精神科医の和田秀樹さん(63歳)の新刊『シン・老人力』が話題を集めています。和田医師は停滞するニッポンを救うのは、高齢者の新たな力だと説きます。発売を記念して行なわれた「世界最高齢プログラマー」の若宮正子さん(88歳)との対談の一部を、全7回でお届けします。第2回は、AI時代に高齢者が成功する可能性などについて語り合います。
●対談を収録した動画は下記より視聴できます。
ティム・クックCEOに招待された
和田秀樹(以下、和田) 若宮さんはご自分でゲームを作られたんですよね。
若宮正子(以下、若宮) そうです。なぜかと言うと、スマートフォンの時代になったのはいいんですけど、年寄りが楽しめるアプリがなかったんです。今も非常に少ないんですけど……。
和田 なるほど。
若宮 スマホの液晶画面が高齢者には使いにくいっていう課題もありますけど、高齢者にとって面白いアプリが何もないとも言われていたんです。
和田 そうだったんですね。
若宮 それで、誰かに作ってもらおうと思ったんですが、「若宮さん、自分で作りませんか。年寄りが作るっていうのは面白いじゃないですか」なんて、おだてられちゃって……。それから、みんなに手伝ってもらったり、教えてもらったりして、何とか(81歳の時に)自分で作っちゃったという感じですね。
和田 すごいですね。
若宮 それを仲間内の「電脳ひな祭り」というネットイベントの時に、ちょこっと披露したら世界中に広まっちゃって、(アップルのティム・クックCEOに招待されているので)アメリカに行きましょうみたいなことになっちゃったんです。最初は詐欺じゃないかと思ったんですけど(笑)。
日本語の発信でも世界で読まれる
和田 なるほど、(クックCEOに招待されるのは)すごいことですよね。やっぱりITの世界の面白さっていうのは、身内に向けて発信しているつもりが、実は世界中が見ている可能性があるってことだと思うんです。
若宮 そうなんです!
和田 この間、落合陽一さん(メディアアーティスト)と対談して聞いた話なんですけど、今、AIが進んできて、すごく面白いなと思ったのは、例えば、AIの翻訳って30~40ページとかの分量でも、もう数秒とか数十秒でできてしまうんですよ。
若宮 なるほど。
和田 もう人間がどんなに頑張ろうと勝てないらしいんですけど、そうなってくると、こっちが日本語で面白いことを書いていたら、ひょっとしたら(AIが翻訳した)英語でそれを読んでくれている人がいるかもしれないんですよね。
若宮 そういう世界になったんだと思います。
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●和田秀樹医師の新刊『シン老人力』の情報はこちらから。
https://www.shogakukan.co.jp/books/09389117
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和田秀樹(わだ・ひでき)
精神科医。1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在は川崎幸病院精神科顧問、ルネクリニック東京院院長などを務める。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。著書に『80歳の壁』『70歳が老化の分かれ道』など多数。