若き頃は、自分の生きる道、己のあるべき姿を思い描きながら、その目標を見失わないために格言、諺(ことわざ)、偉人たちが残した名言などを心に抱き、日々の生活を送っていたように思います。そうして半世紀以上を経て、己の人生を振り返った時、かつて思い描いていた姿とはかけ離れたものかもしれません。

しかし、人生折り返しと考えるならば、新たな「あるべき姿」を描き、生きることもできるようにも思います。そんな第二の人生のために、改めて座右の銘とする言葉を持つのはいかがでしょうか? 

第11回の座右の銘にしたい言葉は「粉骨砕身」(ふんこつさいしん) をご紹介します。

目次
「粉骨砕身」の意味
「粉骨砕身」の由来
「粉骨砕身」を座右の銘としてスピーチするなら
まとめ

「粉骨砕身」の意味

「粉骨砕身」について、『⼩学館デジタル⼤辞泉』では、「力の限り懸命に働くこと」と説明されています。文字通りには「骨を粉にし、身を砕く」ことを意味し、比喩的には、目標達成や大きな夢の実現のために全力を尽くし、力の限り努力すること、自己犠牲を惜しまない姿勢を表します。

この言葉は、目標に向かっての不屈の努力と、障害を乗り越える強い意志を象徴しています。特に仕事の上で、心を尽くして努力することを誓う場合に用いられることが多いです。

「粉骨砕身」の由来

「粉骨砕身」は中国唐の時代に書かれた禅宗の経典『禅林類纂(ぜんりんるいさん)』によるものと言われています。そこには次のような記述があります。

粉骨砕身未足酬 (粉骨砕身も未だ酬〈むく〉ゆるに足らず)
一句了然超百億 (一句了然として百億を超う)

【現代語訳】
たとえ骨を削り身を砕くほど力の限り尽くしても、お釈迦様のありがたい恩に報いるのは難しい。
お釈迦様の説法は一句だけだとしても百億年の修業を超えるような価値があるというのに。

力の限り努力するという意味で、古くから、この表現は学問や技芸の修練、あるいは国のための奉仕など、さまざまな文脈で使われてきました。その根底にあるのは、目標達成のための絶え間ない努力と献身の精神です。

「粉骨砕身」を座右の銘としてスピーチするなら

「粉骨砕身」という言葉には、人生の様々な場面で全力を尽くすことの美しさと重要性が込められています。「粉骨砕身」を座右の銘とすることは、自己との約束でもあります。私たちの人生には、挑戦する価値のある目標が常に存在します。粉骨砕身の精神は、私たちがそれらの目標に向かって一歩一歩進むための指針です。

「粉骨砕身」を座右の銘としてスピーチするなら、この言葉が私たちの日々の行動や決断にどのような影響を与えるのか、そしてそれを他者にどのように伝えるかが重要になります。以下に「粉骨砕身」を取り入れたスピーチの例を三つあげます。

1:新しいキャリアの道を歩み始めるシニアへのスピーチ例

「私たちの人生には、始まりがいくつもあります。シニアとして新しいキャリアの道を歩み始める今、私は『粉骨砕身』という言葉を胸に刻んでいます。この言葉は、新たな挑戦に立ち向かう際の私たちの姿勢を象徴しています。挑戦は容易ではありませんが、この座右の銘を持つことで、目の前の困難も乗り越えられると信じています。私たちの努力と献身が、最終的には成功へと導く道であることを忘れないでください。」

2:地域コミュニティでのボランティア活動を奨励するスピーチ例

「地域コミュニティをより良い場所にするために、私たち一人ひとりができることはたくさんあります。私は『粉骨砕身』という言葉を胸に活動しています。これは、私たちがコミュニティのために自分自身を捧げることの重要性を示しています。小さな行動でも、集まれば大きな変化を生み出すことができます。この座右の銘を共有することで、私たちの小さな努力がいかに大きな影響を与えるかを皆さんに伝えたいのです。」

3:学習と成長についてのスピーチ例

「学び続けることは、私たちが絶えず変化する世界で生き残るために不可欠です。新しい技術や知識を学ぶ過程で、『粉骨砕身』という座右の銘が私のガイドとなっています。この言葉は、難解な問題に直面したときや、新しいスキルを身につける際の努力と献身を思い出させてくれます。学習は時に挑戦的ですが、粉骨砕身の精神を持って取り組むことで、成長の旅は無限に広がっています。」

まとめ

「粉骨砕身」という言葉には、単なる四字熟語以上の力があります。それは、目標に向かって全力を尽くすことの大切さ、そして人生のどの段階においても成長し続けることができるという希望のメッセージを私たちに伝えてくれます。

シニアの皆さんにとって、この言葉を座右の銘とすることは、新たな挑戦への勇気と、人生の晩年をさらに豊かにする強い心構えをもたらします。粉骨砕身の精神を持って、今日からでも新しい挑戦を始めてみてはいかがでしょうか。あなたの人生がより意味深く、充実したものになることでしょう。

●執筆/武田さゆり

武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。

●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com

 

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