文 /市川雄一郎
投資は豊かな人生を送るためにある
誰にとっても、人生の目的は豊かで幸せに暮らすことであり、投資はそのために必要な人生の大切な営みのひとつです。お金は使ってはじめて価値を持ちます。読者の皆さんには、投資によってお金を増やし、豊かで幸せな人生を送ってほしい。これが本書に託した私の切なる願いです。
グローバルファイナンシャルスクール 校長 市川雄一郎
【教えその6】偶然「勝った」人のことを正しいと思ってはいけない!
「偶然」は「必然」ではありえない
皆さん、「じゃんけん」をしたことはありますよね。子どもの頃はもちろん、大人になった今だって、誰かを選んだり、順番を決めたりするのに、時にはじゃんけんをする機会があると思います。じゃんけんをすれば、必ず勝者が決まります。仮に1000人の大集団でじゃんけん大会をしても、誰かが勝ち続け、最後に1人だけが優勝します。
さて、この優勝者はどうやって勝ち抜くことができたのでしょうか?
来る日も来る日も猛練習をして「じゃんけん力」を磨き、実力で優勝したのでしょうか?
まさか、そんなことはありませんよね。じゃんけんに勝ち続けるノウハウなんてありません。最新の現代科学をもってしても、必勝理論を発見したり、確立したりすることは無理でしょう。読者の中に「一度もじゃんけんで負けたことがない」と豪語する人がいたら、お目にかかりたいものです。そのノウハウが本当だったら、ノーベル賞ものです。
何が言いたいかというと、じゃんけん大会の勝者は単に「運が良かった」だけ、たまたま勝てたに過ぎません。
1000人の中からたった1人だけ勝ち抜いたのですから、「わぉ、やったね!」と拍手喝采して祝福することはあるかもしれません。でも、「こんなスゴい人はいない。是非とも弟子入りしたい」と崇拝の念を抱く人はいるでしょうか?
いるわけがないですよね。だって、この人はたまたま勝っただけなのですから。そんなことは経験的に、誰にだってわかります。要するに、競馬で大穴を当てたケースと同様に、そこには「再現性」がないのです。
金融フェアでよく見る情景の真実とは
ところが、摩訶不思議なことに、投資の世界ではしばしば、この「じゃんけん大会の優勝者」に人々が群がり、称賛と崇拝の嵐が巻き起こります。資産運用フェアのような金融関係のイベントに行くと、その現場を目撃できるでしょう。来場者が群がっているブースは多くの場合、人の輪の真ん中で「投資の神様」などと呼ばれる方が講演しています。「100万円が短期間で1億円になった」といった話を見聞きすれば、投資家心理として、その大儲けした人を天才と思い込み、「この人の話は正しい」と信じてしまいがちになることは、理解できないではありません。
とはいえ、申し訳ありませんが、私はそうしたブースは素通りさせていただきます。なぜならば、その人が儲かったのはある一時点での、一過性の事実に過ぎないからです。ほとんどのお話は参考になりません。
確かに暗号資産(仮想通貨)やFX、あるいは株取引で莫大な利益を得た人はいます。全世界には何百万、何千万、あるいは何億人もの投資家がいるのですから、一時的に大儲けする人も、1000人のじゃんけん大会よりも数多く出現します。
ただし、その人は決して天才ではありませんし、勝ち続けていることもまずありません。「資産運用のプロ」であるファンドマネジャーも同じで、不敗のファンドマネジャーなど存在しません。
ゆえに、目の前に大儲けしたという投資家が現れたとしても、安易に信用しないことです。
仮にその人に特別のノウハウ(らしきもの)があると思ったら、あなた自身で分析・検証してみること。あなたが正しい知識を身につけていれば、恐らく、ほとんどの場合は法則性、再現性に「?」が付く、と気づかれるはずです。
大事なことは、「勝った人が正しい」と単純に考えずに、勝った人の言い分なり、ノウハウなりに再現性があるかどうかを「正しく知る」ことです。
市川雄一郎
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP(R)。MBA/経営学修士。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。
テレビ、新聞、雑誌等のメディア活動経験も豊富。
最新の著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え」(日本経済新聞出版)がある。
グローバルファイナンシャルスクール(GFS)
公式サイト:https://gfs-official.com/
体験版講座:https://toushi-up.com/
『投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え』
※本記事は『投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え(日本経済新聞出版)』より抜粋して掲載しています。