平成27年1月より相続税の基礎控除額が引き下げられました。この影響により課税の範囲が大きく広がり、税務申告とあまり縁のなかった方まで、対応が求められることも。まず、相続人の皆さんが気になるのは、手続きは誰に依頼すればよいのか、報酬はいくらぐらいなのか、また、ご自身で手続きを行うのは可能なのか、といったことではないでしょうか?

そこで、日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)の税理士 中川義敬が、長年にわたる税理士業務を通じて得た知識や経験に基づき、専門家の見定め方と、相続手続きにかかる費用などについて解説。また、専門家に依頼した場合と、ご自分で手続きを行った場合の相場観、ご自身で手続きを行った場合のメリット、デメリットについてもご紹介いたします。

目次
相続手続きにかかる費用とは?
相続手続きを自分でやった場合の費用は?
相続手続きを自分でやるメリット・デメリットは?
相続の手続きは誰に頼む?
相続手続きを専門家に頼んだ場合の費用の相場は?
まとめ

相続手続きにかかる費用とは?

相続手続きは主に「相続税申告手続き」と「相続登記手続き(不動産所有の場合)」に分けられます。

相続税申告時に発生する主な費用としては、以下の3種類です。

1.相続税本税の納税資金
2.添付書類の発行手数料
3.専門家の費用

添付書類は納税者により幅がありますが、主なものとしては、戸籍や不動産の謄本関係、相続財産の対象となった銀行の残高証明などです。

また、相続登記時に発生する費用は、以下の4つとなります。

1.登記手数料
2.登録免許税
3.添付書類の発行手数料
4.専門家への費用

相続手続きを自分でやった場合の費用は?

自分で手続きを行う際の費用として、財産の種類や内容、家族構成により金額に幅はあります。

手続きの種類を大きく分けると次の3つに。どれに該当するかによって、支出する費用は変わってきます。

相続税の申告書を作成する場合

相続税の申告書を作成しなければいけない場合は、戸籍や謄本など申告書に添付する書類の発行手数料がかかってきます。金額的には数百円程度の手数料が大半となりますが、人によっては数千円程度になる場合も。これに、算出した相続税の本税が必要になってきます。

不動産がある場合

先述した通り、ご自身で対応する際は上述した1~3の費用が対象になります。不動産評価額により幅はありますが、数千円~数万円程度が必要です。

金融資産の場合

金融資産、ここでは主に預金口座について説明します。名義変更の際必要になってくるのは、次の5つの書類です。

1.銀行所定の申請書
2.印鑑証明書(手続きする人 + 相続人全員分)
3.口座情報が分かるもの(通帳やキャッシュカードなど)
4.被相続人の死亡が分かる書類(戸籍謄本や除籍謄本)
5.相続関係を証明できる書類

手数料が発生するものとしては、印鑑証明や謄本関係、相続関係を証明する書類です。発行手数料としては、いずれも数百円程度なので、こちらも通常は数千程度で済む場合が多いでしょう。

相続手続きを自分でやるメリット・デメリットは?

ご自身で相続手続きを行う場合には、主にコストと専門的な知識の内容で、メリットとデメリットがあります。

メリット

相続手続きを自分で行う1番のメリットは、コストの面です。それほど、複雑な権利関係がなく、資産の種類や金額が少ない場合は、数千円~数万円で対応することができます。

デメリット

相続申告については、提出期限までに財産の額を正確に見積り、税額の計算をすることが必要です。もしも提出期限に間に合わなかった場合は、延滞税や加算税などのペナルティが発生します。加えて税額控除の制度をよく理解せずに計算することで、こちらも大きな損をしてしまう可能性があるでしょう。

また、相続登記に関しては、将来の権利関係が複雑化する等のリスクが挙げられます。手続き書類に不備等がある場合は、何度も申請手続きをやり直す必要が生じ、時間のロスと心理的負荷が発生します。

相続の手続きは誰に頼む?

相続が発生した場合にどの専門家に相談するかは、相談内容に応じて異なりますが、主に司法書士・税理士・弁護士、銀行などが手続きをサポートしてくれます。不動産の名義変更、相続税の申告手続、遺産分割協議書の作成が、主な相談内容になるでしょう。

例えば、不動産の名義変更は司法書士、相続税の申告手続きは税理士、遺産分割協議書の作成は弁護士といった具合です。あとは、依頼する専門家が相続手続きに力をいれているかということと、相談内容が多岐にわたる場合は、他業種との連携はできているのか、などを参考にするとよいでしょう。

相続手続きを専門家に頼んだ場合の費用の相場は?

専門家の費用のだいたいの相場は下記の通りです。相続人の数や相続財産の内容により、費用には幅があります。

司法書士報酬の相場

司法書士報酬の目安は、6万円~11万円と幅が広くなっています。

日本司法書士会連合会が加盟会員に対して行った、報酬アンケート調査では「地域平均」「安く済んだ人の平均」「高額に及んだ人の平均」の3種類の結果が出ています(下記表)。

所有権移転登記【相続】                         単位=円

地区名全体の平均低額者10%の平均高額者10%の平均
北海道地区60,98328,32097,843
東北地区60,66735,45799,733
関東地区65,80039,212103,350
中部地区63,47037,949116,580
近畿地区78,32645,842118,734
中国地区65,67037,037111,096
四国地区65,57840,68399,947
九州地区62,28138,02196,892

引用:日本司法書士会連合会「司法書士報酬アンケート結果/2018年実施分」

弁護士報酬の相場

相続問題を弁護士に依頼した場合、依頼する内容・法律事務所や弁護士ごとの基準によって弁護士費用の相場が変わります。しかし、日本弁護士連合会が定めていた基準(旧報酬規程)が、一定の目安になっていることが多いようです。

下記報酬はあくまで目安となりますので、見積書を取って事前に報酬額を確認されるとよいでしょう。

・着手金 + 報酬金:20万円~100万円
・相談料:5千円~1万円/1時間
・日当:1~2万円/1日(訴訟代理を任せる場合に発生)

税理士報酬の相場

税理士報酬の目安は、相続財産評価額の0.5%~1%程度。依頼状況によりその他費用が発生します。

詳細は下記のとおりです。

・基本報酬:相続財産評価額の0.5%~1%

【追加料金】

・土地追加… 5~6万円/利用区画
・相続人追加… 基本報酬 × 10% ~ 20%/1人
・申告期限直前の依頼… 基本報酬 × 10% ~ 20%

まとめ

相続手続きを自分でやることのメリットは、費用の面が大きいと思います。しかし、同時に相当数の時間を必要とすることや、相続申告などは期限までに作成を完了しなければいけないため、心理的に疲弊してしまうかもしれません。

専門家は、単に依頼人に代わって手続きを行うというばかりではなく「迅速さ・確実さ」を持ち合わせています。また、「依頼人にとって1番いい結果」を実現するプロフェッショナルでもあります。判断に迷われた方は、まずは一度専門家に相談してみてから対応を決めるとよいでしょう。

●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)

日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。

日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com

構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com

 

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