高齢化が進むとともに、認知症や障害などにより判断能力が低下した時の「資産」と「生活」をどう守るかが大きな課題になっています。判断能力が低下した時のリスクをカバーする制度が「成年後見制度」です。

成年後見人は「家族がなるもの」「身内が面倒を見る制度」と思われがちですが、実際には必ずしもそうとは限りません。今回は、「家族が成年後見人になるべきか?」というテーマで、制度の基本からメリット・デメリット、手続き、代替手段までを見ていきましょう。

100歳社会を笑顔で過ごすためのライフプラン、LIFEBOOK(R)を提唱する独立系ファイナンシャルプランナー藤原未来がわかりやすく解説します。

成年後見人に「家族」はなれるのか? 制度の基本から解説

成年後見制度は、判断能力が低下した時に、その人の資産や生活を法的に支援する仕組みです。財産管理や契約行為などを後見人が代行・補助することで、本人の資産にまつわる権利と生活を守ります。結論から言えば、家族が成年後見人になることは可能です。

ただし「家族だから当然なれる」という制度ではなく、家庭裁判所が総合的に判断して選任します。

親・子・兄弟姉妹など、誰がなれる? 家庭裁判所の判断基準とは

成年後見人になれるのは、親・子・兄弟姉妹などの親族とは限りません。親族以外の第三者(弁護士・司法書士・社会福祉士など)も候補となります。家庭裁判所は次の点について重視します。

・本人の利益を最優先できるか
・財産管理を適切に行える能力があるか
・利害関係や対立関係がないか
・継続的に責任を果たせるか

血縁関係そのものよりも「後見人として適格かどうか」が判断基準になります。

「なれない」とされるケースの理由とその背景

家族であっても、以下のような場合は後見人に選ばれない可能性があります。

・本人と財産を巡る争いがある
・過去に金銭トラブルや使い込みの疑いがある
・多額の借金や破産歴がある
・本人とは疎遠で実状を把握していない

成年後見制度は「財産を守る制度」ですので、不正やトラブルのリスクが少しでもある場合、家庭裁判所は慎重な判断をします。

家族が選ばれやすいケースと選ばれにくい条件

家族が後見人として選ばれやすいのは、次のようなケースです。

・本人と同居していたり、近くに住んでいたりして日常生活を支えている
・財産関係がシンプルで争う要因がない
・他の親族も後見人に就任することに同意している

一方で、相続人が複数いて対立する可能性がある場合や、財産規模が大きく管理が複雑である場合などは、第三者が後見人に選任されやすくなります。

家族が後見人になるメリットとデメリット

家族が後見人になることには、大きなメリットがある一方で、見落としがちな負担やリスクもあります。メリットとデメリットを理解した上で判断することが重要です。

信頼関係・本人の希望を尊重できるのが最大の利点

家族が後見人になる最大のメリットは、本人との信頼関係がすでに築かれていることです。日頃の生活パターンや価値観を理解している家族であれば、本人の気持ちや希望を尊重した支援がしやすくなります。

また、後見人に支払う報酬についても、専門職後見人と比べて経済的な負担を抑えられる点は、大きなメリットの一つといえるでしょう。

親族間トラブルや金銭的負担などのデメリットも

一方で、家族後見人は次のような問題を抱えやすいのも事実です。

・親族間で「使い込みでは?」という疑念が生じやすい
・後見業務が長期化することでの精神的負担が大きい
・書類の作成・報告義務が想像以上に重い実務負担となる

善意で引き受けた後見が、結果的に家族関係を悪化させてしまうこともあります。

後見人が家族の場合の報酬と支出の実状

家族が後見人になっても、家庭裁判所の判断で報酬が認められる場合があります。ただし、無報酬や低額となるケースが多いのが現実です。一方で、交通費や事務費などの実費は本人の財産から支出できますが、使途や金額には厳格な管理が必要となります。

家族が後見人になるための手続きと流れ

成年後見人になるには、一定の法的手続きを踏む必要があり、感情だけで進められるものではありません。

申立書の書き方と必要書類

成年後見の申立ては、本人が住んでいる地域を管轄する家庭裁判所に対して行なうのが一般的です。主な必要書類は以下のとおりです。

後見開始申立書
・医師の診断書
戸籍謄本・住民票
・財産目録・収支状況報告書

申立書には、後見人候補者として自分を推薦する理由を具体的に記載します。

家庭裁判所での審理と決定の流れ

申立て後、家庭裁判所では提出された書類の確認や、関係者への面接などが行なわれます。必要に応じて、本人の意思を確認する場が設けられることもあります。その内容を踏まえて、後見を開始するかどうか、また誰を後見人とするかが決められます。希望した家族が必ず選ばれるわけではない点に注意が必要です。

手続きにかかる費用と期間の目安

費用は数万円〜10万円程度が一般的ですが、本人の判断能力について医師による鑑定が必要と判断された場合には、鑑定費用として別途数万円程度がかかることがあります。期間は、申立てから決定までおおむね1〜3か月が目安です。

「家族がいない」「なれない」場合はどうする?

