白く染めた牛革に、華やかな色彩を施した半月状のがま口財布は、見ているだけで心を奪われる美しさだ。なぜなら、ひとつの財布が生まれるまでに、さまざまな職人の手が加わり、熟練の技と時間を惜しまない手間がこの典雅な財布を作り上げているからである。
兵庫県姫路市を流れる市川に牛革を数日間浸してから、天然塩と菜種油を加えて乾燥させ、何度も揉んでなめし、白く染め上げたのが文庫革である。これに蝶や花の絵柄を型押しして、浮き上がったところに京友禅手描部門の伝統工芸士が一筆ずつ、丁寧に彩色を施す。こうして艶やかな「友禅文庫」ができあがるのだ。
手に取ればその薄さにも驚かされる。厚さは約1cm、バッグの中でもかさばらない。この薄さを実現させたのは、金具を内側の生地にはめ込む「天溝」の技術だ。表面からは口金のフレームがほとんど見えず、すっきりとした印象。装飾を加えられる革の面積も広がり、図柄の美しさが際立つ。口金と生地を固定するプレス機は国内に数台しかなく、扱える職人も少ないため、希少性が高い。
サイズは、約14cmと手になじむ大きさで、セカンド財布としても役に立つ。バッグから出したときに目を引くこと間違いなしで、日本女性をより美しく、エレガントに見せる財布である。
【今日の逸品】
友禅文庫 天溝がま口
林吾
10,450円(消費税込み)