文/鈴木拓也

最近、ネットニュースで「老害」という言葉をよく見るようになった。

もとは、政治家・経営者の長期支配による弊害を指す言葉であったが、意味は拡大。今では、「年長者が、組織の中で若者の足を引っぱるような言動をする」こと全般が「老害」とされている。

特に、職場で比較的高い地位にある中高年は要注意。自覚のないまま、部下から煙たがられる「かくれ老害」になっている可能性があるのだ。

そんな怖いことを言うのは、心理カウンセラーの五百田達成(いおた たつなり)さん。著書『話し方で老害になる人尊敬される人』(ディスカヴァー・トゥエンティワン https://d21.co.jp/book/detail/978-4-7993-3049-4)のなかで、これを言っては若手に老害認定されかねないフレーズを多数収録している。

気を使っての遠回しの注意は、むしろ逆効果

例えば、業務中にミスをした部下への注意。

厳しく叱ればハラスメントになりかねないので、遠回しにさりげなく言って、あとでやさしい言葉でフォローすれば完璧だ。

……と思いきや、これこそ不正解だと五百田さんは説く。本書でその理由を、次のように解説する。

「何か叱られてるんだろうけど、何を言いたいのかわからない……」注意される側にとって、これほど苦痛なことはありません。まわりくどく、まだるっこしい話をされると、たった5分の時間であっても、うんざりします。自分が嫌われたくないからと、時間をかければかけるほど「ネチネチした人」とかえって悪印象になってしまうでしょう。(本書57pより)

正解は、それこそストレートに「論理立ててズバッと伝える」。そして直後に、とってつけたようなフォローはしない。

五百田さんは、こうした伝え方の方がむしろ、「気持ちのいい人」と好感を持たれるし、言われた側も、同じミスを繰り返さないよう気をつけるようになるとする。

自身の年齢をネタにしてはいけない

「自分はもうこの年なので」といった枕詞で始める会話も要注意。

意外かもしれないが、自身の年齢をネタにして、年下の気を引こうとするのは、悪手なのだそうだ。

五百田さんは、こう書いている。

こういった発言は若者からすると実にめんどう。「えー、そんなことないですよ」「まだまだ若いじゃないですか」と、いちいちフォローしなくてはいけないので、かえって気をつかわせてしまうことになります。(本書159~160pより)

ということで、自分からは年齢の話は出さないのが正解。若手は、相手が年長者だからどうこうとは、案外気にしていないものだ。

それとは逆に、「干支は……?」などと、相手の年齢に探りを入れるのも避けるべしとも。それを知りたがるのは、古い上下感覚にしばられているからで、年齢を知って「自分が上だ!」と、内心喜ぶのはフェアではない。

ただし、「この部署、長いんですか?」というふうに「年次」を確認するのは大丈夫。相手がそこでどれぐらい経験を積んでいるかを知るのは、仕事をスムーズに進める上で大事なこともあるからだ。

アドバイスは向こうから求められてするもの

若手に対する「アドバイス」は、ときには地雷ともなりうる。

長い人生で経験を積んでいるぶん、良かれと思って「〇〇した方がいい」と、いくぶん説教臭く話してしまうことはあるだろう。

しかし、これも不正解だという。

世代も違えば、育ってきた環境・境遇も違う相手からすれば、そうしたアドバイスは、たいがいは役に立たない。むしろ、相手に反発心を生みかねないと、五百田さんは説く。

うまいやり方は、さりげなく選択肢を示すというもの。「あの本とか参考になるんじゃないかなあ」という感じで、押しつけがましさを感じさせない提示にとどめる。コツとしては、「判断するのは(もちろん責任をとるのも)あなたですよと突き放すぐらい」のドライな感覚で。

また、アドバイスにからんで留意しておくべき点として、五百田さんは、「尋ねられていないことは答えない」というのも挙げる。

SNSの世界では、単に報告的に書いたことに対して、アドバイスが投げかけられるのは稀でない。しかしこれは、余計なおせっかいと受け取られることが多く、ネットスラングでは、こうしたアドバイスは「クソリプ」と呼ばれる。

SNSに限らずリアルの場でも、(聞かれたのでない限り)アドバイスはしないのが「正解」。年下の相手だといろいろ言いたくなってしまう年長者は、気をつけておきたいマナーだ。

* * *

昭和・平成の時代に若手であった我々は、ときとして当時の経験に照らして、若手に接してしまいやすい。しかし、時代の移り変わりに応じて常識やルールも変わっていく。知らぬ間に「老害」とならないためにも、本書を読んで適切な言動を肝に銘じておこう。

【今日の人間関係を良くする1冊】
『話し方で老害になる人尊敬される人』

五百田達成著
定価1760円
ディスカヴァー・トゥエンティワン

文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。

 

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