取材・文/ふじのあやこ
家族との関係を娘目線で振り返る本連載。幼少期、思春期を経て、親に感じていた気持ちを探ります。(~その1~はコチラ)
今回お話を伺ったのは、大阪府内で仕事をしながら1人暮らしをしている理恵さん(仮名・40歳)。京都府出身で、両親との3人家族。学生時代は両親は共働きで放任気味に育てられたものの、不自由なことは一切ない生活を送ります。しかし、小さい頃に容姿を否定され続けたこともあり、学生生活は目立たないことばかりを意識していた地味な子だったと自身を振り返ります。
「ケガをして帰ってきたら『かわいくない顔をしているのに、傷まで作ってどうするの?』、買ってきてくれた服が似合わなかったら『ブサイクだから』と母親から言われ続けました。父親もそのことを聞いていてもフォローは何もなく。小さい頃はそんなことを言われてもあまりショックを受けずに飲み込んでいたんですが、徐々に思春期になると自分はブサイクという思いが蘇ってくるというような感覚でした。何かがあっても、可愛くないから仕方ないと自分で思うようになっていきましたね」
自己肯定感が低いのは母親のせい。離れなければと思った
大学に進学後は勉強や友人関係こそ充実していたものの、異性に対しては気持ち悪いと思うことが多かったとか。それにはある理由が当てはまると理恵さんは言います。
「大阪府内の大学に進学したんですが、気の合う友人もできて、高校時代のアルバイトでそれなりに社交性も出てきていたので大学生活は楽しかったです。でも、恋愛関係はまったく。合コンなどに参加して好意を持ってくれる異性もいたんですが、2人きりになるとその人のことが気持ち悪くなってしまって。そして二度と会いたくなくなります。手を触れることだけでも逃げ出したくなる気持ちでしたね……。それが仲良くなる前はカッコいいと思っていた人に対しても同じでした。
その原因がわからずに、恋愛は一生できないと悩んだ時期に心理学系の記事を読んだことがあるんですが、そこには自己肯定感が低いと『私なんかを好きになる人はおかしい人に違いない』と相手の評価を下げてみてしまうことがあるみたいで。鵜呑みにしたわけじゃないけど、『あ、母親のせいなんだ』ってスッと納得できたというか。そのときに母親と離れなければと強く思いました」
大学時代もアルバイトを続けて、卒業までに200万円の貯金を作り、就職を機に一人暮らしをスタートさせます。そのときには親からの施しをすべて断ったそう。
「完全に自立してやりたかったんです。今までちゃんと育ててくれて何の不自由もないことは感謝しています。でも社会人になったことで完全に施しを断ち切りたくて。1人で何でもできるんだって自信を持ちたかったんですよ。両親は深く考えていなかったみたいで、笑顔で送りだしてくれました」
【親に否定されたくない思いからすべてを受け入れてしまう。次ページに続きます】