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「断捨離」の生みの親が考える「人生100年時代」のシンプルな生き方|『定年後の断捨離~モノを減らして、愉快に生きる』

文/印南敦史

人生の節目で人とモノとの関係を考える『定年後の断捨離~モノを減らして、愉快に生きる』

「断捨離」ということばも、いまやすっかりおなじみになった。とはいえ、どこか他人事のように捉えていた方も多いのではないだろうか。しかし、そこに「定年後」が加わると、一気にリアリティが増してきそうだ。

『定年後の断捨離~モノを減らして、愉快に生きる』(やましたひでこ著、大和書房)の著者は、「断捨離」の生みの親である。55歳のとき『新・片づけ術 断捨離』(マガジンハウス)がベストセラーとなって人生が一変し、断捨離のスペシャリストとしての新たな人生がスタートした。

64歳の現在は70歳の夫とともに、40年間暮らした石川県小松市を離れ、沖縄県那覇市で暮らしている。それもまた、「家と地域と人間関係を断捨離した選択」なのだそうだ。

しかし、仕事として断捨離に取り組むなか、常々感じていたことがあるのだという。

「今」必要としなくなった「過去」のモノに囲まれて、「未来」を描けなくなっている人たちのなんと多いことか。(本書「はじめに-モノが減ると、なぜ『愉快』になるのか」より引用)

「人生100年時代」と言われるようになって久しいが、現実問題としては「100歳まで生きられる」ことを喜ぶよりも先に、健康不安、経済的不安、人間関係の不安を感じる人のほうが多いはず。

そして、私たちはいつ死ぬのかわからない。だとすればそれは、「死ぬまでは生きていく」ということである。そこで、終活として人生をどう終わらせていくかではなく、どうよりよく生きていくかが大切だと主張しているのだ。

これからの20年、30年、40年を生きていくためにすべきことは、「生きている空間」を検討することにほかならないとも。そこで、「断捨離」という価値観が大きな意味を持つというわけである。

断捨離とは、「日常の生活空間を健やかに整えていこうとする小さな営み」であると著者。または、メンテナンス、ケアと言い換えることもできるだろう。

これまでは仕事や家事、子育てなどに追われ、身のまわりのメンテナンスをする余裕がなかったという人は多い。その結果、無意識・無自覚のまま、漠然とモノを抱え込んでしまっている人、あるいはモノが多いことを意識していながらも、身動きがとれなくなっている人もいるはずだ。

そう、放っておけば、いや、それどころか意識していたとしても、モノは必然的にたまってしまうのである。だが、たまりにたまったモノが、暮らしや生き方、考え方、健康などに影響を与える大きな要素になっていたとしたら、それは深刻な問題だと言わざるを得ない。

だからこそ、「定年」という人生の大きな節目に周囲をじっくり点検し、たまっているおりを綺麗に断捨離すべきだというのである。

断捨離とは、人生のなかの「不要・不適・不快」を捨て、手放していくプロセス。
断捨離とは、人生のなかに「要・適・快」を招き入れるプロセス。
(本書「はじめにーーモノが減ると、なぜ『愉快』になるのか」より引用)

著者は、断捨離をツールとしてそのプロセスを味わってもらい、人生の新陳代謝を促すことが自身の役割だと記している。

本書ではそうした考え方に基づいて生活空間におけるモノをひとつひとつ点検し、「これから先の人生を共にしたいモノ」を選び抜くための考え方を説いている。

そしてそのうえで、生活空間そのものである家について、それを取り囲む土地や地域について、さらには人間関係について、「要・適・快」「不要・不適・不快」を問いかけようとしているのだ。

もちろんそうした作業を進めていくうえでは、これまで「常識」と思い込んでいたことがらから脱する必要性が生じてくるに違いない。しかし、そうやって価値観を転換させること、すなわち「縛り」「執着」「思い込み」の断捨離をすることも重要。それもまた、本書のテーマであるという。

1.とにかくモノを減らす
2.主婦を「定年」する
3.家と土地に縛られない
4.新しい友達をつくる
5.「そこそこ人生」を断捨離する
(本書「序章/「これまでの常識」を断捨離する」より引用)

「定年後を愉快に生きる5か条」として、著者はこの5項目を挙げている。

生きるために必要なモノは、それほど多くない。だとすれば、「いま、自分になにが必要なのか」がわかれば、余計なモノを手放せることになる。それが1.で伝えようとしていること。

2.は、夫婦共働きの場合、あるいは夫婦ともに家にいる場合、どちらか片方に負担がかからないようにすべきだからこそ、妻には主婦を定年退職してもらおうという考え方。

広い家に住んでいると、モノを捨てなくても済むと思い込み、どんどん家のなかに溜め込んでいってしまうもの。しかし、その結果としてモノの代謝が悪くなって家が荒れてくる。そこで3.では、「主役は家なのか、自分なのか」について改めて考えてみるべきだという提案をしている。

夫婦はお互いに、「どうぞ、どうぞ」とお互いを送り出せるような関係であることが大切。そのため、人生のいろいろな「場面」を共有できる、いい友だちをつくろうというのが4.の主張だ。

私たちはある選択を迫られた際、「ほどほど」「そこそこ」を選んでしまいがち。しかし人生は一度きりなのだから、ときに「えいっ」と次に踏み出すことも大事。それこそが、5.における主張。

これら5つを軸としながら、本書では断捨離をさまざまな角度から考察しているのである。

家が狭くなったと感じたっとき、引越しが決まったとき、あるいは配偶者を失ったときなど、人生の節目で人はしばしばモノとの関係について考えさせられるものだ。

だからこそ本書を参考にしながら、「自分にできそうな断捨離」を意識してみてはいかがだろうか?

『定年後の断捨離~モノを減らして、愉快に生きる』

やましたひでこ 著

大和書房

定価:1400円(本体)

発行年2018年10月

『定年後の断捨離~モノを減らして、愉快に生きる』

文/印南敦史
作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』などがある。新刊は『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)。

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