取材・文/沢木文
「女の友情はハムより薄い」などと言われている。恋愛すれば恋人を、結婚すれば夫を、出産すれば我が子を優先し、友人は二の次、三の次になることが多々あるからだろう。それに、結婚、出産、専業主婦、独身、キャリアなど環境によって価値観も変わる。ここでは、感覚がズレているのに、友人関係を維持しようとした人の話を紹介していく。
由紀さん(仮名・60歳)は、昨年、うつ的な症状に悩まされるようになった。家事をする気力がないため、家は荒れてしまった。ハウスキーパーを呼ぶにも家の内部を晒すようで恥ずかしく、友人でありいとこの登紀子さん(62歳)にヘルプを頼んだ。
美貌のいとこは「男好き」する風貌をしていた
由紀さんは1年前に原因不明のうつ状態に悩まされた。
「朝、起きても何もやる気が起こらなかったんです。コロナのときに、35年以上続けていた社員食堂のパートの仕事がなくなってしまい、それから少しずつ気持ちが落ち込んでいきました。パートが再開する日を楽しみにしていたのに、社員食堂が閉鎖になってしまったんです」
それに加えて、男尊女卑傾向の夫のリモートワークも由紀さんにダメージを与えた。
「夫は頑張り屋さんで仕事ができる人なのですが、“自分は絶対に正しい”という信念を持っている。例えば、散歩をしていて向こうからマルチーズが歩いてきて。その時に私が“かわいいマルチーズだね”と言ったら、“何言ってるんだ? あれはポメラニアンだろ?”と言う。そこで画像検索をして、私が正しいことを言ったら、絶対に不機嫌になって当たり散らすので、“そうだね、あれはポメラニアンだね、ごめんね”とやり過ごすんです。一事が万事そんな感じ。そんな夫が家にいるのでじわじわやられたんだろうなとは思います」
由紀さんには息子(30歳)と娘(25歳)がいるが、彼らは実家に寄りつかないという。
「夫に会うと、いろいろお小言を言われるから嫌なんでしょうね。夫は世の中でエリートと言われる人だし、男っぷりもいい。外面がいいから家族にきつく当たるんでしょう。息子はお父さんに“5教科、まんべんなく勉強してこそ社会の役に立つ。国立大学以外はダメだ”と言われ、行きたかった私立に合格していたのに、ある国立大学に進学しました。でも行きたくないと中退してしまいました」
息子はその後米国に遊びに行き、そこで知り合った仲間とオンライン英会話教室を始めて一山当てているという。
「息子からも娘からも、“ママの人生を生きなよ。お父さんの顔色ばかり見ていることないじゃないか”と言われるんですけれど、離婚はできませんよ。これまでにたくさん泣かされてきましたから」
【亭主関白な夫の世話係として、いとこに来てもらう……次のページに続きます】