生前に贈与する際は、贈与する側(贈与者)と贈与を受ける側(受贈者)がよく話し合い、双方が不利益を被らないように進めていくことが望ましいでしょう。そのためには、贈与を行う前に予め生前贈与に関する基本的な流れについて理解しておくことが大切です。

そこで今回は、日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)の税理士 中川義敬が、長年にわたる税理士業務を通じて得た幅広い知識や経験に基づき、生前贈与の手続きや流れ、必要な書類と費用についてご説明いたします。

目次
生前贈与の手続き、流れとは?
生前贈与に必要な書類は?
生前贈与にかかる費用は?
生前贈与の手続きは自分でできる? 考えられるトラブルは?
まとめ

生前贈与の手続き、流れとは?

生前贈与は以下の流れに沿って手続きを行います。

1:誰にどんな財産を贈与するのかを決める

贈与する相手や贈与する財産によって、生前贈与に必要な手続きが異なってきます。そのため、まずは財産を贈与したい相手と、贈与したい財産を決めることが必要です。

2:受贈者と贈与契約を結ぶ

贈与は口頭の合意でも成立はします。しかし、贈与者と受贈者双方が合意したことを証明するためにも、また贈与の内容を明確化するためにも贈与契約書を作成しておくことが大切です。

3:贈与する財産を渡す

実際に贈与したいものを受贈者に渡すことになりますが、不動産を生前贈与により渡す場合は、不動産の所有権移転登記が必要です。手続きを行う際は、贈与者・受贈者それぞれが必要書類を用意し法務局に登記申請を行います。

4:贈与税の申告・納付を行う

贈与税の申告・納付は受贈者が贈与を受けた年の翌年3月15日までに行います。原則、1年間における贈与財産の合計額が、基礎控除額である110万円を超えていれば、暦年課税による贈与税の申告納付が必要です。

また、60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫に財産を贈与した場合は、相続時精算課税を選択することができます。しかし、適用を受けるためには、必ず贈与税の申告手続きを行う必要があります。

5:登録免許税・不動産取得税を納付

土地や建物など、不動産を生前贈与した場合には、不動産の所有権移転登記を行う際に登録免許税を納付。そして、所有権移転登記が完了し、不動産の名義が受贈者に変わった後に不動産取得税をそれぞれ納付します。

生前贈与に必要な書類は?

生前贈与に必要な主な書類として以下のものがあります。

1:贈与契約書

生前贈与を行ったことの証明となるほか、不動産移転登記手続きを行う際に必要な書類となります。

2:不動産の所有権移転登記の申請書類

(1)贈与者が用意する書類
・発行から3か月以内の印鑑登録証明書
・対象不動産の登記済権利証または登記識別情報通知

(2)受贈者が用意する書類
・住民票の写し

(3)その他必要な書類
・登記申請書
・贈与契約書等
・対象不動産の固定資産評価証明書
・本人確認書類
・司法書士等に登記を依頼する場合は委任状

3:贈与税の申告書類

1月1日から12月31日までに受けた贈与の額が110万円を超える場合、相続時精算課税を適用する場合には、贈与税の申告書及び一定の書類が必要となります。

生前贈与にかかる費用は?

贈与を行うことで必要となる費用は、以下のものがあります。

1:贈与税

以下の計算式により算出された税額が贈与税としてかかる費用となります。

(1)暦年課税

(1年間に贈与を受けた財産の価額 - 110万円(基礎控除額))× 税率 - 控除額

なお、暦年課税の税率は、一般税率と特例税率に区分されており、贈与者と受贈者の関係や受贈者の年齢等により適用される区分が決定されます。具体的な税率や適用要件等は国税庁のHP等より確認してください。

(2)相続時精算課税

(1年間に贈与を受けた財産の価額 - 特別控除額(2,500万。前年以前に特別控除額を控除している場合は残額))× 税率20%

2:登録免許税・不動産取得税

以下の計算式により算出された税額が登録免許税・不動産取得税としてかかる費用となります。

登録免許税:(生前贈与する不動産の固定資産税評価額)× 税率2.0%

不動産取得税:(生前贈与する不動産の固定資産評価額)× 税率4.0%

不動産取得税について、本則では税率4%ですが、贈与を受けた不動産が住宅の土地・建物の場合は、特例措置により令和6年3月31日まで税率3.0%となり、さらに住宅の土地等の場合は、固定資産税評価額に2分の1を乗じた金額に税率3.0%を乗じた金額にまで軽減されます。

生前贈与の手続きは自分でできる? 考えられるトラブルは?

生前贈与の続きを自分で行えば、専門家に依頼した場合に生じる費用がかからなくてすみますが、誤りがあれば追加で納税を求められるリスクを伴います。自分で手続きを行うのか、それとも専門家に依頼するのか、その判断材料の一つとして以下を参考にしてください。

自分でも手続きを比較的容易にできるケース

贈与財産が年間で110万円以下であれば、贈与税の申告は不要です。そのため贈与契約書の作成さえすれば、生前贈与の手続きを完了することができます。また、相続財産が年間で110万を超える場合であっても、贈与財産が預貯金のみであれば、贈与税は贈与した金額を財産の価額として計算することが可能です。

さらに受贈者の口座に贈与する金額だけ振り込めば、手続きは完了しますのでそれほど負担なく手続きを進められます。

専門家に依頼した方がよいケース

贈与財産に不動産がある場合は、名義変更の手続きが必要となるほか、財産の価額は一般に基礎控除を超えるため、贈与税の申告と納税が必要です。特に土地の贈与を受ける場合、地目、路線価の有無、土地の形状等によって財産の価額が異なります。そのため、贈与する財産に不動産が含まれている場合は、専門家に依頼した方がよいかもしれません。自分で行うにしても、事前に税理士等の専門家に相談することをおすすめします。

なお、生前贈与によるトラブルとしては、例えば、受贈者の合意がないと税務署に判断され贈与として認められないケース。また、口約束で贈与を行ってしまった結果、贈与の証拠がないためトラブルとなるケースが考えられます。

こういったトラブルを避けるためには、贈与者と受贈者の双方が贈与の内容や条件を確認し合意し、贈与者と受贈者がそれぞれ住所と氏名を自筆し、実印を押印した贈与契約書を書面で残しておくことが大切です。

まとめ

生前贈与は相続税の節税対策として有効です。しかし贈与する財産によっては、不動産所得税、登録免許税、贈与税を納付する必要があり、手続きに時間を要した結果、個人の負担が生じることとなってしまいます。

よって、生前贈与する際は、一連の手続きにかかる費用や要する手間や時間等を総合的に判断し進めるようにしましょう。

●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)

日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。

日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com

構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com

 


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