尾戸焼は承応2年(1653)に土佐藩の藩窯として始まった。明治期まで茶道具を中心に製造され、土佐の国焼として広く知れ渡った。その多くは端正で薄作り。淡色の地肌に呉須で松竹梅や雲鶴、草木などが描かれていたという。明治以降、窯は民営化されたが、伝統の技は受け継がれ、現在は日常使いの器も多く作られている。
宴を盛り上げる温かな酒器
紹介する酒器は、明治から尾戸焼を継承する「谷製陶所」5代目・谷信一郎さん(50歳)の作品。「使う人の目線に立った器づくり」を心がけている谷さんの作品は存在感があり、使い勝手がいいと評判が高い。絵付けの酒器は舟徳利と、高知伝統のべく杯のセット。べく杯は底が独楽のように尖っているので、飲み干すまで卓に置けない。一方、灰釉の酒器は、木材を焼いてできた灰をかけて焼き上げたもの。炎の加減と釉薬の濃淡により偶然に表れた景色と土の風合いが面白く、じつに味わい深い。
【今日の逸品】
尾戸焼の酒器セット
谷製陶所
6,600円~(消費税込み)