葬儀の形も時代と共に変わりつつあります。葬儀の祭壇にも、時代の変化が顕著にあらわれているのではないでしょうか。以前の祭壇は白木が目立ち、お供えの花が置かれて、質素で余白のある空間だったものです。現在では、花で埋め尽くされた祭壇が主流になっています。清楚で美しい花の祭壇が、亡き人の面影を偲ばせ、見送る人の心の悲しみを和らげてくれているようです。
この記事では「葬儀の祭壇」について、京都・滋賀で85年の歴史を持ち年間約6,000件の葬儀を施行する、葬祭専門企業・公益社(https://www.koekisha-kyoto.com)がご紹介いたします。
もしもの時、その日の時に、この記事をお役立てください。
目次
祭壇とは
祭壇の種類
祭壇のニューウエーブ
祭壇の費用
生花祭壇の花の行方
まとめ
祭壇とは
祭壇とは一般的に、神や仏、亡くなられた方を供養するための壇のことです。仏教における祭壇は、仏壇や須弥壇などを常設するものと、葬儀の祭壇や、四十九日まで置かれる中陰壇などの仮設のものがあります。
葬儀の歴史と祭壇
昭和初期頃までは、白木の輿に棺を入れて、担いで墓地に運び埋葬する「野辺送り」をしていました。戦後、土葬の文化は少なくなり、火葬に移行。また、「野辺送り」も近代化に伴い、霊柩車で運ぶスタイルとなり、葬儀場や自宅に、白木の祭壇で祀る葬儀へと変わっていきました。
祭壇について
宗教的には、今日のような祭壇を必要としているわけではありません。古来は枕飾りのような、小さな祭壇が枕元に置かれるくらいのもの。棺の前に、白木の台に白い布を被せ、位牌や供え物を置く程度でした。第二次世界大戦以前は、葬儀自体もほとんどが自宅で営まれておりました。ところが、高度成長期に葬儀場が建設され、葬儀の中心が葬儀会館などに変わっていく中で、祭壇が大きくなっていった歴史があります。
祭壇の種類
祭壇は葬儀場会場の中央に位置し、遺影写真と供花、供物、葬具などで飾ります。古くは棺の前に小さな机を置いていました。白い布で覆い、その上に位牌とお供え物を並べます。お供え物は宗教によってさまざまです。
仏教での祭壇のお供え物は「五供(ごく・ごくう)」と呼ばれる5種類の供え物になります。「花」「香」「灯明」「飲食」「水」です。
白木祭壇
仏式の葬儀において一番よく使われる祭壇が、この白木祭壇です。野辺送りの名残で、葬列で棺を入れた輿が、祭壇の上部に模されて置かれています。日本の仏教の伝統的な形を受け継いだ祭壇です。
白木祭壇は、その名の通り白木で作られた祭壇のこと。古くから白木のものは格式が高いとされています。しかし、意味合い的には「亡くなることが予兆できないから塗料など塗る暇がない」というのが正しく、葬儀が終わると燃やしていました。
生花祭壇
生花だけで埋め尽くされた祭壇が、「生花祭壇」です。祭壇に使う花は、故人が好きだった花を使ったりします。宗教色が薄く、故人の好みや、イメージに合わせて作られる祭壇です。生花をふんだんに使っているため費用は若干高めになります。また、季節や生花の流通などにより、変動要素も大きいです。
造花祭壇
造花だけで埋め尽くされた「造花祭壇」、別名「アートフラワー祭壇」。季節などの制約を受けないため、自由にアレンジできます。あるいは、生花に造花を組み合わせることで、費用を抑えつつデザインやイメージの幅を広げることも可能です。
神式祭壇
祭壇の素材は白木で白木祭壇と同じですが、祭壇に三種の神器である鏡、剣、勾玉のレプリカを飾ります。米、塩、海のもの、山のもの、川のもの、季節のものなどをお供えとして置きます。
祭壇のニューウエーブ
生花祭壇や造花祭壇も宗教色にとらわれない、比較的新しい祭壇ですが、もっと新しい、ニューウエーブと呼ぶにふさわしい祭壇も出現。代表的なものを取り上げて解説します。
スクリーン祭壇
祭壇の中央に大きなスクリーンを配置し、生前の写真を映し出します。他にも小さなスクリーンを置いて、生前の楽しかった時や、メモリアルな時を思い出す写真も。暗い悲しいイメージを一新させるような、華やかで明るい葬儀であるのが特徴です。スクリーンの周りには供花などを並べ、華やかさを演出します。
キャンドル祭壇
多くのロウソクを灯し、幻想的な雰囲気の中で参列者の気持ちを癒して、故人をお送りする祭壇です。ロウソクのまわりには生花を配します。費用的には一番安く抑えることが可能です。
祭壇の費用
祭壇の費用は、おおむね10万円から50万円の間が一般的ですが、オリジナルのものや大きなものになれば100万円以上にもなります。祭壇の選び方は、葬儀費用の中にセット料金として組み込まれているものや、カタログから選ぶタイプのものまで色々です。花祭壇は選ぶ花の種類や量、季節の変動要素で費用は変わってきます。
生花祭壇の花の行方
以前は、圧倒的に白木祭壇を使う方が多く、主流でしたが現在では逆転して、生花祭壇を利用される方が多くなっています。とてもきれいな祭壇ですが葬儀後、そもそもあの大量の花はどこに行くのでしょうか?
別れ花として柩棺にいれる
出棺の際に参列者が故人をお見送りするために、生花祭壇の花を柩に入れます。亡き人の顔のまわりが花で覆われて、とてもきれいなイメージです。この場合、茎は切り取り、花の部分だけを入れます。
ブーケにして参列者に渡す
参列者にブーケにしたり、一輪挿しにしたり、渡すこともできます。その場合は事前に葬儀会社か、花屋のスタッフに相談しておきましょう。葬儀の花ということで、縁起が悪いように思われるかも知れませんが、祭壇に飾った花は長寿の縁起物として重宝がられます。
まとめ
日本人の宗教観が薄れていっているのか、現代の葬儀は花の祭壇が主流です。また、他にも、スクリーン祭壇やキャンドル祭壇といったものまで出現しています。この先どんな形になっていくのでしょうか? しかし、故人を見送る気持ちと、日本の伝統は変わらないでいて欲しいと願います。
●取材協力・監修/公益社(https://www.koekisha-kyoto.com)
京都・滋賀で85年に渡り葬儀奉仕の道をひと筋にあゆんでいます。「もしも」のとき安心してお任せいただけるのが公益社です。
●編集/中野敦志(京都メディアライン・https://kyotomedialine.com FB)