掛ける食いしん坊。2020年『在欧手抜き料理帖』(まほろば社)出版。海外書き人クラブ会員(https://www.kaigaikakibito.com/)。

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