取材・文/沢木文

「女の友情はハムより薄い」などと言われている。恋愛すれば恋人を、結婚すれば夫を、出産すれば我が子を優先し、友人は二の次、三の次になることが多々あるからだろう。それに、結婚、出産、専業主婦、独身、キャリアなど環境によって価値観も変わる。ここでは、感覚がズレているのに、友人関係を維持しようとした人の話を紹介していく。

田舎暮らしを拒否する私に、夫は離婚を切り出した

敏恵さん(仮名・60歳)は、1年前に1歳年上の夫との32年の結婚生活に終止符を打った。27歳のひとり息子はすでに独立している。ずっと専業主婦だった敏恵さんは、生活費を稼ぐために、スーパーマーケットで働き始める。今はその人間関係に悩んでいるという。

まずは離婚についてお話を伺った。敏恵さんの夫は地方の国立大学を卒業後、上場企業に入り課長職のまま定年を迎えた。給料がいい会社で、蓄財もガッチリしていた。

「ケチでしたからね。私はお金の管理が得意じゃないので主人から生活費をもらっていたんです。主人は財テクが大好きで、株や投資信託で、かなりお金を増やしていたと思います」

変化は3年前に、夫が何の相談もなしに、三浦半島に30坪の土地を購入したこと。

「定年後に好きなことをやりたかったんでしょうね。夫にとってそれは釣り、キャンプだったんです」

三浦半島は海が近く温暖で風光明媚なイメージがある。

「それが違うんです。すごい田舎。最寄駅からバスで30分。近くのコンビニまで徒歩15分以上かかります。それに夜は真っ暗になるんで、治安も心配です」

クルマがないと生活が不便になるであろうこの土地に、夫は勝手に家を建てていた。

「主人は自分がいいと思ったことは、みんなもいいと思っている性格。あるとき、私をドライブに連れて行くという。断ると不機嫌になるので、友達とランチに行く予定を変えて付き合ってあげたんです。都心から1時間半くらいもかけて到着したのは、いやみったらしいくらいのおしゃれな家だったんです」

そして夫は「近いうちに引っ越そう」と言った。

「私は怒りと悲しみで泣いちゃったんです。“こんなところには、絶対に暮らせない”と言いました。便利な東京生活がいい。お友達もいる。行くなら一人で行ってほしいと伝えたんです。そんな言い争いが続くうちに、“じゃあもういい。オマエは不満ばかり言う。離婚してくれ”と」

弁護士を間に立てて、財産分与などの話し合いをし、今のマンションと貯金の半額の1千万円を得た。持ち家だが月4万円の管理費と固定資産税は重い。年金支給まではまだ間があり、働かなくては食べていけない。そこで、パートに出ることにした。

【仕事は選び放題だった……次のページに続きます】

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