遺言書の検認

相続税の申告と納税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があり、非常にタイトなスケジュールです。相続が発生してから慌てないように、必要な手続きについてあらかじめ理解を深めておくことは、スムーズに相続税の申告を行うために重要です。

今回は、一連の相続手続きの中でも初期に対応が必要な「検認」についてご紹介いたします。

目次
遺言書の検認とは
検認の注意点
遺言書検認の流れ
検認が終わったら
まとめ

遺言書の検認とは

遺言書の内容等を家庭裁判所が確認し、後にその遺言書が偽造や変造されることを防ぐための手続きをいいます。もしも遺言書が、遺族に都合のよい内容に書き換えられた場合、遺言者の意思は尊重されません。こうした不正を抑止するため、遺言書を発見した相続人や遺言書を保管している人は、相続の開始を知った後、遅滞なく家庭裁判所に遺言書の検認手続きを請求することが義務づけられているのです。

遺言書の検認をしないとどうなる?

遺言書の検認は、遺言書の偽造等を防ぐためのもので、その内容が有効かどうかを判断するものではありません。検認を受けたからといって、その遺言書が有効であることにはなりません。また逆に、検認を受けていない遺言書が無効になるということにもなりません。

欠席した場合は?

検認は遺言書を発見した相続人もしくは保管していた相続人が、申立人となって手続きを進めます。検認期日が決まると、被相続人の最終住所地の家庭裁判所で手続きが行われますが、申立人以外は欠席をしても問題はありません。欠席の連絡も必要なく、罰則もありません。

検認の注意点

遺言書には、遺言の方法によって、自筆証書遺言・秘密証書遺言・公正証書遺言の3種類があります。家庭裁判所の検認の対象となるのは、自筆証書遺言と秘密証書遺言の2つです。公正証書遺言は、もともと内容が公的機関において確認されていることから、検認の対象にはなりません。

注意点1】封印のある遺言書は勝手に開封できない
遺言書が封印されている場合、勝手に開封してはいけません。家庭裁判所において相続人やその代理人らの立ち会いがなければ、開封することは禁止されています。

したがって、封印のある遺言書は、検認期日まで開封せずに保管しなければならないということです。遺言書(自筆証書遺言・秘密証書遺言)は、封をされていようがいまいが検認を受けなければならないのですが、それが封印されている場合に限り、開封の手続きから家庭裁判所で行わなければならないのです。

【注意点2】検認を受けないと過料に処されます
遺言書の検認を受けないまま、遺言書の内容を執行した人は5万円以下の過料に処されます。また、封印のある遺言書を家庭裁判所外で開封した人も5万円以下の過料に処されます。

【注意点3】相続手続きの期限に注意
相続手続きにおいて、相続人は自己のために相続の開始があったことを知ったときから、原則3か月以内にその相続について、単純承認・限定承認・相続放棄の選択を行わなければなりません。また、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告も必要です。この間に相続人のスケジュールを調整して、遺産分割協議を行うことを考慮すると、相続手続きのスケジュールは非常にタイトなものとなります。

遺言書があれば、このスケジュールに、遺言書の検認手続きが割り込んできます。検認は、受けるまでに1か月ほどかかる上、封印された遺言書であれば検認のときまで内容も確認できません。遺言の内容がわからない以上、勝手に遺産分割をしても徒労に終わることがあるため、遺言書は発見次第すぐに検認の申し立てを行うことが必要です。

遺言

遺言書検認の流れ

検認手続きの申請から検認が終了するまでの流れは、次のようになります。

【検認手続きの流れ】
1.検認の申し立てを行う
2.検認期日の通知を受ける
3.遺言書の検認を受ける

それぞれの手続きがどのようなものか、具体的に見ていきましょう。

1.検認の申し立てを行う
遺言書の検認の申立人になることができるのは遺言書を保管していた人と、遺言書を発見した相続人です。申し立て先は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所になります。申立人は、必要書類を用意し、その書類を郵送または被相続人の最終住所地の家庭裁判所の窓口に持参して、手続きの請求を行います。

2.検認期日の通知を受ける
検認の申し立て後、申し立てを受理した家庭裁判所から、検認期日(=検認を行う日付)の通知が行われます。検認期日の通知が行われるのは、申し立ての日から2週間ほどです。通知は書面(郵送)で行われますが、まずは電話によるスケジュール調整が行われることが一般的です。

申し立てを行った日から、概ね1か月内の期日で調整されることが多いようですが、家庭裁判所によって差があるものと考えられます。

3.遺言書の検認を受ける
検認期日に、申し立て先の家庭裁判所において遺言書の検認を受けます。遺言書を保管している人は、このとき必ず遺言書を持参して家庭裁判所に出向きます。検認は、家庭裁判所が相続人立ち会いのもとで遺言書を開封し、その遺言書の内容や、検認を行った状況を検認調書に記録して行われます。

検認が終わったら

検認を終えたら、家庭裁判所から「検認済証明書」を発行してもらえるようになります。検認済証明書は、遺言を執行するために必要な証明書で、例えば自筆証書遺言によって不動産登記を行う場合や預金の払い戻しもこの検認済証明書付きの遺言書が必要となります。

まとめ

封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立ち会いがなければ、開封することができません。遺言書を発見したら勝手に開封せず、家庭裁判所にすぐ検認の申し立てを行いましょう。

また、相続が発生すると、準確定申告や遺産分割協議、相続申告、名義変更など、限られた時間の中でやるべきことがたくさん発生します。遺言書が発見されて検認が必要となった場合には、さらに時間を要してしまうので、慌てて手続きをしないために、余裕を持ったスケジュール管理をしていただきたいと思います。

構成・編集/京都メディアライン 内藤知夏(http://kyotomedialine.com

●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)

日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。

日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com

 

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