精神科医の和田秀樹さん(63歳)の新刊『シン・老人力』が話題を集めています。和田医師は停滞するニッポンを救うのは、高齢者の新たな力だと説きます。発売を記念して行なわれた「世界最高齢プログラマー」の若宮正子さん(88歳)との対談の一部を、全7回でお届けします。第5回は、オンライン、テレワーク時代の生き方などについて語り合います。
●対談を収録した動画は下記より視聴できます。
男性も女性も「保護色」になっている
和田秀樹(以下、和田) 日本人は言論の自由が保障されているにもかかわらず、思考の自由がすごく狭いと思います。
若宮正子(以下、若宮) やっぱり自分の頭で考えるよりは、体制に従うとか、みんなと変わらない方が安全とかいうような……何か「保護色」みたいなものが好きなんですかね?
和田 そうですね。女性は女性で良い妻であれとか、男性は男性で企業戦士であれとか、そういう(価値観の)押し付けをされたら、普通はイラッとしてほしいんだけど、あまりに馴染んじゃって、それこそ「保護色」になっている気がしますね。
若宮 そうなんです。だけど、大袈裟かもしれないけど、この頃「第四次産業革命」なんて言われて、AIが実用化されてきていますよね。一つのターニングポイントになると思うんです。何かが変わる時というのは、それに乗じていろんなことが一緒に変わることができるんじゃないかという期待があります。
和田 変わるといいですよね。例えば、先ほど言った「役割」を押し付けられて抵抗がない人たちは、企業戦士であれ主婦であれ、押し付けられているのに、なぜか居心地がいいとか、それが当たり前の自分なんだと馴染んでしまっているんです。
若宮 そうですね。
学校や会社に行かずに生きていい
和田 でも、年を取ると、企業から追い出されちゃうし、子どもも離れていくし、みたいなことが起こる。新たな環境に適応するために、新しい自分にならなきゃいけないのに、そうなれない人がすごく多い。
若宮 そうなんです。他にも例えば、お子さんが不登校になると、まず親のしつけが悪いなんて親が非難されるんですけど、私は不登校というのも一つの出発点だと思うんですよね。
和田 そうです。学校に行かずにどうやって生きていくかを考えればいいわけですから。それこそもうオンラインの時代になって、テレワークの時代になって、学校に行かずに卒業して、会社も行かずに家でやるみたいな感じで生きていけばいいとも思うんですよね。
若宮 そうそう。一方で日本は新しい産業を起こさなきゃいけないとか言うけど、みんなが回りと変わらないことに安心して、どうやって新しい産業なんて起きるんだろうって。
和田 その通りだと思います。だから若宮さんみたいな人が現れてくれると、みんなが私もできるかもしれないと思ってくれるという意味ではいいんですけど、「すごいなあ」で済ましてはいけない。
若宮 みんなが自信を持って、楽しくやればいいと思います。
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●和田秀樹医師の新刊『シン老人力』の情報はこちらから。
https://www.shogakukan.co.jp/books/09389117
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和田秀樹(わだ・ひでき)
精神科医。1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在は川崎幸病院精神科顧問、ルネクリニック東京院院長などを務める。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。著書に『80歳の壁』『70歳が老化の分かれ道』など多数。