昭和世代の人間は、「会社を休む」ということに後ろめたさを感じる人も多いのではないかと思います。会社を休むことで業務に支障が出ることを心配する気持ちは、わからないわけではありません。しかし、有給休暇の取得は労働者の権利ですし、今や適度に休暇を取ってリフレッシュすることが推奨されている世の中です。

それでもなお、休むことをマイナスとしか捉えていない職場もあります。そのような職場では業務に支障がなかったとしても、休暇を申請することをためらう人もいるのではないでしょうか。今回は「会社を休む」ということを取り上げ、人事・労務コンサルタントとして「働く人を支援する社労士」の小田啓子が解説していきます。

目次
体調不良で休むと怒られる… パワハラの実例
部下に休む理由を聞くのはパワハラ?
部下に仕事を休ませない上司にならないためには?
まとめ

体調不良で休むと怒られる… パワハラの実例

有給休暇の取得促進は、政府も課題としていることの1つです。なかなか取得が進まない現状を打開するため、2019年より年5日は使用者が指定して取得させることが義務付けられました。しかしながら、いまだに旧来の価値観に固執し、たとえ体調不良であっても休みを取ることを良く思わない上司がいるのは事実です。

今回は休みを取ると怒られる事例を紹介し、パワハラに当たるかどうか考えてみます。

事例

営業部のA課長は、大学の体育会出身で体力に自信があるタイプです。

A課長の自慢は会社を休まないこと。ことあるごとに、「若いころは1か月休みなしに働いた」「徹夜をしても翌日遅くまで仕事をした」という類の話をするので、部下のBはうんざりしてしまいます。

Bは「この令和の時代に時代錯誤な」と思うものの、元気でバリバリ働くA課長に対しては何も言えません。困るのはBが休みを取得すると、A課長が必ず嫌味を言ってくることです。

Bが体調不良で休んだ翌日には、「なんだ、二日酔いか? 安易に休みを取られるとみんなの士気が下がるんだよ」と言われました。

Bが風邪気味だと伝えると、体調管理がなってないとまた説教です。確かに体調管理は大事なことですが、Bは頻繁に休むわけでもなく有給休暇も余っています。休みを取得するたびに叱責を受けるのではたまりません。「こんなパワハラ上司の下では風邪さえもひけない……」と悩んでしまう毎日です。

解説

この事例の上司は「休まないことを美徳と考えるタイプの上司」です。

しかも自分が健康であるために、部下の体調不良に対する配慮が足りません。そもそも有給休暇は、要件を満たせば「当然に発生する権利」として労働基準法で定められています。厚生労働省も、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けて有休の取得を推進しているのです。

このような働き方改革の流れに逆行して、上司が休みづらい雰囲気を作るのは、パワハラとされる可能性が大きいと言えます。また、部下の体調管理などについて必要以上に追及するのは、プライバシーの侵害に当たり、これもパワハラに認定される場合もあることを意識しておくことも大切です。

部下に休む理由を聞くのはパワハラ?

次は、部下に休む理由を聞くとパワハラに当たるのかという問題です。結論としては、理由を聞くだけですべてがパワハラになることはありません。頻繁に休む、あるいは突然休むことが多い部下については、部下の心身の状態や家庭の事情について確認する必要がある場合も出てきます。

また、会社は原則とし有給休暇の取得を拒むことはできませんが、業務上の必要がある場合は時期を変更させることは可能です。複数の部下が休みを取る場合、理由を聞いて休みを調整することはやむをえないこともあるでしょう。

しかしながら、特に業務上の支障がないのに、部下に休む理由を聞くのは適切ではありません。年次有休休暇は、労働者が心身の疲労を回復し、明日への活力と創造力を養い、ゆとりある労働者生活を実現するためのものであると規定されている制度です。

法の趣旨からすると、会社側がしつこく理由を尋ねたり、取得に難色を示したりすることはパワハラに当たる可能性があります。ましてや休みを取得させなかったり、休みを取ったことで人事評価を下げるのは違法行為です。

基本的に社員は有給休暇の取得について理由を説明する義務はありません。休みの使い方は人それぞれです。会社側は有給休暇の意義をしっかり認識した上で、社員に対応するようにしましょう。

部下に仕事を休ませない上司にならないためには?

上司が部下に休みを取らせない、休みづらいように仕向けることはあってはなりません。そういう上司にならないためには、休みを取ることに対してマイナスの意識を持たないことです。有休の取得率を上げることは、個人のワーク・ライフ・バランスの向上だけでなく、仕事のやり方を見直すきっかけにもなるのです。

休みやすい雰囲気を作るためには、上司が率先して休みを取り、部下にも有休の取得を促すようにするのが望ましいと言えます。

また、周囲に迷惑がかかると考えて休みを取ることをためらうことのないよう、業務の分担やサポート体制を整えることも必要です。業務のスケジュールは、チームの全員が有給休暇を消化することを想定して、計画しましょう。みんなが休みを取れるように仕事の効率化を考えていくことで、業務改善のアイデアも生まれます。結果として、今までより少ない時間で成果を上げられる職場に成長できるのです。

休暇を取ったメンバーをサポートすることでチームの結束も高まり、個人のスキルアップにも期待できます。会社側も研修などを実施して管理職の意識改革を図ることが重要です。有給休暇取得率の目標を掲げるなどして、社員のもモチベーションを上げていくことが人材の確保・定着につながります。

まとめ

繰り返しになりますが、有給休暇の取得は法で定められた労働者の権利です。部下が休みを取ることを妨害したり、休むことに罪悪感を感じる状況に追い込むことはパワハラとなる可能性が高い行為です。休みを取りづらい職場は、他のことでもブラックであると捉えられかねません。

仕事を休んで心身の疲れを癒すことは、明日への活力を生み出す力にもなります。一人一人が自分の能力を発揮し、生き生きと働ける職場は、仕事もプライベートも充実させられる職場なのです。

●執筆/小田 啓子(おだ けいこ)

社会保険労務士。
大学卒業後、外食チェーン本部総務部および建設コンサルタント企業の管理部を経て、2022年に「小田社会保険労務士事務所」を開業。現在人事・労務コンサルタントとして企業のサポートをする傍ら、「年金とライフプランの相談」や「ハラスメント研修」などを実施し、「働く人を支援する社労士」として活動中。趣味は、美術鑑賞。

●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com

 


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