
近年、「線状降水帯」など、大雨に関連する言葉を聞く機会が増え、天気についてより気にかけるようになった人も多いのではないでしょうか。
『眠れなくなるほど面白い 図解 天気の話』(著・荒木健太郎、太田絢子、佐々木恭子/日本文芸社)では、様々な天気についてのうんちくを教えてくれます。
今回は、『眠れなくなるほど面白い 図解 天気の話』の中から、「集中豪雨をもたらす『線状降水帯』とは?」と「日本に梅雨がある理由」を取り上げます。
線状降水帯は積乱雲が連なることで発生
近年、線状降水帯による集中豪雨が各地で発生し、多くの甚大な被害が生じています。
線状降水帯とは、発達した積乱雲が次々と発生して線状に伸びる雨域や積乱雲のまとまりのことで、長さ50~300km、幅は20~50km程度です。積乱雲一つの雨量は数十ミリ程度ですが、積乱雲が風上側で連なって発生すると、同じような場所で強い雨が数時間降り続き、雨量が数百ミリにも達して災害をもたらします。線状降水帯は、台風や前線より規模が小さいうえに、発生条件や維持するメカニズムに未解明な部分も多いため正確な予測が難しいですが、予測精度向上のための研究が日々進められています。

気象庁は線状降水帯による大雨のおそれがある程度高いと予測したときは、半日ほど前から府県単位を基本に気象情報の中で警戒を呼びかけます。この情報が出された場合には、たとえ線状降水帯そのものが発生しなくても、大雨と
なる可能性が高いです。さらに、実際に線状降水帯が発生した際には「顕著な大雨に関する気象情報」を発表して警戒を促します。災害発生の危険度が急激に高まっているため、すぐに身の安全を確保してください。

こうした極端な現象に対しては、災害が迫ったときにどのように行動するのか、日頃から意識しておくことが大切です。
日本に梅雨がある理由
日本の梅雨は曇りや雨の日が2か月ほど続くため、5つ目の季節とも言われています。なぜ梅雨は毎年訪れるのでしょうか。
春から夏に季節が進むとき、上空を流れる偏西風は背の高いヒマラヤ山脈にぶつかり南北に分かれ、再びオホーツク海付近で合流します。この合流により強められる下降気流や冷たい海面により、冷たく湿った空気を持つオホーツク
海高気圧が形成されます。一方、日本の南には暖かく湿った空気をもつ太平洋高気圧が張り出しているため、性質の異なる二つの高気圧が日本付近でぶつかることで、梅雨前線が生まれるのです。

梅雨は大雨の時期で、特に梅雨末期には毎年のように線状降水帯などによる集中豪雨が起こっています。集中豪雨の原因の一つが、大気の川と呼ばれる、巨大な河川のような水蒸気の帯です。大気の川が梅雨前線に向かって流れ込ん
だことで、令和2年7月豪雨では球磨川が氾濫するなど甚大な被害が出ました。このとき大気の川が含んでいた水蒸気を水に換算すると毎秒約40万㎥もあり、アマゾン川の約2倍に匹敵することがわかったのです。

気象庁の梅雨入りの発表は、災害への注意喚起の意味があります。梅雨入りの発表があったら、気象情報により一層耳を傾けましょう。
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眠れなくなるほど面白い 図解 天気の話
著/荒木健太郎、太田絢子、佐々木恭子
日本文芸社 1,089円(税込)
荒木健太郎(あらき・けんたろう)
雲研究者・気象庁気象研究所主任研究官・博士(学術)。慶應義塾大学経済学部を経て気象庁気象大学校卒業。専門は雲科学・気象学。防災・減災のために、災害をもたらす雲のしくみの研究に取り組んでいる。映画『天気の子』気象監修。『情熱大陸』『マツコの知らない世界』など出演多数。主な著書に『すごすぎる天気の図鑑』シリーズ(KADOKAWA)、『読み終えた瞬間、空が美しく見える気象のはなし』(ダイヤモンド社)、『空となかよくなる天気の写真えほん』シリーズ(金の星社)などがある。
太田絢子(おおた・あやこ)
気象予報士・防災士・気象防災アドバイザー。これまでにNHK松山やCBCテレビにて気象解説を務め、防災気象情報や地球温暖化に関する講演・執筆活動も行う。著書に『天気予報が楽しくなる空のしくみ』(朝日新聞出版)、編集協力に『すごすぎる天気の図鑑』シリーズ(KADOKAWA)、気象監修に『RE:VISION ART PROJECT』(国連UNHCR協会)などがある。2023年10月からアメリカ・ロサンゼルスに在住。
佐々木恭子(ささき・きょうこ)
気象予報士・防災士。合同会社てんコロ.代表・TeamSABOTEN(株)取締役。早稲田大学第一文学部卒業。民間気象会社で予報業務を担当し、気象予報士受験生向けのスクールを主催。YouTubeチャンネル「てんコロ.のラジオっぽいTV!」で気象の知識や楽しさを発信。著書に『天気予報が楽しくなる空のしくみ』(朝日新聞出版)、編集協力に『すごすぎる天気の図鑑』シリーズ(KADOKAWA)、監修に『奇跡の瞬間!空の絶景100選』(宝島社)などがある。
※『眠れなくなるほど面白い 図解 天気の話』(著・荒木健太郎、太田絢子、佐々木恭子/日本文芸社)より、一部を抜粋してご紹介しています。










