文/印南敦史

定年後のお金の不安を解消する3つの答え|『「定年後」の‟お金の不安“をなくす 貯金がなくても安心老後をすごす方法』
少なくとも十数年前まで、「定年」ということばには明るいイメージが多少なりともあったのではないか? 「定年=好きなことができるようになる」というように。

とはいえ一方にはお金の不安もあったに違いなく、しかも近年は「安心して老後を過ごせるほどの蓄えがない」と切羽詰まった人が、以前よりも増えているようにも思える。

とくに50代になると、定年は日を追うごとに現実的なものとなるだろう。だが「そろそろ考えなくては」と思ってはいても、「現実問題として、なにからどうすればいいのかわからない」という方も少なくないはずだ。

それは、経済コラムニストである『「定年後」の‟お金の不安“をなくす 貯金がなくても安心老後をすごす方法』(大江英樹 著、総合法令出版)の著者も同じだったようだ。

長年のサラリーマン生活を経て定年を迎えてから7年が経つというが、10年くらい前は、この2つの気持ちが複雑に入り混じっていたというのである。

とくにお金の面については、他の人にくらべてかなり蓄えが少なかったため、なかなか不安を拭い去ることができなかったと振り返っている。

 ところが結論から言えば、サラリーマンの場合は、老後のお金についてはあまり過剰に心配する必要はないのです。実際に自分が体験してきたことに基づいて言えば、やり方さえ間違わなければ、それほど案ずることはありません。むしろ、老後のお金の不安を煽るマスコミや金融機関に乗せられて、不用意に退職金等のまとまったお金を投資してしまうことの方が、よほど老後のリスクだと思います。(本書「はじめに」より引用)

そもそも、定年退職時に何千万円ものお金を持っている人など、ほんのひと握り。マスコミや金融機関は「定年時に○千万円ないと老後破綻」などと喧伝するが、著者の経験からいうと、ほとんどの人は実際に破綻などしていないという。

だが、そうはいっても、60歳の定年が近づいているにもかかわらず貯金がほとんどないとしたら、それはやはり不安である。この問題に対する答えは、サラリーマンと自営業者では変わってくるだろう。しかしその一方、いずれの職業でも共通することが3つあるのだそうだ。

(1)支出を見なおすこと

著者いわく、これこそが最も大事なこと。多くの人は現役時代、収入のことしか考えていないが、実は支出のほうがずっと大切だというのだ。なぜなら多くの場合、収入はなかなかコントロールできないものの、支出はある程度コントロールが可能だから。

そして60歳近くになっても貯金がほとんどないのは、支出のコントロールをあまりしてこなかったからだろうと著者は指摘している。だとすれば、それをすぐに改善するのは現実的に難しいかもしれない。

が、気がついたときからすぐに始めれば、そこからでも蓄えをつくることは可能になるのだ。

(2)可能な限り働き続けること

元気で働けるうちは働くべきだと著者は主張する。サラリーマンの場合は定年があるわけだが、定年が60歳だとしても、いまはほとんどの企業で65歳までの雇用が可能になっている。また現在は男性でも平均寿命が80代前半にまで伸びているため、70歳まで働いてもまったく不思議ではない。

仮に60歳の時点で貯金がほとんどなかったとしても、そこから10年間しっかり働けば蓄えをつくることも不可能ではないのだ。実際、周囲を見渡してみれば、70歳で働いている人はたくさんいるはずである。

(3)公的な保障の仕組みをよく知っておくこと

いうまでもなく、年金は非常に重要。また年金以外にも、病気になったときや失業したときなど、国や地方自治体の支援を受けられる制度は少なくない。

たとえば病気やケガで仕事を長く休まなければならなくなった場合は、国から「傷病手当金」が支給されるし、失業した場合でも「基本手当」に加え、再就職のための「教育訓練給付金」なども用意されている。

 多くの人は税や社会保障の仕組みをあまりよく知りませんが、調べてみると国からもらえるお金というのは多岐にわたっています。制度があることを知らないために損をしているとすれば、もったいない話です。これまで所得税や住民税をたくさん払ってきたのですから、それに見合ったサービスを受けるのは当然の権利です。(本書「はじめに」より引用)

このように、60歳で蓄えがほとんどなかったとしても、ある程度の工夫をすれば決して生活できないわけではないのである。そして気をつけるべきは、焦らないようにすること。

将来への不安から、退職金を元手に投資で増やそうと考える人もいるが、投資による成果はあくまでも不確実なもの。そして、その原資は大切な生活資金である。そんな大切なお金を、リスクにさらすべきではないと著者は訴えるのだ。

まず考えるべきは上記の3つのことがらであり、投資は、ある程度資金の余裕ができてからにすべきだということ。

なお、仮に手元の貯金がなかったとしても、公的年金の給付は終身であり、死ぬまで受け取ることができる。つまり年金はとても頼りになるものなのだが、多くの人がその重要性を認識しておらず、仕組みについてもよく理解していない。

だからこそ、基本的に知っておくべきことからはじまり、年金不安の解消法、収支の考え方、働くことの意味、資産運用について気をつけるべきことなどが解説された本書を、ぜひ参考にしたい。そうすればきっと、多くの不安を解消できることだろうから。

『「定年後」の‟お金の不安“をなくす 貯金がなくても安心老後をすごす方法』

大江英樹著

総合法令出版

税込価格 1,404円(本体 1,300円)

発行年2019年6月
『「定年後」の‟お金の不安“をなくす 貯金がなくても安心老後をすごす方法』

文/印南敦史
作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』などがある。新刊は『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)。

 

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