不動産登記とは、不動産について、所在地、面積、所有者などの情報を法務局のコンピュータに記録することをいいます。不動産登記があることで、不動産に関する情報が公示されるので、国民の権利の保全が図られ、不動産登記に関する取引が担保されます。

そこで今回は、日本クレアス税理士法人の税理士 中川義敬が、長年にわたる不動産コンサルティングを通じて得た幅広い知識や経験に基づき、不動産登記の目的や費用についてご説明いたします。

目次
不動産登記とは?
不動産登記簿謄本とは?
どんな時に不動産登記が必要になる?
不動産登記に必要な費用
まとめ

不動産登記とは?

売買や相続などによって不動産の所有者が変わった場合には、必ず登記を行わなければなりません。登記を行う目的は、売却・増改築・無断占有者に対する明け渡し交渉の前提となる「対抗要件(民法177条)」にあります。

対抗要件とは?

・第三者に向かって所有権主張するための要件

・不動産の場合は「登記」が対抗要件になる

対抗要件がなくとも、亡くなった人の不動産を使用するのは構いません。しかし、他の相続人や取引相手に対して「不動産は自分のものだ」と訴えることは不可能です。不動産を排他的・独占的に支配し、法律行為に用いることが出来るのは、あくまでも登記名義人だけだからです。以上の点から、承継人が不動産を有効活用するうえで、相続登記はある程度の費用を覚悟してでも欠かせない手続きだと言えます。

不動産登記簿謄本とは?

所定の請求書を登記所に提出すると、誰でも登記事項の全部又は一部を証明した書面、「登記事項証明書」の交付を受けることが可能です。登記記録は、1筆(1区画)の土地や、1個の建物ごとに表題部と権利部に区分して作成されています。

表題部の記録事項

表題部にする登記を「表示に関する登記」といい、下記それぞれの内容が記載されています。

・土地… 所在、地番、地目(土地の現況)、地積(土地の面積)など
・建物… 所在、地番、家屋番号、種類、構造、床面積など

マンションなどの区分建物であれば、その建物の敷地に関する権利(敷地権)が記録される場合があります。

権利部の記録事項

権利部はさらに甲区と乙区に区分して、下記の内容がそれぞれ記録されています。

・甲区… 所有権に関する登記事項
・乙区… 所有権以外の権利に関する登記事項

甲区には、所有者に関する事項が記録されていて、「誰が、いつ、どんな原因で所有権を取得したのか」などの詳細な情報がわかります。取得の原因は売買、相続などに区別されていて、取得原因は所有権移転登記や所有権に関する仮登記、差押え、仮処分など、登記簿を確認すれば、様々な情報が記載されています。

乙区には、抵当権設定や地上権設定、地役権の設定など、所有権以外の権利に関する事項が記録されています。

どんな時に不動産登記が必要になる?

下記が登記の必要な場合の事例として挙げられます。

・不動産を取得したとき
・不動産の所有者が亡くなり、不動産を相続したとき
・建物を取り壊したとき
・住宅ローンを完済したとき

現在は、相続登記の申請は義務ではありません。しかし、令和6年4月1日より相続登記の申請が義務化されます。相続登記がされないことで、所有者不明土地(※)が存在しており、下記のような問題が生じています。

(※)所有者不明土地… 不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地や、所有者が判明してもその所在が不明で連絡が付かない土地のこと。

所有者不明土地に生じる問題

・所有者の探索に多大な時間と費用が必要(戸籍・住民票の収集、現地訪問等の負担が大きい) 。

・所有者の所在等が不明な場合には、土地が管理されず放置されることが多い。

・共有者が多数の場合や一部所在不明の場合、土地の管理・利用のために必要な合意形成が困難。

・復旧・復興事業が円滑に進まないなど、土地の活用を阻害されており、土地が管理不全化し、隣接する土地への悪影響が発生する等。

これらの問題が、高齢化の進展による死亡者数の増加等によって、今後深刻化するおそれがあり、所有者不明土地問題の解決が重要となっています。

不動産登記に必要な費用

不動産登記には、下記それぞれの費用が必要となります。

登記手数料

登記申請時に、法務局に対し「登記手数料」「登録免許税」の各費用を納めなければなりません。登記手数料は登記事項証明書の発行費用になり、法務局の窓口で書面請求を行うか、オンライン申請で手続きが可能です。窓口で請求する場合は600円、オンライン申請であれば480~500円が必要となります。

登録免許税は、登記種類と不動産評価額により異なります。

登録免許税

登録免許税には「不動産評価額の0.4%」の税率が定められており、相場は数千円から1万円程度です。

添付書類の発行手数料

不動産の登記申請にあたっては、登記原因や対象不動産を示すための様々な資料を添付しなければなりません。添付するものは以下のものです。

・戸籍謄本
・住民票
・印鑑登録証明書
・登記事項証明書
・固定資産評価証明書

財産調査費用(名寄帳の交付)

市区町村役場で交付される「土地・家屋名寄帳」には、個人別に所有している不動産一覧が記載されています。「被相続人の不動産所有情報がまったくわからない」、「把握している土地建物以外にも所有の可能性がある」といった状況なら、財産調査の手段として名寄帳が役に立つでしょう。

・土地・家屋名寄帳の発行手数料 = 300円 × 被相続人の数
・交付請求先… 市区町村役場

まとめ

相続登記は司法書士や税理士、土地家屋調査士などの有資格者しかできないのではなく、一般の方がご自身で行うことができます。ただ、書類の準備や申請手続き、専門知識がないためにスムーズに進まないなど、相当の労力と時間を要することになるでしょう

また、相続登記の義務化が行われると、相続と切っても切れない関係となります。現在、相続登記を放置されている状態でも、この法改正が行われれば、いつかは相続登記を行わなければいけません。期限を過ぎてしまうと最大で10万円の過料も科されることになりますので、必ず手続きを行いましょう。

構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com

●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)

日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。

日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com

 

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