文 /市川雄一郎

投資は豊かな人生を送るためにある

誰にとっても、人生の目的は豊かで幸せに暮らすことであり、投資はそのために必要な人生の大切な営みのひとつです。お金は使ってはじめて価値を持ちます。読者の皆さんには、投資によってお金を増やし、豊かで幸せな人生を送ってほしい。これが本書に託した私の切なる願いです。
グローバルファイナンシャルスクール 校長 市川雄一郎

【教えその3】予想するのではなく、事実を見極めよう

過去の「事実」がわかれば先のことも見える

投資に「予想」はつきものです。そして予想に「外れ」はつきものです。投資先の候補企業の中から、将来どれくらい成長するかを予想して、投資先を決め、投資を実行します。でも、予想というのは、当たったり、外れたりします。当たればいいのですが、外れたら大変。予想を外さない方法があれば、誰だって知りたいと思うでしょう。果たしてそんな方法はあるのでしょうか?

答えは「イエス」。実に簡単なことです。はじめから予想などしなければいいのです。予想しなければ、外れることはないという理屈です。「バカを言うな。予想しないでどうやって投資するんだ。それじゃあ、それこそ投機じゃないか」と読者に怒られそうですね。

ちょっと視点を変えてみましょう。あなたが今から24時間、何も食べないとすると、どうなるでしょうか? 

24時間後には「おなかが空いた、何か食べたい!」となることは容易に想像できます。でもそれは、おなかが空くことを「予想」しているのではなくて、過去の経験からおなかが空くという「事実」を知っているから、そう考えるのです。

これを投資に当てはめて考えてみましょう。一番大切なのは、「事実に基づいて投資する」こと。

例えば、売り上げもない、将来的に利益を上げる見込みもない。そんな企業に誰も投資をしたいとは思いませんよね。その一方で、今はまだ赤字だけれども、将来的に必ず大きな利益を生むと見込まれる企業は存在します。IPO(株式公開)したばかりの新興ベンチャーには赤字企業が多い傾向があります。赤字には理由があって、将来をにらんだ先行投資によって今は赤字なのです。成長企業の登竜門とされる東証マザーズやJASDAQ市場(2022年4月から市場区分が変更になる予定です)には、数多くの〝将来性が期待される赤字企業〞が上場しています。

「予想」するのではなく、「事実」を見極める

実際、今の大企業の中にも、赤字続きの小さな企業から始まった会社がたくさんあります。いまや全世界を牛耳るGAFAはどこも、似たようなスタートアップ企業から成長していったのです。前述のアマゾン・ドットコムはその典型例。同社は共同創設者で最高経営責任者(CEO)のジェフ・ベゾス氏が小さなガレージにだるまストーブを1台置いてスタートしました。スティーブ・ジョブズ氏のアップル(Apple)も、マーク・ザッカーバーグ氏のフェイスブック(Facebook)も、ビル・ゲイツ氏のマイクロソフト(Microsoft)も、グーグル(google)やヒューレット・パッカード(HewlettPackard)などもそうした「ガラージュ(ガレージ)ベンチャー」でした。

今の日本を代表するような大企業も同様です。パナソニックも、ソニーやホンダも、京セラや日本電産も、最初は小さな町工場でした。100円ショップ最大手のダイソー(大創産業)の創業者、矢野博丈氏に至っては、故郷の広島でハマチの養殖事業に失敗して東京に夜逃げをし、そこから「100円均一」の生活雑貨をトラックに積み込み、スーパーマーケットの店頭などで実演販売するところから身を起こしたそうです。周囲の人から「そんな安かろう悪かろうのビジネスなんて、絶対に失敗するから止めろ」と諫められても信念を貫き、お客様の声に真摯に耳を傾け、商品の改良を重ね、現在のダイソーチェーンを一代で築き上げました。いまや日本の「百均」は値段の安さに見合わぬ品質の高さで外国人観光客にも大人気で、インバウンド景気の一翼を担っているほどです。

こうした成長企業は皆、時代の流れを読み、先を見据えた経営戦略を立て、「こんなモノがあったらいいな」という人々のニーズを的確につかんで、魅力的な製品やサービスを開発・提供し続けてきたのです。

前述の「おなかが空く話」に当てはめれば、身近にある消費者ニーズを当て推量で「予想」したのではなく、試行錯誤と検証作業を積み重ね、「事実」に基づいてヒット商品やビジネスモデルを創り上げていったのです。

投資を行う際に大事なのは、こうした「事実を創れる企業」を見極めること。そして、短期ではなく、長期的な視点で投資を行うことです。

健康な人でもときに体調を崩すことがあるように、企業も一時的に業績不振に陥ることだってあるし、将来のさらなる成長のために意図的・戦略的に赤字を出す場合もあります。だから、足下の業績や目先の利益水準ばかりに目を向けて一喜一憂するのではなく、長い目で見て成長を続ける企業、将来にわたって利益を着実に出せる企業に投資をしていくようにすればいいのです。

もちろん、「成長する企業を見極めて投資する」と言っても、言うは易くで、そう簡単な話ではありません。ですが、この基本的な投資スタンスを守っていれば、少なくとも痛い思いをする可能性、大損するリスクをぐっと小さくできることは確かです。


市川雄一郎
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP(R)。MBA/経営学修士。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。
テレビ、新聞、雑誌等のメディア活動経験も豊富。
最新の著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え」(日本経済新聞出版)がある。
グローバルファイナンシャルスクール(GFS)
公式サイト:https://gfs-official.com/
体験版講座:https://toushi-up.com/

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※本記事は『投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え(日本経済新聞出版)』より抜粋して掲載しています。

 

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