「謹厳実直」の読み方、意味、由来とは？｜変化の時代に流されない、確固たる自分軸【座右の銘にしたい言葉】

若き頃は、自分の生きる道、己のあるべき姿を思い描きながら、その目標を見失わないために格言、諺（ことわざ）、偉人たちが残した名言などを心に抱き、日々の生活を送っていたように思います。そうして半世紀以上を経て、己の人生を振り返った時、かつて思い描いていた姿とはかけ離れたものかもしれません。

しかし、人生の折り返しと考えるならば、新たな「あるべき姿」を描き、生きることもできるようにも思います。そんな第二の人生のために、改めて座右の銘とする言葉を持つのはいかがでしょうか？

今回の座右の銘にしたい言葉は「謹厳実直（きんげんじっちょく）」 をご紹介します。

目次
「謹厳実直」の意味
「謹厳実直」の由来
「謹厳実直」を座右の銘としてスピーチするなら
最後に

「謹厳実直」の意味

「謹厳実直」について、『⼩学館デジタル⼤辞泉』では、「つつしみ深くまじめで正直であること。また、そのさま」とあります。四字熟語として知られていますが、その一つ一つの文字には深い意味が込められています。

「謹」は慎み深さや丁寧さを表し、「厳」は厳格さや厳正さを意味します。「実」は誠実さや実質を、「直」は正直さや素直さを表現しています。これらを組み合わせると、「慎み深く厳格であり、誠実かつ正直である」という姿勢や心構えを表す言葉となります。つまり、形式だけでなく中身も伴った、真摯な生き方を示す言葉なのです。

SNSの普及により気軽に発言できる時代だからこそ、言葉に責任を持つ「謹」の精神。AI技術の発展により効率化が進む一方で、人間にしかできない誠実な対応という「実」の価値。これらは現代社会において、むしろ一層重要性を増しているのです。

「謹厳実直」の由来

「謹厳実直」という言葉の明確な出典を特定することは難しいのですが、古くから日本人の美徳として尊ばれてきた考え方であることは間違いありません。武士道精神にも通じるような、己を律し、誠を尽くす生き方は、多くの歴史上の人物の言動にも見出すことができます。

例えば、明治の実業家、渋沢栄一は「道徳経済合一説」を唱え、経済活動の根底には高い倫理観が必要であると説きました。これもまた、「謹厳実直」の精神が社会を支えるという考え方と深く結びついています。

特に戦後の復興期には、「謹厳実直」な姿勢が日本の経済成長を支える原動力となったと言っても過言ではありません。高度経済成長期を支えた世代である私たちサライ世代にとって、この言葉は単なる古い美徳ではなく、実際に社会を築き上げてきた生きた哲学なのです。

「謹厳実直」を座右の銘としてスピーチするなら

「謹厳実直」を座右の銘としてスピーチするときは、「謹厳実直」がどのように役立つかを、具体例をあげて説明することで、聴衆にさらなる理解を促します。以下に、「謹厳実直」を取り入れたスピーチの例をあげます。

「謹厳実直」を心の拠りどころとするスピーチ例

人生も後半に差し掛かり、これまでを振り返りますと、様々な出会いや経験がありました。その中で、私が常に心の拠り所としてまいりましたのが、「謹厳実直」という言葉です。

若い頃は、要領よく立ち回ることをよしとする風潮に、少々戸惑いを覚えたこともありました。しかし、長年勤め上げた会社生活や、地域での活動を通して、結局のところ、人が本当に信頼を寄せるのは、誠実で真面目な姿勢なのだと、身をもって学んでまいりました。

例えば、退職後に始めた趣味の会でも、新しいことを覚えるのは若い方々にかないません。しかし、一つ一つ丁寧に、真摯に取り組むことを心がけておりますと、自然と仲間が増え、教え合う喜びも生まれました。

派手さはありませんが、この「謹厳実直」の精神こそが、私のささやかな誇りであり、これからの人生を照らす灯火でもあると感じております。この言葉を胸に、これからも実直に、感謝の心をもって日々を重ねて参りたいと思います。

最後に

「謹厳実直」という言葉は、決して古臭い道徳観ではありません。むしろ、情報が錯綜し、価値観が多様化する現代において、私たちが自分自身を見失わず、確かな足取りで人生を歩むための、普遍的で力強い道しるべとなり得る言葉なのではないでしょうか。

●執筆／武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。

●構成／京都メディアライン・https://kyotomedialine.com