取材・文/坂口鈴香

親の終の棲家をどう選ぶ?| 任せて大丈夫? 信頼できる老人ホーム紹介センターを探すには

有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)など、民間の高齢者施設がたくさんありすぎてどうやって探したらよいのかわからない……。そんなとき、頼りになるのが「老人ホーム紹介センター」だろう。

前回の記事「親の終の棲家をどう選ぶ?」でも、「あなたの家の近くで老人ホームを探して」と母親に頼まれた娘さんは、駅の近くにあった「老人ホーム紹介センター」に飛び込んだ。老人ホームの入居者でも、「紹介センターで探した」と言う人は結構多い。

果たして、駅前の紹介センターで大丈夫なのか? インターネットで検索しても、数多くの紹介センターがヒットするが、信頼できる紹介センターはどう見極めればよいのだろうか?

当たるかは運? 紹介センターの実態

「身も蓋もないようですが、良い紹介センターに当たるかどうかは、『運』です」。ある著名な紹介センターの相談員は言う。

前掲の記事で、娘さんは母親に合ったホームを見つけることができたが、それはたまたま運がよかったということ。もしかすると、娘さんが飛び込んだ紹介センターが信頼できないものだった可能性もある、とその相談員は指摘する。

「老人ホームやサ高住がどんなサービスを提供しているのかなど、中身についてまったく知らずに、不動産の“物件”として老人ホームを紹介するセンターも少なくありません」。

言うまでもなく、老人ホームは不動産とは違って「駅から徒歩何分、価格は何千万」というデータだけで選ぶものではない。本来、紹介センターは、ホームで提供されるサービス内容や質、介護理念などからホームの特徴を把握し、探す人が求めているホームか、その人に合っているのか考えて提案できないといけないはずだ。ところが“不動産屋”的紹介センターは、価格と立地条件が合致していれば、それらのホームをすべて紹介するという。そこから何を基準に選べばよいのか途方に暮れる人は多いだろうし、それがミスマッチを引き起こす原因ともなっているのだ。

そもそも、老人ホーム紹介センターとは何なのか。どういう仕組みなのか見てみよう。

老人ホーム紹介センターの仕組み。その建前と本音

「老人ホーム紹介センター」という名称のとおり、有料老人ホームやサ高住などを紹介している。相談は基本的に無料。契約が成立し、入居となれば、ホーム側から紹介センターに紹介手数料が入るという仕組みだ。

「“早いもの勝ち”なので、数多くのホームを紹介しておけば、そのどれかに入居してもらえる確率も高くなる。だからデータだけで合致するホームを紹介するようなことも起きるのです」と前出の相談員は明かす。

ホーム側にも事情がある。

「空室があって、早く埋めたい場合には“キャンペーン”として、手数料を割り増しすることがあります。当然手数料の高いホームを優先して紹介するセンターもあります」。

そういう場合の決まり文句があるという。それが、
「今ならお得」
「○日までに契約しないと埋まります」
などというものだ。

「こういった紹介の仕方は、あくまでも紹介センターの都合であって、入居者のことを考えているとはとても言えません」。

信頼できる老人ホーム紹介センターを見極めるポイント

まず、ホーム紹介センターは、保険会社から手数料をもらって運営している保険ショップと同様、完全に公平・中立とは言えないということを念頭に置いてほしい。そのうえで、「こういう紹介センターは要注意」ポイントを挙げてみよう。

●立地と予算(前払い金や月額費用)だけで、条件に合致するホームをたくさん紹介するセンターには要注意

ちなみに前出の相談員が紹介するのは、3施設程度だという。実際、それくらいが比較検討できる限界だろう。

●「今ならお得」「○日までに契約しないと埋まります」などと契約を急がせる言葉が出る紹介センターは要注意

信頼できる紹介センターなら、“紹介手数料割り増しキャンペーン”などとは関係なく、本当にその人に合ったホームを紹介するという信念があるし、急かすこともない。

* * *

今回は、老人ホーム紹介センターについて解説した。

ある人にとってそのホームがどんなに良いホームでも、親や自分にとってもそうとは限らない。その住まいが親や自分に合っているか最終的に判断するのは、本人であり、本人が判断できない場合は家族なのだ。

そのために大切なのは、実際に自分の目で見ること、できれば体験入居してみることだ。

そして、少しでも親や自分に合ったホームを紹介してもらうためには、「ホームにお任せ」ではなく、主体性を持って「入居後ホームでどんな生活をしたいのか」を紹介センターに伝えてほしい。介護が必要になっても、人生は自分のものなのだから。

取材・文/坂口鈴香
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終活ライター”。訪問した施設は100か所以上。20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

 

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