取材・文/沢木文

「女の友情はハムより薄い」などと言われている。恋愛すれば恋人を、結婚すれば夫を、出産すれば我が子を優先し、友人は二の次、三の次になることが多々あるからだろう。それに、結婚、出産、専業主婦、独身、キャリアなど環境によって価値観も変わる。ここでは、感覚がズレているのに、友人関係を維持しようとした人の話を紹介していく。

由紀さん(仮名・60歳)は、昨年、うつ的な症状に悩まされるようになった。亭主関白な夫(57歳)は、家事が行き届かないと癇癪を起す。そこで、由紀さんは友人でありいとこの登紀子さん(62歳)にヘルプを頼んだ。

【これまでの経緯は前編で】

てきぱきと家事をこなし、家には爽やかな風が吹く

登紀子さんに「病気で動けないから手伝って」と頼むと、2つ返事でやって来てくれた。

「なんでも手際が良く、決断が早い。たった3時間でゴミだらけだった家はキレイになり、玄関先にはゴミ袋が山積みに。“ゴミの日、明日でしょ。捨てておくから心配しないで”と帰って行きました。1年以上、空気がこもっていた家に、爽やかな風が吹いたような気分でした」

登紀子さんは1日置きに来てくれて、家事だけでなく、由紀さんの話し相手になってくれた。

「会う気分じゃないときは察してくれて、サッと帰ってくれた。夫がリモートワークをしているときは掃除機をかけないなど、配慮してくれたのです。ウチはちょっと変わった間取りで、2階にリビングとキッチン、寝室と子供部屋があり、1階にバスルームと夫の書斎、クローゼットとカーポートがあるんです。夫はテレワークをしているときは書斎にこもっている。登紀子さんはそこにお昼を運んで行ってくれました」

登紀子さんは料理の腕前も確かだ。あるとき、ハッとするほどおいしいスープを飲み、「これはなに?」と言うと「花山椒とホタテの貝柱でだしをひいたのよ。花山椒はいただきもの。ホタテはここの冷蔵庫でカチカチになっていたおつまみ用よ」と答えたという。

「全体的に女子力が高いんです。昔からそうなんですが、男性に自分のことを好きにさせることを楽しむようなところがあります。登紀子さんに彼氏を取られたという話は何度か聞いたことがある。でも、私は登紀子さんが大好きだったので、取られるほうも悪いと思っていました」

ゲームのように恋愛を扱う人は少なからずいる。自分の持つ力を試すかのように、さまざまなスキルを使い、相手を自分に夢中にさせる。そうしてしまえばその相手に用はなくなる。そして、ポイっと捨ててしまう。

「まさにそうでした。ちょっとした気まぐれで、男の人にモーションをかける。そして相手が自分のほうに振り向くと、手練手管で夢中にさせる。そして自分のモノになったと思うと、ポイっと捨ててしまう」

【まさか、夫にまで手を出すとは……次のページに続きます】

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