取材・文/ふじのあやこ
近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。
「当たり前のように用意されていたもののありがたみがわかったのは、大人になってからなんですよね」と語るのは、朋美さん(仮名・38歳)。彼女は現在、都内の企業で働いています。質問には一つ一つ丁寧に回答してくれて、一度も姿勢を崩さないところやゆっくりと話す姿から、落ち着いた品のある女性といった印象を受けます。
両親は定年までずっと共働き。夏休みは寂しくて不安で仕方なかった
朋美さんは兵庫県出身で、両親と8歳上に姉のいる4人家族。両親の出会いは職場で、2人とも定年まで同じ会社で働き続けたと言います。
「母親のほうが7歳下なので、同僚というわけではなかったんですが、社内恋愛の末に結婚したみたいです。そして2人とも結婚してからも60歳の定年まで同じ会社で働いていました。私は姉と年齢が離れている分、母親が30歳を超えてからの子供なので、母親ももう70歳。母親が定年退職したのはもう10年前の話になります」
小さい頃からずっと共働きの両親を持つ朋美さんが当時の記憶として覚えていることは寂しさだったそうです。
「母親は17時半くらいに帰宅してくるので、学校から帰ってきたらそこまでは一人ぼっちなんです。小学生の時に姉は中学生や高校生で部活が忙しく、親よりも帰宅が遅かったから。まだ平日は我慢できるんですが、一番辛かった記憶として残っているのは、夏休みなどの長期休暇です。朝起きたらもう両親はいなくて、夕方まで誰も帰ってこない。当時朝から昼ぐらいまで夏休みだけのアニメがよくテレビでやっていたんです。それを見て、母親が用意してくれていたご飯を食べて、その後は時間を持て余していたので宿題などをやっていました。小学校高学年になると友人と遊んだりしていたんですが、低学年の時は誰とも遊ばずにずっと家に居たので、寂しくて不安で仕方なかったことを覚えていますね」
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