文 /市川雄一郎
投資は豊かな人生を送るためにある
誰にとっても、人生の目的は豊かで幸せに暮らすことであり、投資はそのために必要な人生の大切な営みのひとつです。お金は使ってはじめて価値を持ちます。読者の皆さんには、投資によってお金を増やし、豊かで幸せな人生を送ってほしい。これが本書に託した私の切なる願いです。
グローバルファイナンシャルスクール 校長 市川雄一郎
【教えその5】楽をして儲け続けられる方法など、世の中に存在しない!
一流のプロほど陰で努力をしている
多くの人は一生懸命汗水流して仕事をし、お金を稼いでいます。お金を稼ぐのは大変です。
どんな職業でも楽な仕事などありません。
「楽」という文字はラクと読み、送り仮名を振れば「たのしい」と読みます。もしもこの世に「楽をして儲けられる」仕組みが存在するのであれば、誰もがその楽な方法を見つけ出してお金を稼ぐようになり、結局はその仕組みでは儲からなくなります。
投資の世界も一緒です。「楽をして利益を得られる方法」があったとしても、それが続くことは絶対にありません。だからこそ、自分で勉強し、苦労しながら自分のやり方を見つけるのです。繰り返しになりますが、「楽に儲かる」といった類いの“おいしい話”に乗ってしまう人は知識がなく、とりわけ一発逆転ホームランを狙って失敗してしまうのです。
プロ野球選手は華やかな試合の陰で一生懸命に練習し、激しいポジション争いに勝ち抜いて、レギュラーの座を獲得します。そして、エラーをしたり、チャンスで三振したり、試合の中で数々の失敗を経験しながら成長して、ときに逆転満塁ホームランをかっ飛ばすことができるようになるのです。プロ野球選手で打率3割を打ったら、一流選手です。そんなトッププレーヤーでも、実際は10回に7回は失敗(凡退)しているのです。
投資で結果を出そうと思ったら、野球選手と同じように、毎日毎日、一生懸命に勉強し、一生懸命に知識をつけて、一生懸命に研究し、うまく行く方法を見つけ、一生懸命に投資を行う。これしかありません。
世の中を見渡せば、楽しく幸せに暮らしている人はたくさんいます。でも、そんな人たちも、仕事やお金を稼ぐ部分では決して楽はしていないものです。世界中の投資家の憧れの的であるウォーレン・バフェット氏やジム・ロジャーズ氏のような大物だって、若い時から苦労をして一生懸命に経済や投資の仕組みを勉強し、数多くの失敗を繰り返しながら知識を磨き、独自の投資ポリシーを確立して、今日の莫大な資産を築いたのです。
例えば、バフェット氏には数多くの逸話が知られていますが、その中にこんな話があります。米国がクレジット社会に移行し、アメリカン・エクスプレス(AmericanExpress:Amex、アメックス)が有望銘柄として脚光を浴びていた頃の逸話だったと記憶していますが、多くの投資資金がアメックスに向かうなかで、バフェット氏は、はじめは頑として投資しませんでした。その理由は「自分がわからない株(会社)には投資しない」。そこで、バフェット氏は近くのレストランに通い、多くの客がアメックスのカードで支払いを済ます姿を確認して、ようやく投資を決断したそうです。これは株式投資の最も大事な考え方のひとつと言っていいと思います。
年利13%で資金運用したある老婦人の投資術
もう10年以上前ですが、私自身もこれとよく似た、ある成功した投資家の実例を聞いたことがあります。その人は80歳を超えた老婦人なのですが、年利にして平均13%もの高利回りで手持ち資金を運用していたというのです。どんなやり方をしていたのか。
そのご婦人は近所のスーパーに買い物に行く度に、商品棚に目を向け、自分の目線の高さにある商品の名前やメーカー、価格などを詳しくチェックしてメモを取りました。目線の高さにある商品は売れ筋の人気商品や、販促キャンペーンをやっている期待の新製品であることが多いからです。
ご婦人は家に帰ると、新聞や雑誌などを調べ、「これは伸びそうだ」と一消費者である自分自身の分析・判断で投資する銘柄を決めていたそうです。
スゴい話だと思いました。日常の暮らしの中で、身近にある生の情報を自分なりに分析して投資する。投資のあるべき姿とは何か、まだファイナンシャルプランナーとして独立したばかりだった私は、今更ながらにこのご婦人に教えてもらったような気がしました。
最近は株・投信でも、FX(外国為替証拠金取引)でも、いろいろな「投資アプリ」が登場し、簡単なスマホの操作で誰でも手軽に投資ができるようになりました。初心者向けの質問に「イエス」「ノー」で答えていくと「あなたへのお勧め商品」を推薦してくれたり、「AI(人工知能)による精緻なデータ解析」を売り物に「最適な買い時、売り時」を指示してくれたりするアプリも登場しています。投資家の裾野を広げるという意味では貢献している面もあると思いますが、はっきり申し上げます。こうした投資アプリで利益が出続けることは絶対にありません。AIのおかげで楽に儲かるのであれば、もうとっくに皆が皆、大金持ちになっているでしょう。
確かに投資で大儲けする人は存在します。私もFX取引で大儲けして都心のタワーマンションに移り住んだ人を知っています。ですがその一方で、自己破産寸前まで追い詰められ、大切な自宅を売らざるを得なかった人も知っています。
一時的にうまくいっても、ずっと勝ち続けることは容易ではありません(私の経験で言えば、ほぼ不可能です)。
楽してお金をもらえる仕事など、世の中にはありません。投資も同じです。もっと言えば、投資は「楽をしたら儲からない」と考えてください。
市川雄一郎
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP(R)。MBA/経営学修士。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。
テレビ、新聞、雑誌等のメディア活動経験も豊富。
最新の著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え」(日本経済新聞出版)がある。
グローバルファイナンシャルスクール(GFS)
公式サイト:https://gfs-official.com/
体験版講座:https://toushi-up.com/
『投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え』
※本記事は『投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え(日本経済新聞出版)』より抜粋して掲載しています。