孤独死・孤立死とは、家族や親族、近所とのコミュニケーションや付き合いが一切ない人が何らかの原因で誰にも看取られずに、お一人で亡くなることを言います。どのようなことが原因なのでしょうか。詳しく解説していきます。
目次
孤独死の原因
孤独死に伴うトラブル
孤独死しやすい人の特徴
まとめ
孤独死の原因
孤独死・孤立死の主な原因は、一人暮らし世帯の増加です。若者と高齢者のどちらにもいえることですが、近年は一人暮らし世帯が増加しており、全世帯に対する一人暮らし世帯の割合は2015年時点で約35%になっています。
孤独死・孤立死とは、家族や親族、近所とのコミュニケーションや付き合いが一切ない人が何らかの原因で誰にも看取られずに、お一人で亡くなること。一人暮らしが少なくなればお一人で亡くなることがないため、孤独死・孤立死は減ると言えるでしょう。
高齢者の場合
高齢化社会が進むにつれ、高齢者の孤独死も年々増え続けています。原因は高齢者の単身世帯の増加や貧困問題など、一言で説明できるものではありません。2021年に厚生労働省が行った調査によると、65歳以上の単身世帯は年々増え続けており、2010年と比べて65歳以上の単身世帯数は約1.5倍に増えています。
なぜ一人暮らしの高齢者は年々増え続けているのか? その理由の一つとして、生涯未婚率が増加している点が挙げられます。2017年に国立社会保障・人口問題研究所が調査した生涯未婚率を表したグラフによると、2000年以降の生涯未婚率が飛躍的に伸びていることが分かります。
つまり、高齢者の一人暮らしが増えている理由として、「そもそも結婚しない人が増えている」ということが挙げられます。では、なぜ生涯を通して結婚しない人が増えているのでしょうか? その背景として推測できるのは、主に以下の2つです。
1.バブル崩壊後の経済的な困窮
2.女性の社会進出
生涯未婚率が急激に上昇し始めたのは1990~2000年に差し掛かるところ。1990年代初頭のバブル崩壊により日本全体が不景気だったという背景があります。それにより経済的な格差が深刻化し、結婚できない人が増えたという見方ができるでしょう。
また、2005年以降からは女性の未婚率が増加している点にも注目です。これは、女性の社会進出が活発化したことによるものと推測できます。女性が働くことが一般化した近年では、女性の経済的な自立がしやすくなったために結婚する必要がなくなったと感じる人が増えたと考えられます。
若者の場合
近年、孤独死は高齢者の問題だけではなくなってきています。進学や就職の為に、10代で故郷を離れ、30代で結婚するまで一人暮らしを経験する、という方も多いのではないでしょうか。この一人暮らしの期間に突如体調が急変し、誰にも見つけてもらえないまま一人部屋の中でひっそり亡くなってしまう、そんな若者が増加しているのです。
若者の孤独死の原因は、他の年代の孤独死の原因と変わりません。人間関係が希薄である事や、あまり家族と連絡を取り合わないコミュニケーション不足の問題があります。特に近年の若者は「人との関わり」をあまり重要視しない傾向にあるために、人間関係が希薄になっていっていることも要因の一つです。
上記の他、若者の貧困問題も孤独死の原因の一つになっています。2019年時点での完全失業者は全国でおよそ162万人。そのうち、若者と分類できる25~34歳は37万人にのぼります。
貧困による栄養の偏りから健康状態が悪化したり、社会保険・家賃・光熱費などの支払いに追われ、病院代を支払えないから病院には行かないという負の連鎖も、孤独死の増加に影響しています。
孤独死に伴うトラブル
「孤独死」の後、発見されるまでの日数は男女あわせて平均17日と言われています。特に男性の方が発見に時間がかかるという統計結果も出ています。
ここでは、孤独死に伴うトラブルについて幾つかのケースをご紹介しましょう。
ご遺体のお引き取りにまつわるトラブル
検死によって身元がすぐ判明したら、すぐに死体検案書と遺体を遺族に渡すことができます。その際、警察が公的書類や契約書などから遺族関係を調べ、親子、兄弟、そして親戚などへ血縁関係の近い順に連絡。すぐに身元が分からない場合はDNA鑑定なども行います。
