若き頃は、自分の生きる道、己のあるべき姿を思い描きながら、その目標を見失わないために格言、諺(ことわざ)、偉人たちが残した名言などを心に抱き、日々の生活を送っていたように思います。そうして半世紀以上を経て、己の人生を振り返った時、かつて思い描いていた姿とはかけ離れたものかもしれません。
しかし、人生折り返しと考えるならば、新たな「あるべき姿」を描き、生きることもできるようにも思います。そんな第二の人生ために、改めて座右の銘とする言葉を持つのは如何でしょうか?
第31回の座右の銘にしたい言葉は「清廉潔白(せいれんけっぱく)」 をご紹介します。
目次
「清廉潔白」の意味
「清廉潔白」の由来
「清廉潔白」を座右の銘としてスピーチするなら
最後に
「清廉潔白」の意味
「清廉潔白」について、『⼩学館デジタル⼤辞泉』では、「心が清くて私欲がなく、後ろ暗いところのないこと。また、そのさま」とあります。この言葉は、誠実さと清らかさを象徴し、人生において非常に大切な道徳的な指針となります。
特に、人生経験を積んできたシニア世代にとって、心の支えとして「清廉潔白」を座右の銘にすることは、これまでの生き方を振り返り、これからの人生を豊かにするための素晴らしい選択となるでしょう。
「清廉潔白」の由来
この言葉は、「清廉」と「潔白」という2つの言葉から成り立っています。「廉」には清く正しいという意味があるので「清廉」は、心が清く汚れのないこと、また自分の利欲に心を動かされないことを指します。「潔白」は、不正を行わず、心が潔いことを意味します。つまり、清廉潔白とは、誠実で正直な生き方を貫くことを表しているのです。
中国後漢の思想家、王符が著した『潜夫論』に「清廉潔白」という表記は見られるものの、特に故事成句というわけではなく一般的な漢語表現とみなされています。
日本でも、昭和 20年1月に刊行された、井原西鶴の作品をもとに太宰治が書いた小説『新釈諸国噺(しんしゃくしょこくばなし)』の「裸川」に、
けれども青砥は、決して卑しい守銭奴ではない。質素倹約、清廉潔白の官吏である。
太宰治『新釈諸国噺』
といった表記があります。
「清廉潔白」を座右の銘としてスピーチするなら
「清廉潔白」を座右の銘にしてスピーチを行なう際には、個人的な経験に基づいた信念を語ることで、聴衆に共感を得ることができます。具体的なエピソードを交え、誠実さや正直さがどのように自分の人生に役立ったかを示すと説得力が増します。以下に「清廉潔白」を取り入れたスピーチの例をあげます。
誠実さが正しい選択に導いたスピーチ例
私が座右の銘にしている言葉は、「清廉潔白」です。これは、誠実であり、正直であることを意味します。振り返ってみると、この言葉は私の人生の中で常に道しるべとなり、どんな時も正しい選択をするための支えとなってきました。
若い頃、職場で難しい選択を迫られたことが何度もありました。利益や成功を追い求める誘惑もありましたが、その時にいつも思い出したのが、この「清廉潔白」の言葉です。私は、短期的な利益よりも、長期的に誠実であることの大切さを選びました。その結果、周囲からの信頼を得ることができ、人間関係がより強固なものになりました。
また、家族との関係でも、この言葉が私の信念の柱となりました。子供たちには、何があっても誠実であり続けることの大切さを伝え、彼らもその教えを守り、自分の人生を歩んでいます。
「清廉潔白」は、私たちシニア世代にとって、次世代に伝えたい大切な価値です。この言葉を胸に刻むことで、どんな状況でも誠実であることができ、他者からの信頼を築くことができるでしょう。皆さんもぜひ、この言葉を日常の指針として大切にしてみてください。
最後に
「清廉潔白」を座右の銘にすることは、人生における確固たる信念を持つことを意味します。誠実さを軸にした生き方は、他者からの信頼を築き、自分自身にも誇りを持つことができる素晴らしい方法です。
この言葉を座右の銘にし、日々の生活の中で実践していくことで、心の安定と充実感を手に入れましょう。人生の様々な局面で、「清廉潔白」があなたを支える力強い道しるべとなってくれるはずです。
●執筆/武田さゆり
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com