精神科医の和田秀樹さん(63歳)が高齢者の新たな可能性について綴った『シン・老人力』(www.shogakukan.co.jp/books/09389117)。読めば勇気と元気がわくと話題の同書から、高齢者がいつまでも若々しく自分らしく生きるために、「口グセ」にしてほしい言葉について、和田さんが紹介します。
文/和田秀樹
無理せず早めに助けを求める
「がまんはしなくていい」「わがままであれ」と勧めても、やはりギリギリまでがまんしてしまう人はいます。
「自分さえがまんすればいいのだから」が習い性になっているケースは、家庭内や友人関係によくあります。
定年後、新たに始めた仕事上でも起こり得ます。
「友人のわがままに私だけ一方的に振り回されている」
「まだ慣れないのに大量の仕事がある」
といった場合、ギリギリまでがまんしていると、限界に達したときに怒りが爆発するかもしれません。
そうなる前に「手伝ってくれない?」と率直なヘルプサインを出しましょう。誰かが困っていることについて、周囲は驚くほど気づいてくれません。
ヘルプサインから始まる信頼関係
そうは言ってもヘルプサインを出せないからがまんしているという人もいるでしょう。ヘルプを求めることは、落ちぶれた自分を認めることになると思っているのかもしれません。
そんな人の口グセに「大丈夫」があります。
「大丈夫?」と聞かれると、「大丈夫!」と答えてしまうのです。
そう答える人の中には、相手の言葉を素直に受け止めない人もいるはずです。「どうせ口先だけだ」「やさしいふりをしているだけ」と捉える、ひねくれた受け止め方です。でも、案じてくれる人の言葉は素直に受け止めましょう。
ヘルプサインから始まる信頼関係があります。新しい人間関係は、案じてくれる言葉を素直に受け止めることから始まります。
「偏屈な老人」とはよく聞く言い方ですが、歳をとったらどのくらい素直になれるかで、幸せの度合いが決まるように思います。周囲からの励ましへの受け止めであれ、「困っている」の発信であれ、素直を心がけましょう。
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和田秀樹(わだ・ひでき)
精神科医。1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在は川崎幸病院精神科顧問、ルネクリニック東京院院長などを務める。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。著書に『80歳の壁』『70歳が老化の分かれ道』など多数。