我が子や孫は「いい人生」を歩んでほしいと思う親・祖父母は多い。では、いい人生とは何だろうか。それは、自由であり選択肢が多い人生ではないだろうか。
しかし、現在は格差社会もグローバル化も進んでいる。正解がない時代に、子供に何を教えればいいのか。そこで、注目なのは、算数・数学だ。数学的思考は、世界共通で使えると同時に、極めていけば哲学にもつながっていく。
しかし、算数は苦手教科の筆頭にあることが多い。得手不得手によって学力に差が出やすく、親自身が苦手意識を持っていることもある。
「算数ができれば将来の選択肢は広がります」と言うのは、柴田希世美さんだ。柴田さんは、3児の母であり、2人の息子は東京大学に進学している。また、その長男は小学生のときに、算数オリンピックで金メダルを獲得。ここでは、柴田さんに「算数が得意になる子供に育てる」方法と秘訣を伺った。
勉強と遊びの境目をなくすことから始まる
――共働き時代になり、幼い孫を預かることが増えたという人も多いです。算数ができる子供になるために、どのように接したらいいのでしょうか?
苦手意識を持たせないことです。自然に数や数字に興味を持つような会話をするといいですよ。家の中には、さまざまな数字がありますよね。時計やカレンダーもそうですし、家電のデジタル表示など、生活には数字があふれています。「今日は何日かな?」「今は何時かな?」「お風呂の温度は何度かな?」など、子供が数字に興味を持つように、意識しながらコミュニケーションをするといいと思いますよ。
また、絵本を読むときも、「ここにくまさんが5匹いるね。2匹遊びに行ったら、何匹になるかな?」など、お話をアレンジして話しかけるのもいいでしょう。それに対して、子供がどんな答えを言っても、その返事のいいところを見つけて、「その通りだね」「そんな考え方もあるね」「おもしろいね」などとほめるのです。
私は、「子供を上手にほめることで、その才能は無限に伸びていく」と確信しています。ほめられるとうれしくなりますから、子供は数字に興味を持つだけでなく、想像力がどんどん広がっていきますよ。
――とはいえ、算数……大人自身にも数字に拒否反応があることがあります。
おそらく、自然に算数を意識していると思いますよ。例えば、何かを買う時に「どっちが多いかな」とか、「何個入っているだろうか」などと、考えますよね。それを子供と一緒に買い物に行ったときに、話しかけてみてください。どっちが多いよとか、大きいよとかきっといきいきと答えてくれるはずですよ。
このやりとりは、日常会話であり勉強ではありません。でも算数の能力を育むことができるのです。このように、遊びと勉強の境界線をなくし、苦手意識を植え付けないことが、子供の学力を伸ばすためには大切です。
――なるほど。算数は日常の中にたくさんありますね。これまでは数や量の能力の育み方でしたが、図形のセンスも求められますよね。特に中学受験は図形問題が難化しています。
図形や空間認識のひらめきやセンスを育てるためには、積み木遊びが最適です。私も幼い子供たちと、一緒に遊んでいました。積み木遊びのコツは、「お母さんと同じものを作ってみようか」とお手本を見せること。すると、子供は「やってみよう」と思うようになるんですね。
【能力を育む積み木選びのポイントと、その遊ばせ方とは? 次のページに続きます】