すべての家庭で「家族後見」が選択できるわけではありません。その場合の代替手段も知っておくことが大切です。

第三者後見人(専門職)や市長申し立ての活用

家族がいない、または家族では不適格な場合は、専門職後見人が選任されます。また、本人や親族が申立てできない場合、市区町村長が申立てを行なう「市長申立て」制度もあります。

後見監督人との違いや役割分担

後見監督人は、後見人が行なう財産管理や事務手続きが適切に行われているかを確認・監督する役割を担います。ただし、後見監督人は必ず選任されるものではなく、家庭裁判所が必要と判断した場合にのみ付けられます。家族が後見人となり、あわせて第三者の後見監督人が選任されることで、不正の防止と家族の安心を両立させるケースも増えています。

信頼できる成年後見人を選ぶポイント

重要なのは「誰が後見人になるか」よりも、「本人の利益がきちんと守られるか」という点です。成年後見制度の仕組みを正しく理解し、必要に応じて専門家の意見を取り入れることが、後悔しない選択につながります。

成年後見制度と家族信託の違いと併用可能性

近年、成年後見制度と並んで注目されているのが「家族信託」です。

「成年後見制度」と「家族信託」の基本的な違い

成年後見は家庭裁判所の監督下で行なう制度ですが、家族信託は個別の契約による私的な財産管理です。後見は「守る制度」、信託は「活かす制度」と表現されることもあります。

費用・柔軟性・信頼性の比較

以下のような違いがあります。

<図表1>成年後見制度と家族信託の主な違い

(株式会社SMILELIFE projectにて作成)

図表のとおり、家族信託は財産管理の自由度が高く、裁判所の関与がないことから、柔軟な運用が可能な制度といえます。

費用面については、家族信託では契約時に専門家への依頼費用がかかる一方、成年後見制度では、後見人や後見監督人の報酬が継続的に発生する場合があります。そのため、契約内容や利用期間によって負担は異なり、一概にどちらが有利とは言えません。

成年後見制度は家庭裁判所の監督のもとで運用されるため、公的な信頼性が高い制度です。一方、家族信託は契約内容や運用方法によって信頼性に差が生じる点に注意が必要です。

両制度の併用で備えを万全にする方法

判断能力があるうちに家族信託を設計し、将来的に成年後見を補完的に利用することで、より万全な備えが可能になります。

まとめ

成年後見人に家族がなることは可能ですが「誰が一番ふさわしいか」を冷静に考えることが何より重要です。家族だからこそできる支援もあれば、家族だからこそ起きる問題もあります。成年後見制度を正しく理解し、本人にとって最善の選択ができるように備えておきましょう。

さまざまな金融にまつわる商品が出回っている世の中だけに、あなたの味方になって守ってくれる相談相手を持つことが必要な時代になっています。ご自身のライフプランを考える時には、生命保険や金融商品の販売をせずに中立的な立場からコンサルティングに徹する独立系のファイナンシャルプランナーへの相談をお勧めします。

●構成・編集/京都メディアライン(HP:https://kyotomedialine.com FB:https://www.facebook.com/kyotomedialine/

●取材協力/藤原未来(ふじわらみき)

株式会社SMILELIFE project 代表取締役、1級ファイナンシャルプランニング技能士。2017年9月株式会社SMILELIFE projectを設立。100歳社会の到来を前提とした個人向けトータルライフプランニングサービス「LIFEBOOK®サービス」をスタート。米国モデルをベースとした最先端のFPノウハウとアドバイザートレーニングプログラムを用い、金融・保険商品を販売しないコンサルティングフィーに特化した独立フランチャイズアドバイザー制度を確立することにより、「日本人の新しい働き方、新しい生き方」をプロデュースすることを事業の目的とする。

株式会社SMILELIFE project(https://www.smilelife-project.com

 

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