取材・文/坂口鈴香

【介護と仕事を両立するには】「介護休業と介護休暇」知っておきたい基本のき

涼風さんによる写真ACからの写真

「介護離職」が社会問題となっている。仕事をしながら介護をするのは簡単なことではない。「3度の脳梗塞に襲われた妻。その時、夫がした決断は……」で登場した金澤さんは、母親と妻の介護に直面し、定年まで数年を残して早期退職を選んだ。これが40代や50代前半だとそうはいかない。親の年金をあてにして、仕事を辞めても、介護には必ず終わりが来る。あてにしていた親の年金がなくなり、さて仕事を再開しようとしても簡単には見つからない。介護が終わったあとの自分の生活を考えると、介護離職は何としてでも避けてほしい。

そこで今回は、介護と仕事を両立させるために知っておきたい制度について解説しよう。その筆頭が「介護休業制度」だ。

◆介護休業制度とは

介護が必要な対象家族1人につき、通算93日まで、3回を上限として取得できる。

この「要介護状態」とは、負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態をいい、介護保険制度の要介護・要支援認定を受けていない場合でも取得できる。

対象家族とは、配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫をいう。

◆介護休暇とは

「介護休業制度」とは別に、「介護休暇制度」も設けられている。「壊れていく母 追い詰められる父」で紹介した大島さんが母親の介護のために取得したのが、介護休暇だ。

これは、介護が必要な対象家族が1人であれば年に5日まで、2人以上であれば年に10日まで、半日単位で取得できるという制度だ。

◆介護休業や介護休暇をどう活用するか

介護休業や介護休暇は、家族自身が介護するためだけではなく、働きながら介護していくための態勢や環境を整えるために使うことをおすすめする。

地域包括支援センターケアマネジャーへの相談、市区町村窓口での申請手続き、介護保険の認定調査などといった介護サービスを受けるための準備にあてることもできる。また、ケアマネジャーが月1回行う状況確認や、サービス担当者会議(ケアプランの作成や変更時にケアマネジャーが開催する会議)など、介護に関するやり取りは平日に開かれることが多い。介護休暇は半日単位で取得できるので、活用するとよいだろう。

◆介護休業や介護休暇を取得するには

介護休業を取得するには、介護休業開始予定の2週間前までに書面などによって事業主に申し出なければならない。

介護休暇も事業主に申し出る必要があるが、緊急の場合もあるので電話など口頭で申し出てもよい。

◆介護休業中の給料はどうなる?

原則として、休業中の給料は支払われない。

ただし、雇用保険から介護休業給付金が支払われる。一定の要件を満たせば、介護休業開始時賃金月額の67%が、介護休業開始日から最長3か月間支給される。給付額には上限があり、また介護休業期間中に賃金が支払われていると減額される場合がある。

◆所定労働時間の短縮等

事業主は、(1)短時間勤務制度、(2)フレックスタイム制度、(3)時差出勤制度、(4)介護サービスの費用助成のいずれかの措置を、介護休業とは別に、利用開始から3年間で2回以上の利用が可能な措置を講じなければならないことになっている。

◆所定外労働の免除

要介護状態にある対象家族を介護する労働者は、所定外労働の免除を請求することができる。1回の請求につき1月以上1年以内の期間で請求でき、介護終了までの必要なときに利用することが可能だ。

そのほか、法定時間外労働の免除(1か月に24時間、1年に150時間を超える時間外労働が免除される)、深夜業の制限、転勤に対する配慮、不利益取扱いの禁止も定められている。

介護休業、介護休暇、所定外労働・法定時間外労働・深夜業の制限は、就業規則に制度がなくても、申し出によって利用できる。ただし、勤務先の労使協定の定めによっては、勤続年数が1年未満の方など、取得できない場合がある。

◆会社独自の両立支援制度

会社によっては、独自の両立支援制度を設けているところもある。前年の有給休暇の未消化分を翌年度に繰り越して、介護休暇として利用できるなど、法律を上回る内容の制度を整備している会社もある。半日や時間単位の休暇制度があれば、介護保険の認定調査やケアマネジャーによる状況確認、サービス担当者会議に同席できるだろう。まずは自社の制度を確認しておこう。

* * *

今回は、介護と仕事を両立するための制度について解説した。

厚生労働省では「仕事と介護 両立のポイント」をまとめており、制度の内容のほかに、専門職によるアドバイスや両立事例が掲載されている。さまざまな介護と働き方のパターンが紹介されているので、ぜひ参考にしてみてほしい。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000154737.pdf

取材・文/坂口鈴香
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終活ライター”。訪問した施設は100か所以上。20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

 

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