写真:林ひろし

牧師の家庭に生まれ、結婚して牧師の妻となり、自らも牧師になったミツコさん。夫亡き後は、協力牧師をしながら、ひとりで年金生活を送っている。毎月の生活費は年金7万円がメイン。経済的に余裕のある生活ではないが、お金がないからこそ感じる喜びがあるという。そんなミツコさんの著書『74歳、ないのはお金だけ。あとは全部そろってる』から、明るいひとり老後を送るコツをご紹介します。

いざというときのお金について

お金に頼る気持ちは、元々ありません。頼るのは神様だけ。どうしようもなくなったら、それが天に召されるとき。神様への圧倒的な信頼があるから、未来への不安もありません。

いざというときのために貯めているお金は、自分のお葬式代として少しの額です。ときどき娘から「家の更新代にどうしても必要なので、3万円貸してほしい」なんて頼まれると、「返してくれるなら」とその中から貸すこともあります。ちゃんと返してもらえるので、減ることはありません。自分では特に使うことはないです。

死んだ後、天国にお金は持っていけません。何も残さずこの世を去るつもりです。子どもたちに残すという発想もありません。子どもたちは子どもたちで、ちゃんとやっていけるでしょう。

クリスチャンのお葬式は質素なので、お金がかかりません。夫のときも、17万円くらいでした。葬儀は自分たちの教会で執り行いました。キリスト教において、死は悲しむべきことではなく、神の国に旅立つ喜ばしいこと。参列者全員で賛美歌を歌い、それぞれにひと言ずつ夫との思い出を語ってもらいました。心に残る、とてもよい式だったと思っています。

また、火葬代、棺代などがかかっていません。というのも、夫と二人で若いときに、医大の「献体の会」に申し込んであったからです。クリスチャンにとって、死は永い眠りにつくときであり、遺体への執着はありません。死後、自分の体が少しでも医学のお役に立てれば、という気持ちから。子どもたちも、もちろんこのことを前もって知っており、納得していました。

夫が亡くなったとき、2日後に賛美礼拝をした後で遺体を引き取ってもらいました。医大での解剖後、火葬されて遺骨が戻ってきました。遺骨は1年分まとめて、遺骨返還式があってその後で戻されるようで、夫の場合は戻ってきたのは1年後くらいでした。遺骨は夫の両親の墓に納めました。

葬儀への希望もありません。夫は「自分が死んだ後は残された人の気持ちが大切」と、こうしてほしいということはほとんど言いませんでした。私も同じ気持ちです。家族が自由に見送ってくれたら、その後は忘れられてもいいと思っています。

まとまったお金がいるといえば、家電製品の買い替えですが、少しでも長く使えるよう、可能なかぎり、丁寧に扱っています。不思議と長くもってくれます。それでも、いざというときは分割払いで購入し、毎月少しずつ返していくことになるでしょう。家電といっても、大きくお金がかかるのはエアコン、洗濯機、冷蔵庫くらいでしょうか。まだしばらくは大丈夫だろうと思います。

こんなこともありました。テレビが壊れてしまったので、いろいろ調べて3万円出せば買えるかなとわかって、孫のひとりに相談しました。孫の友達が電気屋さんに就職したので、そのお店ならいくらで買えるか聞いてもらおうかと。

そうしたら、娘たちと孫たちで、テレビを買ってくれたのです。余計なことを言って悪かったなと思って、「そんなつもりはなかったのよ」と言ったら、「わかっているよ。でも、みんなでお金を出し合ったから、ひとり分は大したことないから、大丈夫だよ」と言ってくれて……。おもいがけないサプライズをありがたく受け取ることにしました。

歳を重ねると心配になるのは、病気になったときにかかるお金です。だから、健康を維持するのが一番の節約だと思っています。夫を含め、多くの人を見てきた実感です。そのために、体のメンテナンスには気を配っています。
国の高額療養費の制度のことも調べてみたら、治療費が高額になっても後で戻ってくるとわかり、それほど心配しなくて大丈夫だとわかりました(現在は、支払いの際にすでに安くなっています)。老後の心配があまりないのは、牧師としての活動から、介護や福祉の現場を知っていることもあるかもしれません。

また、国民健康保険に申請すれば送ってもらえる、はり、灸、マッサージ・指圧施術割引券を活用し、1、2か月に一度指圧に行っています。1000円払って割引券を出せば、30分の施術が受けられます。

こういう情報は、私が月1回参加している「介護者の会」の人たちから教えてもらうことも多いです。ここでは、医療や介護、福祉などの情報がたくさん得られて、とても助かっています。

* * *

『74歳、ないのはお金だけ。あとは全部そろってる』(牧師ミツコ 著)
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ミツコ
牧師。1946年生まれ。8人きょうだいの5番目として牧師家庭に育ち、自身も牧師を志す。神学系の大学を卒業後、同じく牧師の夫と結婚。夫婦二人三脚で47年間教会を運営。その傍ら、娘4人を育てる。娘たちはいずれも早くに独立し、孫が16人。長年闘病していた夫を2016年に見送る。その後は住まいを引き払い、単身公営住宅に。現在も協力牧師として、週2回教会につとめ、日曜礼拝で説教することも。牧師は富とは無縁の仕事。お金がないならないで、工夫をして楽しく暮らす。過去を振り返ったり将来を心配したりせず、「今ここ」に心をこめて生きるのを大切に。


 

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