人の顔には、それぞれの人生が刻まれると申します。若さや美しさという面では、どう足掻いても年齢とともに輝きは失われ衰えるものです。しかし、年齢を重ねることによって得た経験や体験、修得した技能、そして鍛えられた精神が、その人の顔に滲み出てくるようになります。それは、まさに渋くて味わいのある“燻し銀の表情”ではないでしょうか?
それは、若い人にはない魅力となります。そうした方々が口にする言葉も、また味わいのあるもので心に深く浸透するものであります。そうした先人が残した一つの言葉をご紹介します。
第17回の座右の銘にしたい言葉は、「好(す)きこそ物(もの)の上手(じょうず)なれ」 です。
目次
「好きこそ物の上手なれ」の意味
「好きこそ物の上手なれ」の由来
「好きこそ物の上手なれ」を座右の銘としてスピーチするなら
最後に
「好きこそ物の上手なれ」の意味
「好きこそ物の上手なれ」について、『⼩学館デジタル⼤辞泉』では、「好きな事にはおのずと熱中できるから、上達が早いものだ」とあります。何事も好きなことであれば熱心に取り組むため、上達が早いという意味の諺です。この言葉は、情熱や愛情を持って何かをすることの重要性を強調しています。好きなことには自然と時間を費やし、練習を重ねることで、技術や知識が向上し、結果的にその分野での達人になる可能性が高まるという考え方です。
「好きこそ物の上手なれ」の由来
「好きこそ物の上手なれ」の正確な出典は定かではありませんが、古くから伝えられてきた知恵の一つです。今から2,500年以上前の中国の思想家、孔子の言葉として『論語』には似たような意味の、以下のような記述があります。
子曰、知之者不如好之者、好之者不如楽之者
【書き下し文】
子曰く、之(これ)を知る者は之を好む者に如かず。之を好む者は之を楽しむ者に如かず
【現代語訳】
先師がおっしゃるには、それを知る者はそれを好きな者にかなわない。さらには、それを好きな者はそれを心から楽しんでいる者にはかなわない。これは「好き」よりも「楽しむ」というように、「好きこそ物の上手なれ」よりさらに上を行く言葉といえます。何事も楽しむ心が、成長の鍵であることを示唆しています。
「好きこそ物の上手なれ」を座右の銘としてスピーチするなら
「好きこそ物の上手なれ」という言葉は、私たちが情熱を持って取り組むことの重要性を教えてくれます。この言葉を生活の中でどのように活かしているか、さまざまな分野でこの座右の銘を実生活に適用し、大きな成果を上げた人々の例を上げることで聴衆の心をひきつけることができるでしょう。以下に「好きこそ物の上手なれ」を取り入れたスピーチの例を三つあげます。
1:キャリアの成功と情熱についてのスピーチ例
私が初めて「好きこそ物の上手なれ」という言葉に出会ったのは、まだ駆け出しのころでした。当時は、毎日が挑戦で、失敗も多くありました。しかし、自分が本当に好きな分野であることを再確認するたびに、この仕事に情熱を持ち続けることができました。
例えば、新しいプロジェクトに取り組む際、最初はうまくいかないことも多々ありましたが、好きという情熱で何度も試行錯誤を繰り返し、ついには成功を収めることができました。皆さんも、好きなことに情熱を持ち、それに専念することで、必ずや上達し、成功を収めることができるでしょう。
2:趣味が人生を豊かにすることについてのスピーチ例
私は60歳を過ぎてから、陶芸という新しい趣味に挑戦しました。最初は粘土の扱い方もわからず、形を作るのに四苦八苦しました。しかし、陶芸が本当に好きだという気持ちがあったので、何度も挑戦を続けました。その結果、今では自分の作品を展示会に出品できるほどの腕前になりました。
この経験から、「好きこそ物の上手なれ」という言葉のとおり、好きなことに取り組むことで、その道を極めることができると実感しました。皆さんも新しい趣味を見つけ、それに情熱を注ぐことで、人生をより豊かにしてみてはいかがでしょうか。
3:学生に伝えたい情熱の大切さについてのスピーチ例
私は長年、教師として学生たちを指導してきました。その中で感じたのは、学生たちが自分の好きな科目や興味を持つ分野に対して、非常に高い学習意欲を示すということです。例えば、ある学生は数学が大好きで、授業の後も自主的に問題を解き続け、数々の数学コンテストで優秀な成績を収めました。このように、好きなことに対する情熱が、学びを深める原動力となります。
皆さんも、「好きこそ物の上手なれ」という言葉を心に留め、自分の情熱を見つけ、それに全力で取り組んでください。そうすれば、必ずや素晴らしい成果を得ることができるでしょう。
最後に
「好きこそ物の上手なれ」を座右の銘とすることで、困難に直面した時でも、好きなことであれば乗り越えられるという自信や動機づけを持つことができます。また、人生の多くの決断や選択をする際に、自分自身の内なる声に耳を傾け、真に楽しめる道を選ぶ指針ともなります。毎日をより豊かに過ごすためのヒントとなれば幸いです。
●執筆/武田さゆり
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com