「台風が温帯低気圧に変わった」――ニュースなどで耳にしますが、これはどういうことなのでしょうか。 

『眠れなくなるほど面白い 図解 天気の話』(著・荒木健太郎、太田絢子、佐々木恭子/日本文芸社)では、様々な天気についてのうんちくを教えてくれます。

今回は、『眠れなくなるほど面白い 図解 天気の話』の中から、「『台風が温帯低気圧に変わった』=『もう大丈夫』は間違い」と「なぜ毎年夏から秋に台風が日本にやってくる?」を取り上げます。

「台風が温帯低気圧に変わった」=「もう大丈夫」は間違い

「台風は温帯低気圧に変わりました」――このように聞くと、もう大丈夫、と思う人もいるかもしれませんが、決して油断できないのです。そもそも台風とは、亜熱帯や熱帯の温かい海で発生する熱帯低気圧のうち、最大風速が17.2
m/s以上になったものを指します。エネルギー源は、温かい海からの水蒸気と積乱雲内での水蒸気の凝結に伴う潜熱
のため、台風全体の空気は暖かいです。また、中心付近で風が非常に強いという特徴があります。

台風は日本付近まで北上してくると、次第に北からの寒気とぶつかるようになります。すると、台風としての性質が徐々に失われて前線を伴うようになり、温帯低気圧に変わるのです。温帯低気圧は暖気と寒気の温度差などをエネル
ギー源としているので、台風のときよりも発達して強風の範囲が広がることがあります。

実際に、2004年の台風18号は長崎に上陸したあと、弱まって暴風域が狭くなったものの、北海道の西で温帯低気圧に変わってから再度発達しました。札幌では歴代1位となる最大瞬間風速50.2m/sを観測し、中心から離れた北海道東部の釧路地方でも強風が吹いたのです。

たとえ台風が温帯低気圧に変わっても、過ぎ去るまでは情報収集に努め、安全を確保し続けてください。

なぜ毎年夏から秋に台風が日本にやってくる?

日本では、台風による災害も毎年のように起こっています。そもそも、なぜ台風は毎年日本へやってくるのでしょうか。これには、日本付近の上空の風の流れが関係しています。

台風は一年を通して発生しますが、春先に熱帯の海で発生した台風は、西にあるフィリピン方面へと進む傾向があり、日本にやってくることは多くはありません。しかし夏になると台風の発生する緯度が高くなり、日本の南東から張り出す太平洋高気圧により時計回りの流れができ、日本付近まで北上するものが多くなります。

さらに、秋には日本付近の偏西風が強まるため、太平洋高気圧の縁に沿って北上してきた台風は偏西風に乗って進路を東寄りへと変え、日本付近を通過するような進路をとるのです。

実際に、過去10年分のデータを見ても、7月から10月は接近または上陸する数が多いことがわかります。ちなみに気象庁の定義する「接近」とは、台風の中心が国内のいずれかの気象台や測候所から300km以内に入ること、「上陸」とは、台風の中心が北海道・本州・四国・九州の海岸線に達した場合を指します。

大きさや強さに関わらず、台風は接近前から大雨や高波の被害をもたらすことがあります。台風が発生したら進路や気象情報をこまめに確認する習慣をつけましょう。

*  *  *

 眠れなくなるほど面白い 図解 天気の話
著/荒木健太郎、太田絢子、佐々木恭子
日本文芸社 1,089円(税込)

荒木健太郎(あらき・けんたろう)
雲研究者・気象庁気象研究所主任研究官・博士(学術)。慶應義塾大学経済学部を経て気象庁気象大学校卒業。専門は雲科学・気象学。防災・減災のために、災害をもたらす雲のしくみの研究に取り組んでいる。映画『天気の子』気象監修。『情熱大陸』『マツコの知らない世界』など出演多数。主な著書に『すごすぎる天気の図鑑』シリーズ(KADOKAWA)、『読み終えた瞬間、空が美しく見える気象のはなし』(ダイヤモンド社)、『空となかよくなる天気の写真えほん』シリーズ(金の星社)などがある。

太田絢子(おおた・あやこ)
気象予報士・防災士・気象防災アドバイザー。これまでにNHK松山やCBCテレビにて気象解説を務め、防災気象情報や地球温暖化に関する講演・執筆活動も行う。著書に『天気予報が楽しくなる空のしくみ』(朝日新聞出版)、編集協力に『すごすぎる天気の図鑑』シリーズ(KADOKAWA)、気象監修に『RE:VISION ART PROJECT』(国連UNHCR協会)などがある。2023年10月からアメリカ・ロサンゼルスに在住。

佐々木恭子(ささき・きょうこ)
気象予報士・防災士。合同会社てんコロ.代表・TeamSABOTEN(株)取締役。早稲田大学第一文学部卒業。民間気象会社で予報業務を担当し、気象予報士受験生向けのスクールを主催。YouTubeチャンネル「てんコロ.のラジオっぽいTV!」で気象の知識や楽しさを発信。著書に『天気予報が楽しくなる空のしくみ』(朝日新聞出版)、編集協力に『すごすぎる天気の図鑑』シリーズ(KADOKAWA)、監修に『奇跡の瞬間!空の絶景100選』(宝島社)などがある。

※『眠れなくなるほど面白い 図解 天気の話』(著・荒木健太郎、太田絢子、佐々木恭子/日本文芸社)より、一部を抜粋してご紹介しています。

 

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