文 /市川雄一郎

投資は豊かな人生を送るためにある

誰にとっても、人生の目的は豊かで幸せに暮らすことであり、投資はそのために必要な人生の大切な営みのひとつです。お金は使ってはじめて価値を持ちます。読者の皆さんには、投資によってお金を増やし、豊かで幸せな人生を送ってほしい。これが本書に託した私の切なる願いです。
グローバルファイナンシャルスクール 校長 市川雄一郎

【教えその4】結果を出す人は、他人をむやみに信用しない。大切なお金は、自分の知識で守る

「あなただけ!」のうまい話などあり得ない

世の中には「騙されやすい人」がいます。これにはいくつかの類型があるように思えます。

最も多いのが「自分の知識が圧倒的に不足している人」です。知識がない、あるいは知識が足りないから、それっぽい話を聞くと、何の疑いも持たず、よく確かめもせずに聞いた情報を鵜呑みにしてしまうのです。また、「私には人を見る目がある」と思っている人も危険です。たしかに本当に悪い人はそんなにいるわけではありませんが、大事なことは、信用すべきは知識に基づく事実であるということです。

例えば、金融機関の営業担当者が熱心に勧める投資商品を、勧められるがままに「良さそうだな」と思って即断で購入した。ところが1年後、その商品が期待したようなパフォーマンスを上げられず、結果的に損失を出してしまった。読者の身近なところでも、日常的によく聞く失敗談だと思います。こんな時、損をした人は何と言うでしょうか。

「アイツに騙された。うまいことばかり言いやがって!」

大切なお金が減ってしまったのですからそう言いたくなる気持ちはわかりますが、この場合は決して「騙した」というわけではないでしょう。営業担当者の説明に不十分な点があったかもしれませんが、悪いのはよく検討もせずに買ったご本人です。知識武装ができていない人に限って、自分に十分な知識がないことを棚に上げて「騙された」と思ってしまうものです。

さらに悲惨なのは、詐欺話に引っかかるケースです。概して詐欺を行う人の風貌は、悪いことはしそうもない雰囲気の人が多いのも特徴です。そしてそういう人に話しを持ちかけられ、その人が知人を紹介するケースも多く、その結果として最近は怪しげな儲け話についつい乗っかり、大切なお金を失った人の話を聞くことが増えています。前述したように、今は異次元の超低金利時代。大手銀行やゆうちょ銀行の定期預貯金を見ても、3年物で年0・002%の利子しか付きません(本書執筆時点)。こうした低金利時代には、さまざまな詐欺、もしくは詐欺まがいの投資話が皆さんのところにやって来ます。

「あなただけに高い利回りの特別な商品をご紹介します」
「近く上場予定の有望ベンチャーの未公開株をお譲りする内緒のルートがあります」
「お友達をご紹介いただければ、紹介手数料として1人につき○万円お支払いします」

こういった手口で巨額の資金をかき集めたあげく、破産した詐欺集団が摘発されるという経済事件が後を絶ちません。皆さんもよくニュースで耳にすると思います。この手の詐欺話に引っかかったら、結末は悲劇です。最悪の場合、コツコツ貯めていた老後資金などの大切な資産をあらかた失ってしまうことにもなりかねません。

断言しておきます。「あなただけ」という殺し文句の商品は100%、いや120%インチキです。「あっ、これは詐欺だ!」と思ってください。冷静に考えれば、わかるはずです。そんなおいしい話をなぜ“あなただけ”に教えてくれるのでしょうか。本当にそれで儲かるのであれば、その人はわざわざ誰かに教えたりせず、チャンスを独り占めして、自分自身が投資して大儲けしているはずですよね。

騙されない“魔法の方法”は「知識武装」あるのみ

こんな話をすると、「いくら何でも、私はそんなバカじゃない」と言う読者も多いでしょう。ですが、この過信が危険なのです。

実は、「騙されやすい人」に多い、もうひとつのタイプが「自分は騙されないと確信している人」なのです。詐欺集団というものは「騙されないと確信している人」の心理を巧みに操り、知らず識らずのうちに、あなたを取り込んでいきます。

大手ハウジングメーカー、積水ハウスが東京・五反田の土地を巡って、地面師グループにまんまとはめられ、55億円超もの巨額資金をだまし取られた事件を思い出してください。不動産取引に精通しているはずの名門企業でさえ、こんな被害に遭うのです。過去には「M資金」と呼ばれる架空の融資事件が繰り返し起き、著名人を含めて何人もの方々が巻き込まれています。一流企業の経営者であろうと、ビジネスエリートであろうと、なんなく騙してしまう。それが“プロの詐欺師”。過信は禁物です。

では、投資で大失敗しない、損失を最小限にとどめるためにはどうしたらよいでしょうか。

それには「知識武装」あるのみです。一にも二にも一生懸命に勉強して、「備えのための知識」をしっかりと身につけること。豊富な知識を持っていれば、営業担当者のセールストークを聞いても、鵜呑みにしたり、前のめりになったりせずに、冷静に検討することができるようになります。いかにも儲かりそうな投資話を持ちかけられても、「いや、待てよ」と踏みとどまることができるようになります。

騙されないための方法は、「最初から誰も信用しないこと」です。信用しなければ、騙されることもありませんよね。「じゃあ、この本に書いてあることも信用しない方がいいのですか?」と言われそうですが、それに対するお答えも「イエス」です。新聞も信用しない。テレビのニュースも信用しない。ネットの情報、ブログなども信用しない。大事なことは、そうした書籍や記事などからいろいろな情報や知識を得て、答えは自分で見つけて、最後は自分で判断する。信用できるのは自分だけ。そのための努力を怠ってはいけない。そのように考えていただきたいと思います。

結局、騙される人と騙されない人の差は「知識力」とそれに基づく「事実」です。これが当たり前なようで、実は多くの人ができていない「人に騙されない魔法の方法」なのです。


市川雄一郎
グローバルファイナンシャルスクール校長。CFP(R)。MBA/経営学修士。
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。
テレビ、新聞、雑誌等のメディア活動経験も豊富。
最新の著書に「投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え」(日本経済新聞出版)がある。
グローバルファイナンシャルスクール(GFS)
公式サイト:https://gfs-official.com/
体験版講座:https://toushi-up.com/

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※本記事は『投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え(日本経済新聞出版)』より抜粋して掲載しています。

 

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