では、相続問題の専門家・曽根惠子さんに解説とアドバイスを伺いましょう。
受取人がその女性であったとしても、保険金は財産の遺贈(※注)を受けたことになり、相続税がかかります。
「ちょっとまってください。そしたら、女性が受け取った2500万円については、誰が相続税を払うのでしょうか?」と。
現在のところ、女性が受け取った生命保険料金は、全体の7%程度。相続税は、相続人が受け取った財産の割合に応じて、相続税を払うことになります。彼女が払わねばならない相続税は、9200万円の7%の644万円程度。相続人ではない場合は、2割増しとなり、722万円の相続税を納税する義務があります。
さらに吉田さんがすべきことは、預金の入出金を確認して生前に引き出されたものがないかを確認することです。母親や吉田さん、息子は父親から贈与は一切受けていないということですので、引き出された預金があるとすればその女性に渡ったものと想定されるからです。
税務署から相続人が贈与を受けていたと指摘されないよう、その女性が受け取ったとして申告をするようにします。当然、生命保険も申告をし、本来の相続人がその女性の分まで納税しないで済む様に申告をします。
「相続税は連帯保証という噂を聞いたことがあります。もし、彼女がしらばっくれて納税しなかったら、私たちが払う必要があるのでしょうか」と吉田さん。
相続税は受け取った財産に対して課税されますので、本人が納税することが原則であることを説明すると吉田さんはホッとされたようでした。
【今回の教訓】
資産がある一人暮らしの男性が、女性に付け込まれて財産を渡してしまうケースは本当にあります。顔を出さない子どもよりも、親切にしてくれる女性のいいなりになってしまうということでしょうが、親に資産があり、高齢、一人暮らしなどの場合はやはり要注意。定期的に行き来するなど日ごろの様子を知っておくことが必要でしょう。
(※注)『遺贈』・・・相続人でない人が、遺言等により、亡くなってから財産を受け取ることを「遺贈」という。この場合、財産を受け取った人は、贈与税ではなく、相続税を支払うことになり、「相続税の2割加算」が適用される。
監修・曽根惠子さん
夢相続 代表。PHP研究所勤務後、不動産会社設立し、相続コーディネート業務を開始。1万3000件以上の相続相談に対処、感情面、経済面に即したオーダーメード相続を提案。『相続はふつうの家庭が一番もめる』(PHP研究所)、『相続に困ったら最初に読む本』(ダイヤモンド社)、『相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル』(幻冬舎MC)ほか著書多数。
取材・文/沢木文
イラスト/上田耀子