文 /市川雄一郎

投資は豊かな人生を送るためにある

誰にとっても、人生の目的は豊かで幸せに暮らすことであり、投資はそのために必要な人生の大切な営みのひとつです。お金は使ってはじめて価値を持ちます。読者の皆さんには、投資によってお金を増やし、豊かで幸せな人生を送ってほしい。これが本書に託した私の切なる願いです。
グローバルファイナンシャルスクール 校長 市川雄一郎

【教えその7】「いい人だ」と思った時ほど、その人を信用してはいけないと意識する。投資で利益を得たいのなら、自ら学び、知識を身につけること

金融機関の営業担当者が抱える事情

「次はいつ頃来ればいいかな?」

あなたは理髪店やヘアサロンに行った時、帰り際にこんなふうに聞いたことはありませんか?

こういうのを愚問と言います(ごめんなさい!)。「遅くとも1カ月後には」くらいの答えが返ってくるのが関の山で、「しばらくは大丈夫ですよ」などとはまず言わないでしょう。向こうも商売なので、早く来てもらいたいに決まっているからです。

かのバフェット氏も言っています。「髪を切ったほうがいいかを、理髪師に聞いてはいけない」と。

インターネット通販などはもっと露骨で、「入会金0円キャンペーン中、期限は○日まで!」とか「今なら送料無料+あなただけへの特典付き」といった宣伝メールが毎日のように飛んできます。

出ました、あなただけよ攻撃! 人の心理とは弱いものなので、このチャンスを逃すと二度とその特典が手に入らないような気にさせられてしまいます。大抵の場合、こうしたセールスキャンペーンはしょっちゅう開催されているのですが……。

これらは売り上げを伸ばすためのビジネス上のテクニック。別に騙しているわけではありません。買うか買わないか、今買うか後で買うかは、あくまでもあなた次第です。

では、ここで質問です。皆さんは証券会社や銀行のセールスパーソン、いわゆる営業担当者をどのように見ていますか? 金融知識は豊富だし、人当たりもいい。いつも親身になって話を聞いてくれる。しかも、相談料は取られない。とても頼もしい存在だと思っている人も多いのではないでしょうか。

でも、忘れてはいけません。金融機関の営業担当者も、仕事で金融商品を販売しているのです。そして、どの証券会社、どの銀行にも「今、売りたい商品」があり、社内では販売強化月間などを設定して、全国津々浦々の担当者にハッパをかけているのです。

私は、社内勉強会の講師として、こうした金融機関の本支店に出向くことも多いのですが、オフィスの壁に1人ひとりの成績を示す棒グラフを張り出しているところをよく見かけます。

働き方改革が叫ばれる今の時代も、営業現場の厳しさ、販売競争の激しさは昭和の昔と全く変わっていません。

ビジネスの常識をしっかりと理解しよう

金融機関といえども、営利目的の企業である以上、「売ってなんぼ」の世界なのです。マンション投資を専門に行う不動産販売会社も同様で、早く資金回収したいから、何よりも竣工したばかりの新築物件の販売に躍起になります。

この点は、派手なテレビCMを流して新製品キャンペーンを展開する食品メーカーや化粧品メーカーなどの事業会社と事情は同じ。どの業界にも「会社側が売りたい商品」というものが存在し、あの手この手でお客様に売り込もうとします。これはビジネスの常識であって、営利企業である以上、致し方のない現実なのです。

誤解しないでいただきたいのですが、私は何も金融機関が掲げる「顧客第一主義」や「お客様ファースト」が噓だと言っているわけでありません。あなたの担当者も決して、強引に売りたい商品だけを売りつけているわけではないと信じます。

ただ、騙されやすい人のところでも言いましたが、「いい人ほど怖いものはない」と思ってください。「私には人を見る目があるのだ」などと過信してはいけません。金融機関で「この人はいい人だ」と思えるような担当者は、たいてい真面目です。であるがゆえに、仕事に対しても真面目に取り組もうとするあまり、会社が勧めたい商品を熱心に売ろうとするかもしれないからです。

少なくとも確かなことは、「営業担当者は決して100パーセントあなたの立場に立って営業活動をしているわけではない」ということ。彼ら彼女たちはあなた専属の投資顧問でもなければ、投資の何たるかを教えてくれる指南役でもないのです。

さらに言ってしまえば、私の見る限り、営業担当者の中には本当に金融知識が豊富なのか、疑わしい人がいるのも事実です。とくに銀行系には、取扱商品が投信などに限られていることもあって、金融や投資に関する全般的な知識レベルが高いとは言い切れない担当者も中には散見されます。自分たちの取り扱う商品を売るのに手一杯で、深く勉強する余裕がないのが実情なのでしょう。こうした実態があることは、一言、申し添えておきます。

要するに、彼ら彼女たちは「投資の先生」ではありません。もし勧められた商品に疑問を感じるような場合には、別の会社の営業担当者に“セカンドオピニオン”を聞いてみる方法もあるでしょう。

「売りたいものを売る」のがビジネスの常識であることをよくよく理解して、ほどよい距離感で上手に付き合うことが大切です。


市川雄一郎
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP(R)。MBA/経営学修士。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。
テレビ、新聞、雑誌等のメディア活動経験も豊富。
最新の著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え」(日本経済新聞出版)がある。
グローバルファイナンシャルスクール(GFS)
公式サイト:https://gfs-official.com/
体験版講座:https://toushi-up.com/

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※本記事は『投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え(日本経済新聞出版)』より抜粋して掲載しています。

 

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