朝焼けや夕焼けはなぜあんなにも美しいのでしょうか。その仕組みを知れば、天気についてより楽しめるようになります。

『眠れなくなるほど面白い 図解 天気の話』(著・荒木健太郎、太田絢子、佐々木恭子/日本文芸社)では、様々な天気についてのうんちくを教えてくれます。

今回は、『眠れなくなるほど面白い 図解 天気の話』の中から、「空が真っ赤に焼けるのはなぜ?」と「幻想的な『マジックアワー』の空を見上げよう」を取り上げます。

空が焼けるのは、赤以外の光が空で散らばりきるから

盛大に焼けた空の写真を思わず撮ってしまった経験はあるでしょうか。真っ赤な空には、人の心を動かす魅力があるように思います。空はどうして焼けるのでしょうか?

太陽の光には、私たち人間が目で見て認識できる可視光(かしこう)が含まれています。光は波の性質を持っており、山と谷を持つ波一つ分の長さ(波長)の短いほうから紫、青、緑、黄、橙、赤の6色(紫と青の間に藍で7色)があります。

可視光が地球の大気の層に届くと、大気分子や大気中のちりに当たって散らばります(散乱)。このとき、波長の短い紫は波長の長い赤に比べて強く散乱する性質を持っています。昼には、はるか高い空でまず紫が散乱するため地上からは見えず、その次に散乱しやすい青の光が空に広がるので、空は青く見えます。朝や夕方には、太陽光が大気層を通る距離が長くなるため、散乱が強まります。すると、波長の短い青い光は届かなくなり、赤い光だけが空に広が
って空が焼けるのです。

特に高い空に雲が広がっており、太陽光を妨げる低い空の雲があまりないようなときには、日の出直前や日の入り直後に盛大に雲の底が焼けることがあります。日の出や日の入りの時刻は検索するとすぐわかるので、焼けそうな時間
を見計らって空を見上げるのがおすすめです。

幻想的な「マジックアワー」の空を見上げよう

マジックアワーと呼ばれる、晴れていれば美しい空に簡単に出会えてしまう時間帯があります。それが日の出前と日の入り後の空が薄明るい時間で、薄明(はくめい)とも呼ばれています。

夕方を例にこの美しい空を紹介します。太陽が地平線に沈む少し前から沈んだ直後までの時間帯は、空が黄金色に染まるゴールデンアワーです。日の入り後からはマジックアワーで空の色が刻々と変化していきます。日の入りから約30分間は屋外で活動可能な明るさの市民薄明(しみんはくめい)と呼ばれ、空の色のグラデーションが美しいです。
日の入りから20~30分後にはブルーモーメントと呼ばれる群青色に染まる空にも出会えます。

ブルーモーメントの空。日の入りの20〜30分後、日の出の20〜30分前には、空が優しい青に染まる。

日の入り後30分~1時間は海面と空の境界を見分けられる明るさの航海薄明(こうかいはくめい)といい、西の低い空の赤みが増してきます。さらに日の入り後の1時間~1時間半は空が星明りより明るい天文薄明(てんもんはくめい)と呼ばれ、地平線の近くの深い赤の空と夜空の共演に出会えます。

薄明の空の色は、刻々と変わっていく。星が見え始める頃、低い空は深い赤に染まっている。

マジックアワーの空は、晴れていれば1日2回、日の出前と日の入り後に観察できます。マジックアワーの空の色の変化を眺めていると、心が本当に洗われます。筆者(荒木)が疲れ果てたときは、なんとしてでも時間を作ってマジ
ックアワーの空を眺めるようにしています。皆さんも一緒に心を洗いましょう。

マジックアワーの空。晴れている日の日の入り後、西の空には美しいグラデーションの空が広がる。

*  *  *

 眠れなくなるほど面白い 図解 天気の話
著/荒木健太郎、太田絢子、佐々木恭子
日本文芸社 1,089円(税込)

荒木健太郎(あらき・けんたろう)
雲研究者・気象庁気象研究所主任研究官・博士(学術)。慶應義塾大学経済学部を経て気象庁気象大学校卒業。専門は雲科学・気象学。防災・減災のために、災害をもたらす雲のしくみの研究に取り組んでいる。映画『天気の子』気象監修。『情熱大陸』『マツコの知らない世界』など出演多数。主な著書に『すごすぎる天気の図鑑』シリーズ(KADOKAWA)、『読み終えた瞬間、空が美しく見える気象のはなし』(ダイヤモンド社)、『空となかよくなる天気の写真えほん』シリーズ(金の星社)などがある。

太田絢子(おおた・あやこ)
気象予報士・防災士・気象防災アドバイザー。これまでにNHK松山やCBCテレビにて気象解説を務め、防災気象情報や地球温暖化に関する講演・執筆活動も行う。著書に『天気予報が楽しくなる空のしくみ』(朝日新聞出版)、編集協力に『すごすぎる天気の図鑑』シリーズ(KADOKAWA)、気象監修に『RE:VISION ART PROJECT』(国連UNHCR協会)などがある。2023年10月からアメリカ・ロサンゼルスに在住。

佐々木恭子(ささき・きょうこ)
気象予報士・防災士。合同会社てんコロ.代表・TeamSABOTEN(株)取締役。早稲田大学第一文学部卒業。民間気象会社で予報業務を担当し、気象予報士受験生向けのスクールを主催。YouTubeチャンネル「てんコロ.のラジオっぽいTV!」で気象の知識や楽しさを発信。著書に『天気予報が楽しくなる空のしくみ』(朝日新聞出版)、編集協力に『すごすぎる天気の図鑑』シリーズ(KADOKAWA)、監修に『奇跡の瞬間!空の絶景100選』(宝島社)などがある。

※『眠れなくなるほど面白い 図解 天気の話』(著・荒木健太郎、太田絢子、佐々木恭子/日本文芸社)より、一部を抜粋してご紹介しています。

 

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