【私のお気に入り~第114回】
山口・宇部のフランス料理店『NABI』

 

 

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洗練された店構えの『NABI』。店内は完全バリアフリーに。

 

山口県宇部市に大正5年創業の「かにかま」を作る機械メーカー「ヤナギヤ」があります。以前、この会社で講演した際、社長の柳屋さんに案内していただいたのがフランス料理店『NABI』でした。いまから10年ほど前のことです。

正直言って、店を訪ねるまでは「お付き合い」の気持ちで出かけたのですが、市外から離れた立地といい、レストランの佇まいといい、本格のフランス料理を提供したいという意気込みが感じられました。シェフとサービスを夫婦ふたりでまかなうという典型的な地方のフランス料理店ですが、料理はどの皿も見かけ倒しやハッタリといった小細工がなく、簡潔な盛り付けで素直な味わい。いっぺんで気に入りました。

食後に話を伺うと、私が来店するということを知って、前夜は遅くまで、どんな料理を出したらいいものか、ご夫婦で時を忘れて話し合ったそうです。そんなことは店の開業時もしたことがなかったとのことでした。その話を伺って、一度では申し訳ないと、宇部や萩に仕事や有事があるたびに立ち寄るようになりました。

先日、久しぶりに『NABI』を訪ねました。奇をてらうことのない、味わい深い料理は健在で、どの皿にも春の装いが感じられました。

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とり貝、ミル貝、筍を組み合わせた春を感じさせるひと品。

 

グリンピースのスープが突き出しに出され、ことのほか美味しかったのが、とり貝とミル貝と筍を組み合わせたひと皿。とり貝は春の一時期に姿を見せる甘みのある貝で、すぐに旬を終えてしまう儚い素材でもあります。これに、味の濃いミル貝を加え、さらに筍を添えてあります。ふたつの貝と筍が三位一体となった、春ならではの逸品です。

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上質な豚肉にアスパラガスなど季節の野菜を添えた主菜。

 

主菜は、豚肉に季節の野菜を添えた皿で、品の良い豚肉が野菜でいっそう美味しく仕上がっていました。ただ、少し気になったことがありました。アスパラガスが上下ふたつに切られて調理されているのですが、熱を加える際にそれぞれ同じ調理時間だったためか存分に持ち味を発揮しているとはいえず、「穂先側は香りを引き立てるために火は軽めに、軸側は糖度が高いのでじっくり火を入れてジューシーな甘みを引き出したらいかがでしょうか」と感想を伝えました。

シェフは、すぐに試してみますと即答してくれましたから、今頃はふたつの持ち味を堪能できるアスパラガスが皿の上にのっていることと思います。

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『NABI』のシェフ(左)と。

 

【NABI】

住所/山口県宇部市あすとぴあ5-1-1
TEL/0836-53-2078
営業時間/昼:12:00-13:30(L.O.)、ディナー:18:00-20:00(L.O.)
定休日/火曜
http://www.c-able.ne.jp/~nabi/

 

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