仏式の葬儀とキリスト教の葬儀では、葬儀の飾りつけや、内容に至るまで大きく異なるものです。宗教観も、死に対する考え方も違います。キリスト教の葬儀自体は日本の葬儀全体の約1%程度ですから、恐らくそれほど多く経験することはないでしょう。しかし、背景にある宗教観や死生観を理解しておくと、儀式の意味合いが理解できます。
この記事では「キリスト教の葬儀」について、京都・滋賀で85年の歴史を持ち年間約6,000件の葬儀を施行する、葬祭専門企業・公益社(https://www.koekisha-kyoto.com)がご紹介いたします。
もしもの時、その日の時に、この記事をお役立てください。
目次
キリスト教について
キリスト教の葬儀の流れ
キリスト教葬儀の参列マナー
まとめ
キリスト教について
キリスト教が日本に伝わったのは、1549年です。フランシスコ・ザビエルという宣教師によって伝えられました。その後、豊臣秀吉や徳川家康によって、キリシタン弾圧という迫害されていた歴史もあります。
キリスト教には「カトリック」と「プロテスタント」の大きな2つの教派があります。この2つはもともとキリスト教ではありますが、16世紀に起こった宗教改革運動によって「プロテスタント」が分派しました。
カトリックの葬儀の考え方
カトリックにおける死生観は、「死は生の始まり」です。人は亡くなっても肉体が滅びるだけで、いずれ復活すると考えられています。死は祝福であり、悲しんだり嘆いたりはしません。永遠の命を得られると考えられているためです。
カトリックでは、死者の行く世界が、天国から煉獄まで複数に分かれていて、生前の行いによって行く世界が決まるのです。儀式では懺悔が重要で、生前の悪行を告白することで償われるといわれています。遺族はミサで祈りを捧げます。
プロテスタントの葬儀の考え方
プロテスタントもカトリック同様に、人は亡くなっても、また復活するという考え方です。しかし地獄や天国など、人が死していく世界はありません。人は誰もが罪を背負っているゆえ、死後の状態は神に委ねられています。よって罪を告白するための懺悔もなく、遺族の祈りは神に捧げられます。
聖職者の呼び方
カトリックとプロテスタントでは、聖職者の呼び方がそれぞれで異なります。カトリックでは、「神父」「司祭」、プロテスタントでは「牧師」です。
キリスト教の葬儀の流れ
カトリックの葬儀は、故人の罪を神にお詫びして許しを請い、復活の恵みに対して感謝をするための儀式です。一方プロテスタントでは、神に祈りを捧げることそれ自体を目的としています。そのため故人の冥福を祈るような慰霊の場という考え方はしません。それぞれの教派の葬儀の流れをみていきましょう。
カトリックでの葬儀の流れ
カトリックでは、『カトリック儀式書』によって葬儀の流れは決まっています。死は祝福であり感謝の場であるため、天に召される臨終の間際から儀式が始まる。医師によって危篤と判断されたら、所属教会に連絡をして神父を呼ぶこともあります。すべてがこの流れのとおりではありません。
・臨終の儀式
神父は、「病者の塗油の秘跡」という儀式を行ない、罪からの解放を願います。次に「聖体拝領」という儀式を行ない、パンと葡萄酒を信者に与えます。これにより信者は、主と結ばれ復活の保証を得るのです。臨終を迎えたら、神父は臨終の祈りを唱えます。亡くなられた後は、速やかに病院から院外に搬送し、自宅や葬儀場にて納棺式を行ないます。
・納棺式
遺体を清め、着替えを済ませて「死化粧」を施し、神父立ち合いのもと納棺式を執り行ないます。神父は聖書の朗読、聖歌を斉唱し、両手を胸の前で組み、十字架かロザリオを持たせます。遺体の周りを白い花で埋めて棺に黒い布をかけ、祭壇に安置します。
・通夜の祈り
キリスト教には本来「通夜」あるいは「前夜」という考え方はありません。この通夜の祈りの儀式は日本の慣習に合わせて作られたものです。
・葬儀ミサ
