我が子や孫は「いい人生」を歩んでほしいと思う親・祖父母は多い。では、いい人生とは何だろうか。それは、自由であり選択肢が多い人生ではないだろうか。
しかし、現在は格差社会もグローバル化も進んでいる。正解がない時代に、子供に何を教えればいいのか。そこで、注目なのは、算数・数学だ。数学的思考は、世界共通で使えると同時に、極めていけば哲学にもつながっていく。
「算数ができれば将来の選択肢は広がります」と言うのは、柴田希世美さん。2人の息子が東京大学に合格した柴田さんに、【前編】では、算数が得意な子供に育てる方法を伺った。ここでは「学力を伸ばすほめかた」について、お話しいただいた。
「ホメすぎたらその子は弱くなる」のか?
――柴田さんは、「子供を上手にほめることで、その才能は無限に伸びていく」という理念を持っています。しかし「ほめ育った子は、学校や社会の荒波にさらされたときに弱くなる」という意見もあります。
私自身もそう思ったことはありました。でも、私は自分の目で子供たちをしっかりと見て、その結果感じたことを言葉にしている。それはまっすぐに子供たちの心に響き、ほめることで心が強くなっていくと感じています。
それに、子供の成長過程は、自己研鑽(じこけんさん)の積み重ねです。勉強、スポーツ、芸術……いずれも、目標に向かって能力を高めていく。これを繰り返しているので、心が弱くなることはないと考えています。
感情的に怒られたり、叱られたりしても、乗り越えられるのは、自ら課した試練に挑み、その過程で多角的に考える能力が身についているから。私の子供たちもそうですが、周囲のお子さんたちも、中学生くらいになると、親が何も言わなくても、勉強したりスポーツをしたり、友達と遊んだりして、自分の世界を広げて行っています。
――具体的なほめ方のコツを教えてください。
日常生活の中でも、その子が何かしたら、上手下手ではなく、「〇〇がいいね」などと、具体的にほめることです。例えば、絵を見たら「この木が大きくて生き生きとしているね」といったほめ方です。他人と比べず、その子の能力やセンスが一番光っているところや、頑張った所をほめます。
点数が悪いときは、「できないところがわかったね。次は挽回できるよ」と言います。そして、検定試験に不合格だったら「今回結果は出なくても今まで頑張ったことに意味があるよ。直しをして2回頭に入れることが出来るよ」などと声掛けをします。全てはその子の経験であり、未来につながっていると考えて声掛けをすると自然に「ほめること」につながっていくのです。
――とはいえ、ほめるところがない子もいるのですが……。
子供には、絶対にほめるところがあります。「お母さんが起こして呼んだら、すぐに来てくれて偉いね」、「ごはんを全部食べて、お皿がピッカピカになってうれしいわ」、食べ残しをしても「好きなものは全部食べたね。偉かったね。苦手なモノも少し食べれるようになったね」など。
子供は、周囲の大人……特にお母さんにホメてもらえると、もっと頑張ろうという気持ちになります。そうすると前向きなエネルギーになっていきます。すると、笑顔がお互いに増えてくるんですよ。
お互いに心が安定することが、やはり学力にも結び付いていきます。落ち着いて学ぶ環境があれば、子供も様々なことにチャレンジしようと思いますし、できなかったことができるようになる喜びを学ぶのです。
【人生にプラスになる試練は、各種の検定。次のページに続きます】