自分の資産を子ども名義の預金口座に移したり、定期預金を名義変更したりすることがありますが、子ども名義の預金口座や定期預金は贈与となるのか? 相続対策の一環としての生前贈与とはどのようなことなのか? みなさんはお分かりでしょうか。今回は、生前贈与について定期預金を贈与する場合の注意点などについてみていきましょう
100歳社会を笑顔で過ごすためのライフプラン、ライフブック(R)(https://www.smilelife-project.com/)を提唱する、ファイナンシャルプランナー・藤原未来がわかりやすく解説します。
目次
生前贈与とは
定期預金の名義変更は贈与税の対象?
定期預金を生前贈与するときの注意点
まとめ
生前贈与とは
はじめに、生前贈与について簡単に説明いたします。
<生前贈与とは?>
生前贈与とは、資産を持っている人が亡くなる前に、自分の資産を他人に譲り渡すことをいいます。民法では「当事者の一方(贈与者)が、自己の財産を無償で相手方(受贈者)に与える意思を表示し、相手方が受諾することで効力が生じる契約」(民法549条)と定められています。贈与する人が生前に贈与を受ける人と契約を結べば、民法上は生前贈与ということになります。
ただし、贈与契約を交わしていなくても、まとまった資金や資産を渡すことは贈与とみなされ、贈与税の対象となることがあります。
<贈与税の課税方法>
贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあります。贈与する人は、贈与を受ける人ごとにそれぞれの課税方法を選択することができます。
暦年課税
「暦年課税」は、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額をもとに、贈与税額を計算する方法です。暦年課税を選択した場合は、いつでも次に紹介する相続時精算課税に移行することができます。
相続時精算課税
「相続時精算課税」は、60歳以上の父母又は祖父母から18歳以上(令和4年4月1日より前の贈与は20歳以上)の子、又は孫が財産の贈与を受けた場合に選択できる課税方法。贈与した資産のうち、年間110万円を超える額については、相続時に相続税の計算の対象とされます。その際には、相続税額から過去に納めた相続時精算課税に係る、贈与税相当額を控除することが出来ます。
なお、一度相続時精算課税を選択すると、その後同じ贈与者からの贈与について暦年課税に変更することはできません。
<控除額>
暦年課税を選択する場合
一人の人が、毎年1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた、財産の価額の合計額が110万円までの場合、贈与税は非課税となります。
相続時精算課税を選択する場合
贈与を受けた財産の価額の合計額が、年間110万円を超える場合、2,500万円に達するまでの贈与額について贈与税は非課税となります。また、こちらを選択した場合も毎年の110万円を超える贈与については、相続時に相続税の対象となるので注意が必要です。
この他にも、「夫婦間贈与の特例」や「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合」などの控除もありますので、まとまった資産を贈与する場合、該当するものがないか確認をすることが重要です。
定期預金の名義変更は贈与税の対象?
親から子どもへの定期預金の名義変更は、贈与税・相続税の対象となるのでしょうか?
定期預金の名義が子どもであっても、実質的な所有者が親である場合には、親の財産に属することになるので、相続税の対象になります。このため、定期預金の名義を子どもに変更しただけでは、贈与とはみなされません。
贈与と認められるためには、親と子が贈与契約を結んだ後、親から子への定期預金の名義変更がされ、その名義変更後、子が親から定期預金の通帳や証書、届出印を受け取って管理し、定期預金を運用している状態にする必要があります。
この他に、「名義預金」についても贈与として認められるケースと認められないケースがあります。例えば、「孫のために秘密でお金を貯めていた」場合です。この場合、預金されたお金は被相続人(祖父母)の財産として、相続財産に含まれますので贈与としては認められませんが、孫と贈与契約を交わし、孫に口座を管理させることで贈与と認められることになります。
贈与契約の有効性を示せるよう、贈与契約は書面で記録しておくことをおすすめいたします。
定期預金を生前贈与するときの注意点
定期預金を生前贈与するとき、どのような点に注意すれば良いのでしょうか? ここでは3つの点についてみていきましょう。
<贈与税の課税>
前述の暦年課税の場合、定期預金を生前贈与する際、その金額が110万円を超える場合、贈与税が発生します。複数年にわたって分割して贈与することで、贈与税の負担を軽減することができますが、この方法は、毎年同じ金額を贈与していると、税務署によって「まとまった資産を一括贈与したと同等」とみなされ、高い税率となるケースが考えられますので注意が必要です。
<贈与契約書の作成と口座管理>
名義変更した定期預金が贈与であることを証明するために、贈与契約書を作成することをおすすめいたします。これは、後々のトラブルや税務署からの確認に対して重要な証拠となります。契約書には、贈与する人と贈与される人の氏名、贈与の内容、日付、贈与する金額を明記し、双方が署名捺印することが必要です。また、口座の管理は贈与された人が行なうようにしましょう。
贈与契約後、定期預金を受贈者名義の口座に移すことが重要です。贈与者が引き続き管理していると、贈与が実行されていないとみなされる可能性があります。
<相続税との関係>
暦年課税を選択している場合、贈与後7年以内に贈与者が死亡した場合、その贈与分は相続財産に含まれ、相続税の対象となります。相続税の計算時に考慮される点を忘れないようにしましょう。
これらの点を考慮し、適切な手続きを踏んで定期預金の生前贈与を行なうことで、将来的なトラブルや余計な税負担を避けることができます。また、必要に応じて税理士などの専門家に相談することも検討すると良いでしょう。
まとめ
今回は、生前贈与と定期預金の贈与についてその注意点などをみてきましたが、いかがだったでしょうか? 定期預金の名義を変更することは難しくありませんが、相続か贈与かで制度や課税される金額が変わってきますので、どのような方法が一番良いのかは一度専門家に相談することをおすすめいたします。
資産運用や投資のアドバイスは、今や銀行などの金融機関の窓口でもさかんに行なわれています。同時に、インターネット上でもYouTubeやSNSを通じて色々な人がそれぞれの立場から投資術などを発信しています。しかし、それらのアドバイスは本当にあなた自身に適したものなのでしょうか?
さまざまな金融商品が出回っている世の中だけに、あなたの味方になって守ってくれる相談相手を持つことが必要な時代になっています。
●取材協力/藤原未来(ふじわらみき)
株式会社SMILELIFE project 代表取締役、1級ファイナンシャルプランニング技能士。2017年9月株式会社SMILELIFE projectを設立。100歳社会の到来を前提とした個人向けトータルライフプランニングサービス「LIFEBOOK®サービス」をスタート。米国モデルをベースとした最先端のFPノウハウとアドバイザートレーニングプログラムを用い、金融・保険商品を販売しないコンサルティングフィーに特化した独立フランチャイズアドバイザー制度を確立することにより、「日本人の新しい働き方、新しい生き方」をプロデュースすることを事業の目的とする。
問い合わせ先:03-6403-5390(株式会社SMILELIFE project)
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●編集/京都メディアライン(HP:https://kyotomedialine.com FB)