「うまさぎっしり新潟」のキャッチフレーズで観光推進を展開している新潟県。多彩な表情を持つ新潟の、訪ねてみたい魅力的なスポットを、4回にわたりご紹介します。

第1回のテーマは、メイドインニッポンを支える燕市のモノづくりです。和釘づくりに端を発するといわれる燕市のモノづくりの歴史は江戸時代にさかのぼります。

伝統の鎚起(ついき)銅器や刃物、そして銅板のしおりづくりなど、燕市のモノづくりの歴史を体感できるスポットを3つご紹介します。

■1:玉川(ぎょくせん)堂

江戸時代後期、仙台の職人によって伝えられたのが鎚起銅器です。一枚の銅板を木槌で叩き打ち起こす技法や、火炉で熱したのち水で冷やす焼きなまし、金槌で叩いて立体的に仕上げる打ち絞りなどを駆使し、器を製作していきます。

この製法を200年にわたり伝承するのが「玉川堂」さんです。築100年を超える登録有形文化財の工房では、20人ほどの職人が汗を流しています。

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鎚起銅器の製品。

鎚起銅器の製品。

工房内で作業をする職人さん。耳には耳栓が。

工房内で作業をする職人さん。耳には耳栓が。

7代目当主の叔父、玉川宣夫さんは人間国宝に認定。工房のギャラリーには急須やぐい吞み、タンブラー、一輪挿しなどが並び、その製作工程を見学することができます。

工房中に鳴り響く銅板を叩く鍛金(たんきん)作業、火炉と向き合う焼きなましの作業、化学変化で着色をする作業など、見飽きることがありません。

焼きなまし作業。

焼きなまし作業。

最近は大学卒業後の若い職人志願者も増えているとのこと、頼もしいですね。出来上がった作品は、まずその造形美にうっとり。そして、しっとりと手になじみ、ぬくもりも感じます。

【玉川堂】
新潟県燕市中央通り2-2-21
電話/0256-62-2015
※見学は5名以上は要予約。

■2:FACTORY FRONT(ファクトリーフロント)

燕市初のオープンファクトリーとして2014年に誕生した「FACTORY FRONT」。武田金型製作所の子会社である「MGNET(マグネット)」のオフィスです。

燕三条のモノづくりの発信地点として、〝ホテルのフロントのような役割″を目指しているとのこと。マグネシウムやステンレス製などの名刺入れを扱う店舗を併設し、奥では「銅板のしおりづくり」が楽しめます。

海外では第2のカード入れとして人気の名刺入れ。

海外では第2のカード入れとして人気の名刺入れ。

しおりづくりは、まず、金槌で全体を叩き、槌目をつけます。その後、厚紙でかたどった星形やアルファベットなどの型紙を裏から貼り付け、木槌でその形を浮き上がらせるように叩いていきます。

けっこう力を込めて、誰かの顔を思い浮かべながら(笑)叩きまくります。

金槌で槌目をつける。

金槌で槌目をつける。

模様を浮かび上がらせる。

模様を浮かび上がらせる。

最後にワックスで艶を出して完成。所要時間は30分ほどで、この世にひとつだけの銅のしおりが出来上がります。

【FACTORY FRONT(ファクトリーフロント)】
新潟県燕市東太田14-3
電話/0256-46-8720
※体験は要予約、1500円。

■3:藤次郎ナイフギャラリー

「藤次郎」は、全国でも5指に入る出荷量を誇る刃物メーカーで、そのブランドは世界中に知られています。

包丁の製法は大きく分けて3つあり、ハガネを打って仕上げる「打ち刃物」、ステンレスを鍛造し最終的に型で抜く「ステンレス鍛造刃物」、そして利器材を型で抜き仕上げる「抜き刃物」があり、「藤次郎」では抜き刃物を主流に製造しています。

その切れ味と性能、デザイン性が高く評価されており、ハガネをステンレスで挟み鍛造するラインナップは人気が高い商品です。また、セミオーダーの包丁も世界中から引き合いが来ています。

「藤次郎ナイフギャラリー」1階には1200品目という商品が並び、壮観。包丁・ナイフのほかにも美しいカトラリーも目を引きます。

ギャラリーに並ぶナイフの数々。

ギャラリーに並ぶナイフの数々。

隣接の工場では包丁づくりの様々な工程が見学できます。

研磨作業。

研磨作業。

包丁の研ぎ作業だけでも最低5工程が施され、一本一本にこれほどまでの手がかかっているのかと、日本のモノづくりの精密で丁寧な技に感心させられます。2つの醸造所を訪ねる

【藤次郎ナイフギャラリー】
新潟県燕市吉田東栄町55-18
電話/0256-93-4195
※見学は要予約。

次回は、歴史ある2つの醸造所を訪ねます。

取材・文/関屋淳子
桜と酒をこよなく愛する虎党。著書に『和歌・歌枕で巡る日本の景勝地』(ピエ・ブックス)、『ニッポンの産業遺産』(エイ出版)ほか。旅情報発信サイト「旅恋どっとこむ」(http://www.tabikoi.com)代表。

 

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