保険には、定期保険や終身保険といった生命保険の他に、個人年金保険という種類があります。個人年金保険については、“長生きリスク”をカバーする「個人年金保険」とは?|公的年金との違いや種類を解説【お金の学校】 」をはじめ、10回にわたり解説いたしましたので詳細についてはバックナンバーをご確認いただければと思います。
今回は個人年金保険の保険料を一括払いして加入した際のメリットとデメリットや加入する目的について解説いたします。100歳社会を笑顔で過ごすためのライフプラン、ライフブック(R)(https://www.smilelife-project.com/)を提唱する、ファイナンシャルプランナー・藤原未来がわかりやすく解説します。
目次
一時払い個人年金保険とは
一時払い個人年金保険を一括で支払うデメリットはある?
一時払い個人年金保険に加入する目的とは
まとめ
一時払い個人年金保険とは
個人年金保険の保険料を、一括払いして加入した場合について見ていく前に、簡単に個人年金保険の概要についておさらいしていきましょう。
個人年金保険とは?
個人年金保険とは、名前にもある通り支払った保険料を原資として、将来「年金」を受け取ることができる保険です。一般的には、老後の生活資金として公的年金だけでは賄いきれない部分を、自助努力で補うための道具の一つとして活用されています。
個人年金保険は、主に「確定年金」「有期年金」「終身年金」の3つのタイプがあり、確定年金は被保険者の生死を問わず年金が支払われ、有期年金と終身年金も「保証期間」をつけることで、被保険者が死亡した場合に遺族が残り期間の年金を受け取ることができるため、保険の役割も担うものとなります。
一時払い個人年金保険とは?
一時払い個人年金保険とは、保険料を加入時に一括で支払うケースのことを指します。保険料の払い方は、個人年金保険に限らず、一時払いの他に月払い・年払い・全期前納といった方法があり、選択することが可能です。個人年金保険は契約者から預かった保険料を、将来の年金原資としています。
しかし、保険料は加入時の予定利率によって決められているため、一般的に個人年金保険を選ぶ際には、「返戻率(支払保険料総額に対する年金受取総額の割合)」が重要となります。返戻率は、加入時の年齢や年金の受取期間などでも異なります。しかし、保険料の払い方以外が同じ条件なのであれば、保険料払込期間中に毎月保険料を支払うよりも、加入時に一時払いで保険料を一括で支払う方が、支払保険料総額が小さいため「返戻率」が高くなります。
そのため、資金に余裕がある人は、より効率的に将来の年金を準備することができるというのが、一時払いをする最大のメリットとなります。
一時払い個人年金保険を一括で支払うデメリットはある?
一時払い個人年金保険には、主に以下のデメリットが考えられます。
まとまった資金が必要
通常、月払いや年払いなど保険料を払込期間中継続して支払いますが、全期分の保険料を一括で払い込むため保険料総額は大きな金額になり、加入時にはまとまった資金が必要であるということです。
生命保険料控除
個人年金保険の保険料を払い込んだとき、年間の保険料額に応じて個人年金保険料控除として、生命保険料控除を受けることができますが、一時払いの生命保険料控除は一回のみとなります。一時払いの他にも、保険料を一括で支払う全期前納という払い方があります。こちらは、払い込みは一括であっても、保険会社の内部的な処理として保険料を1年ごとに払い込んでいるようにするため、毎年の生命保険料控除を受けることができます。
生命保険料控除を受けられる額には上限があり、一時払いの場合は上限をはるかに超えることになってしまいますので、全期前納で毎年控除を受けたほうが、控除額の総額は多くなります。一方で、割引率は一時払いのほうが大きいので、どちらがいいのかはシミュレーションして判断することが必要です。
5年以内の解約
一時払いで契約した保険を、早期に解約するのは注意が必要です。早期解約した場合、解約返戻金が払い込んだ保険料総額よりも少ないというケースがほとんどです。さらに、5年以内の解約は税金の面でも不利になることがあります。
通常、個人年金保険を解約して受け取った解約返戻金は、一時所得とみなされて課税されますが、一時払いで契約し、5年以内に解約した場合は「金融類似商品」として、課税の際に通常とは違う方法で計算をする決まりがあります。
この場合は、通常より課税額が多くなる場合がほとんどです。そのため、一時払いで契約した個人年金保険を5年以内に解約することは、税金の面で考えても避けたほうが良いといえます。
一時払い個人年金保険に加入する目的とは
前述のとおり、一時払い個人年金保険はある程度まとまった資金を保有していて老後の生活など、将来のための資金準備をすることを目的とした道具の一つとして活用されています。このように、保険というよりは貯蓄を目的としていることが一般的です。
近年では、資産形成をする上で資産運用をすることの重要性が高まっているため、老後の資金作りのためにNISAを活用したり、iDeCoを活用したりとさまざまな道具が選択肢としてありますが、一般的な個人年金保険は満期まで継続すれば元本割れのリスクがないのが大きな特徴です。
予め返戻率が決まることで、途中で解約することなく年金受取開始まで契約し続ければ、元本割れは避けることができます。投資信託や株式投資などは、リスクがあり元本割れの可能性があるため、そのようなリスクを取りたくない人は個人年金保険の加入を検討すると良いでしょう。
しかしながら、加入時に年金額が決まるため、インフレが進むという局面では年金受取時に、相対的に貨幣価値が下がることになるため、インフレリスクには対応できません。また、現在の低金利下では高い返戻率は望めません。将来の資金準備を考えるうえで、何を優先するかの判断が重要となってきています。
まとめ
個人年金保険は、普通預金や定期預金よりも効率が良く手堅く貯蓄をすることができるというイメージが強い保険商品です。将来のための資金作りには様々な選択肢がある中で、どの道具を使うのが有効であるか? 判断に迷う場合にはファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談すると良いでしょう。
さまざまな金融商品が出回っている世の中だけに、あなたの味方になって守ってくれる相談相手を持つことが必要な時代になっています。
●取材協力/藤原未来(ふじわらみき)
株式会社SMILELIFE project 代表取締役、1級ファイナンシャルプランニング技能士。2017年9月株式会社SMILELIFE projectを設立。100歳社会の到来を前提とした個人向けトータルライフプランニングサービス「LIFEBOOK®サービス」をスタート。米国モデルをベースとした最先端のFPノウハウとアドバイザートレーニングプログラムを用い、金融・保険商品を販売しないコンサルティングフィーに特化した独立フランチャイズアドバイザー制度を確立することにより、「日本人の新しい働き方、新しい生き方」をプロデュースすることを事業の目的とする。
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