葬儀ミサとは、「ことばの典礼」と「感謝の典礼」という二つの儀式が中心です。神父により棺に聖水がかけられ、司会者が開式の辞を告げます。神父による「ことばの典礼」、聖書の朗読と説教が行なわれ、その後ここでも「感謝の典礼」である聖体拝領が行なわれるのです。参列者で拝領できるのは、信者の方だけに限られます。
・赦祷式
赦祷式とは、名前の通り赦しを願う儀式です。神父は棺に聖水をかけ罪を清め、安息を祈って香を撒きます。
・告別式
告別式は参列者が故人に別れを告げるための儀式です。聖歌斉唱から、弔辞、そして弔電紹介が行なわれ、仏式での焼香にあたる、献花の時間が設けられます。最後に遺族挨拶で終わります。
・出棺式
亡くなった方と最後の対面をして、棺の中に花を添え、遺族が棺を運びだします。
・火葬
キリスト教は土葬が基本ですが、日本では火葬が主流となっています。
プロテスタント葬儀の流れ
プロテスタントの葬儀では、特に決まった形式はなく儀式の自由度は高く、各教会によって違いがあります。プロテスタントも同様に、危篤の段階で所属の教会に連絡をして、牧師が臨終に立ち合うこともあります。
・聖餐式(せいさんしき)
牧師は、病人にパンとワインを与え家族と共に祈ります。臨終後は「死に水をとる」ガーゼや脱脂綿に水を含ませ唇を濡らします。
・納棺式
牧師が立ち合い、祈りを捧げ、遺族たちの手で遺体を棺に納めます。
・前夜式
仏式の葬儀のお通夜にあたるものです。特に形式はありませんが一般的に、牧師を招いて行い讃美歌の斉唱、聖書朗読があり、牧師が主に祈りを捧げます。式の終わりには、献花を行ないます。
・葬儀告別式
カトリックでは葬儀と告別式を分けて行いますが、プロテスタントでは分けずに一連の儀式として行なわれます。聖書朗読と祈祷、讃美歌の斉唱、牧師の説教、弔辞と弔電の紹介、オルガン演奏、出棺の祈り、献花、出棺などが行なわれます。
・出棺式
亡くなった方と最後に対面をして棺の中に花を添え、遺族が棺を運びだします。
・火葬
キリスト教は土葬が基本ですが、日本では火葬が主流となっています。
キリスト教葬儀の参列マナー
キリスト教の葬儀では、仏式の葬儀とは異なる儀式が多くあります。それだけでも戸惑いが大きいと思いますが、マナーも違うことが多いので注意が必要です。
献花・供花のマナー
献花では白い花が使用されます。種類としては、菊やカーネーションです。一般的には会場で用意されています。献花は、両手で受け取り、遺族に一礼をしてから献花台の前まで進み、茎側を祭壇にむけ、左手は右手の下の添えるようにしながら、献花台の上に花を置きます。一礼して黙祷した後、前を向いたまま2、3歩下がり、遺族に一礼してから自席に戻ります。
挨拶のマナー
基本的には、死は不幸という考え方はありません。よって「お悔やみ」や「ご冥福」などの言葉を使わず、「安らかな眠りをお祈りします」など故人の安息を願う表現をしましょう。
服装のマナー
仏式の葬儀に準ずる服装で問題ありません。数珠は必要なし。喪主は正式喪服で、親族や一般参列者は準喪服を着用。結婚指輪以外のアクサセリーははずしますが、真珠のネックレスはつけて行っても構いません。カトリックでは、黒いベール付きの帽子をかぶるのが正装です。
香典のマナー
キリスト教での香典は、献花料、もしくは御花料といい、水引のつかない不祝儀袋を用意します。十字架や花模様のものが一般的ですが、白無地の封筒でも構いません。金額の相場は、通常仏式の香典と同じと考えてください。
まとめ
キリスト教ではカトリックやプロテスタント以外にも、所属する教会によって作法やマナーが異なることがあります。また、今回ご紹介させていただきました葬儀の方式は、簡略化して行なわれる場合も多いようです。分からない場合は、葬儀会社や神父、牧師に事前に相談しましょう。
●取材協力・監修/公益社(https://www.koekisha-kyoto.com)
京都・滋賀で85年に渡り葬儀奉仕の道をひと筋にあゆんでいます。「もしも」のとき安心してお任せいただけるのが公益社です。
●編集/中野敦志(京都メディアライン・https://kyotomedialine.com FB)