話し合えないままの離婚。自分の悪いところがわからない
離婚のメールに返信はなし。しかし翌日には右側が記載された離婚届がリビングのテーブルに置かれていた。
「自分から言い出したことなのに、なんか変な笑いがこみあげてくるような情けない気持ちになりましたね。離婚はもう決まったとしても、最後に妻に自分のダメだったところを聞きたかったので、『離婚前に、最後に一度だけ話し合えませんか?』とメールをしたんです。そしたら『顔を見るのが気持ち悪いので無理』と返信がありました。
その日のうちに離婚届けを書き、近くで暮らしている友人に証人になってもらいすぐに提出しました。母親と姉たちには現状は伝えていたので、事後報告でしたが、みんな反対しませんでした」
話し合いの時間を持てなかったことで子どもの親権や財産分与などもメールで。「引っ越しをするので数日、昼間外出してください」との連絡を受け、その間に妻は出ていった。
「離婚後の寂しさなんてありませんでしたね。それよりも早く目の前から消えてほしいとさえ思っていました。親権についてメールしたときに妻は『あなたでしょう』とあっさり子どもを手放した。この女性を選んだのは間違いだったんです」
剛志さんは3年前から元同僚の関係だった女性と付き合うように。付き合う前からいつでも味方でいてくれた人で付き合ってからも支えてくれていた。そんな彼女から「結婚したい」と逆プロポーズを受けたとき、咄嗟に「無理だ」と思った。
「彼女には言えませんが、彼女の勝気な性格で頼りになるところが付き合っていた頃の妻によく似ているのです。私は結局なんで口を聞いてもらえず、気持ち悪いと言われて離婚に至ったのか、その理由を知りません。だから、自分の悪かったところが想像でしかできません。そんな過去の離婚を学習していない男、いずれ同じようになって嫌われますよ。結婚自体を無理だと思ったのと同時に、彼女を失くすきっかけを作りたくないとも思いました」
“一緒に暮らすと自分のことを絶対に嫌いになる”という不安な気持ちを隠し、「結婚できないけど側にいてほしい」と返事をしたところ、彼女は一度離れていってしまう。その彼女をつなぎとめるだけに、結果、結婚を承諾したという。
「彼女を失くすきっかけになるからと結婚を拒否したのに、その前に彼女を失うなら結婚しかないと思いました。幸い、息子には母親の印象があまり残っていなくて彼女にも懐いてくれていたので、喜んでくれました。
彼女には何か私に気に入らないところがあればすぐに伝えてほしいと、前の離婚内容もすべて伝えています。せめて今自分ができる最大のことをし続けていくつもりです」
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男性は非言語コミュニケーション(態度や表情など)が女性より下手だといわれている。非言語コミュニケーションとは、要するに“察する”力に男女の違いがあるということ。その“察する”力の違いから、揉めてしまう夫婦を取材でたくさん見てきた。パートナーに無視をされている男性は愛想を尽かされる前に、何が相手の沸点になったのか、言葉だけでなく非言語の部分をじっくり観察してみることをおすすめしたい。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。