決して、人生「順風満帆」とは行かぬものです。若い頃と違って、壮年期を過ぎてからの不幸な出来事や災難は、精神的にも大きなダメージとなります。そんな時でも、顔を上げ、前に進まなければならないのが人生ではないでしょうか? 

何気ない友人や知人が掛けてくれた言葉が、深く傷を負った心を癒し、勇気づけてくれる場合もございます。また、先人が残した言葉を紐解けば、幾つもの教訓や悟りが残されており光明となることもあります。そんな言葉の一つとなることを願い、第15回の座右の銘にしたい言葉は「人間万事塞翁が馬」 です。

目次
「人間万事塞翁が馬」の意味
「人間万事塞翁が馬」の由来
「人間万事塞翁が馬」を座右の銘としてスピーチするなら
最後に

「人間万事塞翁が馬」の意味

「人間万事塞翁が馬」は、「にんげん(じんかん)ばんじさいおうがうま」と読みます。『⼩学館デジタル⼤辞泉』では、「人生の禍福(かふく)は転々として予測できないことのたとえ」とあります。直訳すると「人間のすべての出来事は、塞(とりで)の近くに住む翁に馬がいたようなもの」となります。

この言葉は、人生で起こる出来事が最初は幸か不幸か分からないことを示し、時間が経つにつれて、初めの印象が大きく変わる可能性があることを教えています。つまり、一見すると不運や不幸に見える出来事も、長い目で見れば幸運に変わることがあるという哲学的な見方を示しています。

「人間万事塞翁が馬」の由来

中国、前漢時代の哲学書である『淮南子(えなんじ)人間訓(じんかんくん)』に載っている話が、由来とされています。

ある塞の近くに老人がいて、その家の馬が逃げてしまいました。村人たちは、これを不幸だと哀れみましたが、老人は「これは幸運が訪れるしるしだ」と答えました。数か月後、その馬が足の速い立派な馬を連れて帰ってきました。村人たちはこれを幸運だと賞賛しましたが、老人は「これは不幸が訪れるしるしだ」と言います。

その後、老人の息子が馬に乗っている際に落馬し、足を怪我してしまいます。村人たちがそれを見舞うと、今度は「これは幸運が訪れるしるしだ」と言いました。その後、起きた戦争で健康な若者が徴兵される中、怪我をした息子は免れ、親子ともども無事でした。これにより、初めて村人たちは老人の言葉の深い意味を理解し、人生の幸不幸は予測しがたいということのたとえとして使われるようになりました。

「人間万事塞翁が馬」を座右の銘としてスピーチするなら

「人間万事塞翁が馬」を座右の銘としてスピーチするなら、この故事を用いて人生の不確実性に対する柔軟な対応の重要性を強調することができます。人生は予測不可能な展開を見せるもので、私たちが経験する出来事が最終的にどのような結果をもたらすかは、その時点では決してわかりません。

この座右の銘から、変化を受け入れ、一見すると不幸な状況の中に潜む幸運を見出すための、柔軟な思考を得ることができるでしょう。以下に、「人間万事塞翁が馬」を取り入れたスピーチの例を三つあげます。

1:退職後の新たな生活の始まりについてのスピーチ例

皆さん、退職という大きな節目を迎えた時、多くの方が不安や寂しさを感じられたことでしょう。しかし、「人間万事塞翁が馬」という言葉が教えてくれるように、退職は新しい人生の始まりを意味します。友人との新たな出会い、趣味やボランティア活動を通じての新しい発見。初めは失ったものに目がいきがちですが、やがて新たに得るものがそれを上回ることがあります。まさに、「幸か不幸か、どう転ぶかわからない」という言葉がぴったりですね。

2:家族構成の変化についてのスピーチ例

家族構成の変化、例えば子供の独立や配偶者との死別は、シニアにとって大きな人生の転機です。そんなとき、「人間万事塞翁が馬」の教訓を活用すると、これらの変化が新たな自立や自己発見の機会を提供することがあります。孤独を感じるかもしれませんが、それがコミュニティ活動への参加や新しい友人との出会い、さらに以前は考えもしなかった新しい冒険へとつながる可能性があるかもしれません。

3:健康上の課題についてのスピーチ例

年齢と共に、健康に関するいくつかの問題が生じることもあります。しかし、「人間万事塞翁が馬」の精神でそれらを乗り越えることが、精神的な成長や家族との絆を深め、健康的なライフスタイルへの転換を図るきっかけとなります。運動を始めたり、バランスの取れた食事を心がけたりすることで、体調改善だけでなく、新たな友人を作る機会にもなり得るのです。

最後に

「人間万事塞翁が馬」という言葉は、私たちが日々直面する不確かな出来事に対して、ひとつひとつを前向きに捉え、長い目で見ることの大切さを教えてくれます。これを座右の銘とすることで、私たちはすべての出来事が最終的には何らかの意味を持つと理解し、一時的な試練にも動じることなく、人生をより豊かに生きるための柔軟性を身につけることができます。老後も含めた人生全般にわたって、この言葉が皆さんにとっての心の支えとなることを願っています。

●執筆/武田さゆり

武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。

●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com

 

関連記事

ランキング

サライ最新号
2024年
9月号

サライ最新号

人気のキーワード

新着記事

ピックアップ

サライプレミアム倶楽部

最新記事のお知らせ、イベント、読者企画、豪華プレゼントなどへの応募情報をお届けします。

公式SNS

サライ公式SNSで最新情報を配信中!

  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • LINE

「特製サライのおせち三段重」予約開始!

小学館百貨店Online Store

通販別冊
通販別冊

心に響き長く愛せるモノだけを厳選した通販メディア

花人日和(かじんびより)

和田秀樹 最新刊

75歳からの生き方ノート

おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店
おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店