身元がすぐに判別しない場合、遺体は専用の保管庫にて保管します。保管料は一泊2,000円程度が相場で、遺族に請求されます。
孤独死した遺体は引き取ってすぐに現地で火葬することが多く、お骨の状態で帰郷することが一般的です。公営の火葬施設を使用した場合、住民登録している自治体の方が費用が安く、他の地域に搬入すると割高になるという事情もあります。
ご遺体を搬送する場合は一般車両で行うことができず霊柩車を手配する必要がありますが、遠距離になるとその費用がかなりかさみます。
しかし、孤独死の場合、親族が見つからないケースも多く、さらに親族が見つかっても引き取り拒否をされることもあります。
家のトラブル
死後日数が経過すると、特有のにおいが発生するため、特殊清掃をする必要が出てきます。この時にかかった費用は、親族が負担することになります。
孤独死により遺体の発見が遅れ、特殊清掃が行われた場合、事故物件となり入居者に告知が必要となります(国土交通省の告知義務発生のガイドライン案より。正式発表は2021年9月を予定)。なお、孤独死(自然死、不慮の事故死に限る)でも、死亡時から日数が経たずに発見された場合は、自然死の扱いとなり、告知義務は発生しません。
孤独死しやすい人の特徴
3つの特徴が見受けられますので、ご紹介します。
1:高齢者でお一人住まいの方
持病があってリスクを抱えていらっしゃる方は、特に体調が急変した際の緊急対応がカギです。緊急連絡のシステムを使用できない場合、急変に対応できずそのまま回復できない恐れがあります。また、今後もこの高齢者単身世帯の割合は増加する見込みです(内閣府「平成29年版高齢社会白書」より)。
2:近所との付き合いが希薄な方
周囲とあまり関わりを持ちたくない方、持ちにくい方が増えています。統計でみても、半数以上が挨拶程度、もしくはほとんど付き合いがないという状況です。孤独死が発見されるきっかけは、音信不通による訪問が半数、家賃滞納や異臭による管理人の発見が半数近くとなっています(内閣府「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」2008年、日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会2020年より)。
3:高齢夫婦、一人暮らし高齢者といった、高齢者のみの世帯の方
一人暮らしの予備軍にあたる、高齢の夫婦のみ世帯も増加しています(厚生労働省「国民生活基礎調査」1980~2007より)。ご夫婦であれば、相互に支えあい非常時の対応も可能ですが、高齢になるにつれ、「お一人様」になるリスクも高まります。
まとめ
孤独死は、一人でいることから起こりがちな社会問題です。昔から存在していた問題ではありましたが、昨今は若い方でも「結婚はしない」「好きな仕事を長く続けたい」など、多様な選択肢の一つとして「一人」を選択することも普通になってきました。
しかし、孤独死の後に残されたご遺族の悲しみや周囲への負担などを思うと、未然に防ぐ対策が必要ではないでしょうか。
孤独死を防ぐ対策の一つは、日ごろから地域のコミュニティとの関わりを持つこと。その上でSNSなどを活用して相互に無事かどうか、健康状態に気を配り安全確認する体制などを検討すれば、「孤独死」「孤立死」の対策になるのではないかと思います。
●構成・編集/内藤知夏・末原美裕(京都メディアライン・https://kyotomedialine.com)
●取材協力/坂西 涼(さかにし りょう)
司法書士法人おおさか法務事務所 後見信託センター長/司法書士
東京・大阪を中心に、シニア向けに成年後見や家族信託、遺言などの法務を軸とした財産管理業務専門チームを結成するリーガルファームの、成年後見部門の役員司法書士。
「法人で後見人を務める」という長期に安定したサポートの提唱を草分け的存在としてスタート、
全国でも類をみない延べ450名以上の認知症関連のサポート実績がある。認知症の方々のリアルな生活と、多業種連携による社会的支援のニーズを、様々な機会で発信している。日経相続・事業承継セミナー、介護医療業界向けの研修会など、講師も多く担当。
司法書士法人おおさか法務事務所(http://olao.jp)