取材・文/坂口鈴香
前編では、おひとりさま高齢者が老人ホームに入居するときに求められることの多い「身元保証人」と、成年後見人の任務について解説した。後編では身元保証会社について解説したい。
【前編はこちら】
身元保証会社とは
成年後見人では身元保証人になれないホームの場合は、中澤さんの叔父が利用しているような団体、いわるゆ身元保証会社にお願いする人も少なくない。
中澤さんの叔父が依頼した団体は一般社団法人だが、ほかにも株式会社やNPO法人などが運営している。
身元保証会社はどんなサービスをしてくれるのか。中澤さんの叔父が利用している団体「A社」の場合、以下のような内容だ。
●身元保証:施設入居・転居、入院や手術などの際の身元保証人となる。緊急連絡先も担う
●生活支援:緊急入院対応、各種手続き、入院中の支援、施設見学の同行など
●法律支援:法的問題について専門家が相談に応じる
●金銭管理
●万一の支援:危篤・訃報連絡時の対応、死後手続きの代行
●葬儀・納骨支援
他の身元保証会社もサービス内容はおおむね同様だ。
気になる料金だが、初期費用と月額費用に分かれる。「A社」の場合(事業所の場所によって、金額が違ってくる)、入会金5万円、会費・月3000円、身元保証支援費用27万5000円、万一の支援費用16万5000円、葬儀・納骨支援費用22万円、生活支援費用・平日当前日1時間3850円(週末や夜間は1時間1100円割増、交通費は実費)などとなっている。地方都市である中澤さんの叔父の事業所でも、すべてのサービスをお願いすると初期費用として70万円ほど必要になる。首都圏の事業所だと、初期費用でこれより15万円ほど、生活支援費用も1時間当たり1000円以上高くなる。
この団体は比較的良心的な値段だが、すべてのサービスをお願いすると初期費用だけで百数十万円かかる会社もある。
身元保証会社の探し方
中澤さんは「A社」について、信用できるし、対応もよくて安心して任せられると言っていた。地域包括支援センターから紹介されたということからも、地元で実績のある団体なのがわかる。
身元保証会社を選ぶときは、中澤さんのように地域包括支援センターなどに相談してみるといいだろう。ホームが身元保証会社と提携している場合もある。
信頼できる身元保証会社を選ぶことと並行して考えておきたいのが、費用面だ。先述したように、初期費用だけでまとまった金額が必要になるし、月々の利用料も勘案して、ホームの料金や医療費などとは別にそれだけの金額を払い続けることができるのか、慎重にシミュレーションしてほしい。
すべてのサービスを契約せずに、必要なサービスだけに絞るというのもひとつの方法だ。またホームを探す際、身元保証人が不要なホームに絞ってみるのもいいだろう。
身元保証人に関する厚生労働省の通知とは
なおこの身元保証人については、平成30年8月30日付けで厚生労働省老健局高齢者支援課・振興課が通知を出しており、次のように記載されている。
介護保険施設に関する法令上は身元保証人等を求める規定はなく、各施設の基準省令においても、正当な理由なくサービス提供を拒否することはできないこととされており、入院・入所希望者に身元保証人等がいないことは、サービス提供を拒否する正当な理由には該当しない
つまり、本来は身元保証人がいなくてもホーム等への入居は可能なのだ。
前出の稲津弁護士も、「弁護士としては、高齢者の方が身元保証人をみつけられないことによって、介護施設への入所を拒否されるべきではないと考えています」と、身元保証人がたてられないとホームに入居できないという事態自体に疑問を呈している。
ホームから身元保証人を求められたら、この通知を示してみるのもよい。とはいえ、「この通知があるからといって、施設に入れろと強制できるわけではありません」と稲津弁護士がいうように、ホーム側ともめてまで強行しても本人にとって決してよい結果にはならないだろう。
これからますます増える「おひとりさま高齢者」。自分ごととして、今回ご紹介した身元保証人にまつわるあれこれを頭の片隅に置いておいてソンはない。
取材・文/坂口鈴香
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終活ライター”。訪問した施設は100か所以上。20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。