長期の里帰り出産へ。正直、ホッとした
結婚してしばらくは子どもを作らずに夫婦での生活を楽しみたかった海斗さんと違い、妻はすぐに子どもを求めた。押し切られるかたちで家族計画を立てるも、授からない期間が2年続く。
当時共働きだった海斗さん夫婦だったが、妻は不妊治療と仕事の両立に悩んだ末に退職。するとその2か月後に妊娠できたという。
「妊娠がわかったときは本当に嬉しかったんですが、正直、ホッとしました。毎月落ち込んでいる妻を見るのが辛かったですから。
妻は思い詰めるタイプで、何度か少し休んでみないかと提案すると『他人事だ』『わかっていないくせに口出しするな』とよく怒鳴るようになっていました。今でも一緒に落ち込むべきだったのか、精一杯明るくするべきだったのか、答えはわかりませんが、そんな答えの出ない悩みから解放されるんだって思いましたね。妻には絶対に言えませんけど」
妻は兵庫県にある実家にて里帰り出産を行い、半年ほど離れて生活することに。それだけ長期間も実家にいることが「意外だった」と海斗さんは言う。
「妻の家は両親の折り合いが悪く、一人娘である妻に対しても父親は上から目線で命令する人だったと聞いています。外面がいいようで私から見たら、いいお父さんって感じなんですけどね。そんな父親との折り合いが悪かった分、母親との関係は良いみたいですが、母親は父親の言いなりで、そんな姿を見るのも辛いと妻はよく口にしていました。
だから里帰り出産をしたいと言われたときは驚きましたね。でも、なんとなく『お義父さんのことは大丈夫?』と聞くのは失礼かなと思って、その場は笑顔で送り出しました」
里帰り出産のときに妻の実家で行われていたのは父親排除。妻が里帰りしていた場所は義母の新居だった。【~その2~に続きます】
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。